2023年3月20日。全国旅行支援を4月以降も延長する県が増える中、GoToトラベルキャンペーンの公式サイトがひっそりと閉鎖されていました。
GoToトラベル事業の予算から支出されている全国旅行支援。
2023年以降も継続が発表され、2023年1月10日から開始となりました。観光庁は「国家事業のGoToトラベルキャンペーンとは別物なので、GoToトラベルキャンペーンが全国旅行支援に変わった、ということではありません。時期が来たら再開する」としていましたが…ひっそりと、2023年3月20日、この主張も消えてなくなっていました。
政府は当初、全国旅行支援もしくは全国旅行支援に代わる旅行喚起策を2023年も継続することを検討しており、「GoToトラベルキャンペーンでは?」との期待も高まっていたのですが、政府はGoToトラベルキャンペーンに移行することなく、全国旅行支援を継続。
あくまでも地方自治体である各都道府県が主催するもので、万が一、一部の自治体で新型コロナウィルスの感染が急増した場合、県の判断で停止ができるという利点があったというのは、全国旅行支援が残った理由のでしょう。
そもそもGoToトラベルキャンペーンと全国旅行支援は何が違ったの?
基本的なことから振り返っていきましょう。
目次
GoToトラベルキャンペーン再開の調整のはずが?
2022年6月3日、政府がGoToトラベルキャンペーンを近々再開させるための調整に入ったことが各報道で明らかになり、いよいよかと世間がざわつきましたが、他の候補として出ていた県民割(地域観光事業支援)の支援を全国にエリア拡大し、全国規模の観光需要喚起策「全国旅行支援」する案が採用されました。
GoToトラベル名称変更案も!
地域観光事業支援「県民割」の全国拡大である全国旅行支援「全国旅行割」が年内は12月27日まで(当初は大部分の県が12月20日までとしていました)、そして2023年は1月10日(火)から行われることになり、しばらくはGoToトラベルキャンペーンという名前の観光支援事業は再開されないことになりました。そもそもこのGoToトラベルキャンペーンという名称が新型コロナウィルス感染拡大のイメージが強いことから、「全国旅行支援」後、GoToトラベルキャンペーンは別の名称を変え、新しい国家事業とする案も出ているのだそう。
いずれにしてもまずは全国旅行支援で、お得な旅行を楽しみましょう!
全国旅行支援とは?
全国旅行支援は、前身の県民割こと「地域観光事業支援」の予約対象を全国に拡大したものです。
政府は2020年7月下旬、新型コロナウィルス感染拡大により打撃を受けた観光・旅行事業者を救うべく観光需要喚起策「GoToトラベルキャンペーン」を開始。国民の旅費を支援することで、旅行喚起につなげ、旅行先での消費を促すという画期的な事業でしたが、急速な感染拡大を受け、2020年12月下旬に停止します。
その間、せめてもの旅行喚起策として、政府がGoToトラベル事業の予算からねん出し、支援していたものこそ「地域観光事業支援」こと県民割です。
当初、地域観光事業支援は、感染予防の観点から、感染状況が収まっている県に限り、県民の県内旅行を割り引くなどの支援を県が支援する場合、政府が県を支援するという事業でした。それが「県民割」という俗称となったわけです。
とはいえ、県内旅行だけでは宿泊喚起にはつながっても、旅行喚起につながらず、2022年4月、地域観光事業支援を県単位ではなく、地方ごとに6ブロックに分け、ブロック割の体制に拡大しました。
県民割を使った人ならお分かりかと思いますが、6ブロックに分けても府内、都内、県内のみの県民割の実施をする県や、停止してしまう自治体もあり、ブロック内で相互利用できない場合も多い支援でした。
特に感染拡大著しい自治体では、いつまでたっても他県の県民割の予約ができないので意味のないものに。
政府は6月下旬、感染状況が落ち着いたタイミングでGoToトラベル事業再開の検討に入りましたが、まずは地域観光事業支援を全国に拡大することを選択。全国旅行支援「全国旅行割」という新しい事業ができました。
感染拡大の影響で2度の延期を経て、晴れて10月11日、開始に。そして、さらに2023年も延長継続が決定しました。
全国旅行支援とGoToトラベルの違い
我ら日本国民は、コロナ禍の2年半の間に、GoToトラベルキャンペーン・地域観光事業支援(県民割)・全国旅行支援(全国旅行割)という、3つの旅行キャンペーンを体験することになったわけですが、さて、その違いとは何なのでしょうか?簡単に説明すると、以下になります。
GoToトラベルキャンペーン:国家事業。政府が決めた条件や割引率で、旅行したい国民が同じ予約方法で、好きな予約先に予約をする旅行喚起策。
地域観光事業支援「県民割」:政府が支援する県の事業。停止中のGoToトラベルキャンペーンの代替えとして、政府がGoToトラベル事業の予算から支援する県主催の旅行割引キャンペーン。
全国旅行支援「全国旅行割」:政府が支援する県の事業。地域観光事業支援を全国から予約可能に範囲を拡大し、割引率やルールを少しだけ変更。これまでの県民割の予約を全県から可能にしたもの。GoToトラベルキャンペーンの代替えとして、政府がGoToトラベル事業の予算から支援していることに関しては地域観光事業支援「県民割」と同じ。
事業自体が全く異なるため、GoToトラベルキャンペーンが全国旅行支援「全国旅行割」に変わってしまったわけではありません。斉藤国土交通相も全国旅行支援立ち上げ会見の際に、報道陣の「GoToトラベルキャンペーンはやらないのか?」の問いかけに「やらないわけではない。その時の状況によって判断する」と答えています。
また、GoToトラベルキャンペーンの公式サイトでもそれはしっかりと断ってあり「私はあなたたちとは違いますの。終わったわけではありませんのよ」的雰囲気を醸し出しています。
全国旅行支援は全国規模の事業になるとはいえ、10月10日で終了した地域観光事業支援「県民割」の規模を大きくしただけ。2020年実施時は、問題が多いと言われたは国家事業GoToトラベル事業ですが、はっきりいって、全国旅行支援と比較すると予約する側としては、とても予約しやすかったことを思い出させてくれます。
実際に今も「予約しづらい」「わかりづらい」「すぐ完売する」の叫び声が全国から聞こえてきます。
全国旅行支援は全県で異なる!
予約できる人は全国在住者になったものの、事業は地方自治体である県の事業。ほんとうに、県民割の割引率や上限額を変えた程度ものです。難解でよくわからないと言われた県民割よりは、少しだけ共通事項も増えましたが、クーポンの発行方法や予約方法が微妙に違ったりするのです!
このような割引キャンペーンはコロナ禍というものがなければなかったもの。たとえば旅先の食事やショッピングに使える地域クーポン一つをとっても、決済アプリを使って行う県もあれば、紙のみとしている県もあります。公式サイトの予約をステイナビ(STAYNAVI)を活用する県もあれば、直接電話して「キャンペーン利用します」報告をし、公式サイトで予約するなど、アナログな方法を取る県もあり、はっきりいって、バラバラ。
冷静に考えれば自治体が受け入れられる民間の技術に差がある、というのが大きな問題で、県民割の時から「ここでもうけねば!」と駆け込んできた民間事業者が、国ではなく各県に出向き、採用不採用あった結果なのでしょう。
2023年3月22日現在は、46都道府県が全国旅行支援を絶賛実施中(奈良県のみ新規予約のみ終了)ですが、行きたい県がある場合は、きちんとチェックしておきましょう。
4月以降の全国旅行支援の予約はこちらから!
全国旅行支援概要
GoToトラベルキャンペーンの代替えとして始まった全国規模の観光需要喚起策である全国旅行支援はどのようなものなのか。詳しく見ていきましょう。
全国旅行支援「全国旅行割」の期間
期間:2022年10月11日から12月27日まで/2023年1月10日から。終了日は各都道府県が予算を見ながら決定
全国旅行支援「全国旅行割」はどれくらいお得?
全国旅行支援がどれくらい割引になり、お得なのか見ていきましょう。
割引率・割引内容
2023年の延長継続以降の条件は、政府の発表では基本の条件は以下です。ただし、2022年12月13日現在も各県独自の追加割引などを実施している場合もあり、一律ではないことが予想されます。
平日旅行の交通付きの旅行(ツアーなど):1人1泊クーポンを含めると平日最大7,000円お得に。
平日の宿泊・日帰り旅行:1人1泊(日帰りは1回につき)最大5,000円お得に。
支援内容
国民の旅行代金を20%割引
1人1泊あたりの上限:ツアーなどの交通付き宿泊旅行5,000円/宿泊・日帰り3,000円
飲食店やショップ、観光施設などで使える地域限定クーポンを平日2,000円分/休日1,000円分付与
ワクチン・検査パッケージの条件
全国旅行支援はワクチン・検査パッケージを活用します。
政府が示したワクチン・検査パッケージの運用内容は、2022年3月末より大幅に変わりました。どちらも12歳未満は保護者などワクチン・検査パッケージの条件を満たした同伴者がいることを条件に証明書提示は不要です。
2022年3月末までの県民割の条件であるワクチン検査パッケージ
ワクチン接種歴2回完了が証明できるもの
もしくは
陰性証明
が条件。
全国旅行支援の条件であるワクチン検査パッケージ
ワクチン接種歴3回が証明できるもの
もしくは
陰性証明
県外旅行でなく、県内旅行に全国旅行支援を使う場合は、ワクチン接種については知事判断で2回完了でも可能としている県もあります。全国規模になることで多くの県がワクチン・検査パッケージの3回接種完了の条件に変更してはいるものの、実際にまだ数県ありますので、ご注意を!
こういったことも、GoToトラベルキャンペーンのように統一されていた国家事業と地方自治体の事業の違いです。
全国旅行支援で気を付けるべきこと
既に前述していることもふくめてまとめておきます。
・47都道府県、予約方法・クーポン発行方法・お得度が違う
・割引前の金額はコロナ禍の最安値ではないため、コロナ禍に宿泊したホテルの料金より高い
・販売と同時に完売した県やオンライン旅行予約サイト、旅行会社があるものの、政府は追加予算を投じるため、各県、各サイト、各旅行会社とも異なる日時で再販予定。ここがとても面倒。
・行きたい時期に完売している場合、既存予約対象になるかどうかはすべて予約先が判断。必ずしも既存予約が全国旅行支援の対象になるわけではない
・宿泊施設への電話、旅行会社の電話は通じない場合が多い
GoToトラベルキャンペーンとは?さよなら記念におさらい
観光庁の「全国旅行支援とGoToトラベルキャンペンは別」発言で、きっと再開すると信じていたものの、全国旅行支援の登場で忘れられていた「GoToトラベルキャンペーン」(笑)。そして、何の発表もなくGoToトラベル事業の公式サイトは閉鎖されてしまいました。
かつて作ったこんな記事があります。懐かしく読み返しておくのも、ありかもしれません。
ドタバタだったGoToトラベル事業を振り返ろう
そもそもGoToトラベルキャンペーンは本当はオリンピックが開催される2020年7月22日から2021年1月末日終了(予定)の事業でした。
当初は他3つのGoTo事業と同時にスタートするはずが、いきなり前倒したことから、旅行会社や宿泊施設の準備が追い付かず、利用者も困惑したものです。7月中旬に感染者が増加したこともあり、東京都を除外してスタートしたものの、援助の一つである「地域共通クーポン」まで間に合わず、すべてが本来の姿となったのは2020年10月1日。
やっと軌道に乗り始めたころ、第三波により感染が再々拡大。一時停止や高齢者などの自粛など、小規模な対策を取っていましたが収束せず、2020年12月28日から停止に。
年末年始という日本人が最も動く時期。GoToトラベルキャンペーンでお得に旅行ができるからと、こぞって予約をした人々が泣く泣くキャンセル。最も打撃を受けたのは、稼ぎ時の年末年始を停止されてしまった宿泊施設に違いありません。
ワクチン検査パッケージ利用で再開するはずだった新GoToトラベルキャンペーンは、全国旅行支援が先、という意外な方向に話が進んでしまいました。
しかしあくまで別事業の全国旅行支援という前提のもとに、その先に、GoToトラベルキャンペーンが再開する可能性があることも示唆されていたものの、ホームぺ時は閉鎖に。
GoToトラベル復活の可能性は?
GoToトラベルキャンペーンは、名称を変えて新たに始めるという構想もありました。
しかし、各県が実施する全国旅行支援というスタイルが長くなれば長くなるほど、各県ともやりやすい形で継続されています。最初は複雑に感じたルールも使う方もなれてきたところ。
これから新しいルールで再度始めると、そのルールの周知や、地域クーポン券や予約時の確認など、また基本的なルールを一から変えなければならなくなり、再び現場と利用者が混乱。さすがにそこにまだ予算を割くのであれば、このままの形が良いというのは、想像できます。
2023年5月8日からはついに新型コロナウィルス感染症は季節性インフルエンザと同じ、5類相当に移行します。
そうなると、旅行支援をしなくても、旅行市場は国内外ともに活発になり、訪日外国人観光客もさらに戻ってくることでしょう。
復活は100%ない…とは言い切れませんが、万が一仮に何か国内旅行の支援を復活させることがあれば、名称も割引率も異なる全く違う形のもなのでしょう。
いずれにしても、2023年3月22日現在は、新型コロナウィルス感染症拡大と言う世界規模のできごとが生んだ国家事業GoToトラベル事業は終了したという見方ができそうです。