毎年2〜3月にシドニーで行われる「シドニー・ゲイ・アンド・レズビアン・マルディグラ」は、多文化国家オーストラリアならではのLGBTプライドイベントです。街中がレインボーに染まり、特に最終日に行われるパレードでその盛り上がりは最高潮に達します。
2024年は2月16日（金）〜3月3日（日）まで。メインのイベント、オックスフォード・ストリートでのパレードは2024年3月2日（土）18:00〜23:00まで。
2023年には南半球で初めてワールドプライドが開催され、年を追うごとに更なる盛り上がりを見せるマルディグラ。今回はそんなマルディグラや、マルディグラに向けてヒートアップするシドニーの様子をご紹介します。
シドニーで行われるLGBTのプライド「マルディグラ」
シドニーで毎年2月から3月にかけて行われる「シドニー・ゲイ・アンド・レズビアン・マルディグラ（Sydney Gay and Lesbian Mardi Gras）」。元々はカトリック伝統の謝肉祭最終日を意味する「マルディグラ」ですが、オーストラリアではLGBTQIA+（レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア/クエスチョニング、インターセックス、エイセクシュアル etc）の人達の文化や多様性を讃えるプライドをそう称します。
オーストラリアでマルディグラが始まったのは今から40年以上前の1978年。同性愛が犯罪とされていた当時、自分達の権利を主張するため、差別や偏見に対する抗議デモ行進が始まりでした。
当時は多くの逮捕者が出るなど警察との衝突もあったそうですが、今では国民投票で同性婚が合法化されてから既に5年が経過し、地元警察や政府など、国中を上げてサポートする一大イベントになっています。
LGBTフレンドリーなオーストラリア
「海外生まれ、もしくは両親のどちらかが海外生まれ」の人が人口の50%を超えるという、まさに移民大国のオーストラリア。多文化で多様性を尊重する考えが浸透しているのはもちろんですが、さらにオージー（オーストラリア人）ならではの陽気な大らかさ、小さなことは気にしない懐の深さならでは、という気もします。
同性婚が合法化されているオーストラリアの中でも、第一の都市・シドニーはLGBTフレンドリーな街として有名。レインボーマークを掲げたLGBTフレンドリーなお店も多く、ゲイクラブが軒を連ねるオックスフォード・ストリートを中心とするダーリングハースト地区は、ゲイコミュニティには特に人気のエリアです。
シドニーを代表する大規模なお祭りイベント
オーストラリア最大かつ、世界有数のプライドでもある「マルディグラ」には、毎年世界中からたくさんの人々が集結します。約2週間に及ぶ期間中はシドニー各地で300以上のイベントやライブ、パーティが開催され、この時期になるとシドニー中のホテルやAirbnbが満室になるほど。
特にイベントのフィナーレを飾るパレードには50万人以上の観客が沿道に押し寄せ、盛り上がりは最高潮になります。
レインボカラーに彩られるシドニーの街
1月26日のオーストラリア建国を祝う「オーストラリア・デイ」が終了すると、街はマルディグラに向け、LGBTの象徴でもあるレインボーカラーに色づき始めます。
酒屋さん「BWS」も、ドラァグクイーンの間で流行った「Yasss!」に因んだ虹色の店名に。 各アパレルメーカーからは、マルディグラに因んで
レインボーカラーのアイテムが。
通りの看板やショップの店先だけでなく、住宅の軒先にもレインボーカラーが溢れ、スーパーに並ぶ食べ物のパッケージやアパレルでもスペシャルアイテムが登場。マルディグラへの準備は万端です！
マルディグラ期間中、シドニーで開催される様々なイベント
マルディグラが開催される約2週間の間、レインボカラーで彩られたシドニー各地では、様々なイベントが開催されます。
人気ビーチで行われるフェス「ボンダイビーチ・パーティ」
昨年15,000人以上が訪れた「ボンダイビーチ・パーティ（Bondi Beach Party）」が、今年も開催決定。シドニー人気No.1のビーチ「ボンダイ」に特設ステージが設けられ、世界各国から人気DJが集う、8時間に渡るビーチパーティです。
照りつける太陽と目の前に広がる海という爽やかなロケーションの中、夜の雰囲気が色濃いシティのマルディグラとはまた違った、壮大で開放感溢れるマルディグラが味わえそうです。
DATA ボンダイビーチ・パーティ 場所：Queen Elizabeth Drive, Bondi Beach NSW 2026 日時：2024年2月24日（土）14:00〜22:00 公式サイト：ボンダイビーチ・パーティ
お子様OK！キッズフレンドリーなイベントも
音楽が爆音で鳴り響くダンスパーティだけでなく、子供もOKなキッズフレンドリーのイベントがあるのも、シドニーのマルディグラならではです。
オックスフォードストリート各地のクラブやバーでは、フェイスペインティングやゲームなど様々な子供用のアクティビティが開催予定。さらにシドニー水族館で行われる「ドラァグ・ストーリータイム・アット・シーライフ・アクアリウム」では、ドラァグクイーンの方々による海洋生物に関する読み聞かせイベントがあるとか。うーん、想像するだけでかなり楽しそう！
DATA ドラァグ・ストーリータイム・シーライフ・アクアリウム 場所：1-5 Wheat Road, Sydney NSW 2000 日時：2024年2月17日（土）9:00〜10:00 公式サイト：DRAG STORY TIME AT SEA LIFE AQUARIUM
世界的なプライドパレード「ワールドプライド」
今や世界各地で行われているLGBTQIA+のプライドパレードですが、それとは異なり世界各地で2〜3年ごとの隔年で開催されている「ワールドプライド」というイベントがあります。開催地を決める招致活動などもあるので、まさにプライドのオリンピックのようなものですね。
2023年には「マルディグラ」と「ワールドプライド」という2大LGBTプライドが、南半球で初めて、さらにアジア太平洋地域で初めて、オーストラリアのシドニーで開催されました。シドニーがLGBTフレンドリーな都市として、国際的にも広く認められた証ですね。
クライマックスを飾る感動と興奮のパレード
2週間続くマルディグラ期間中で「絶対に外せないイベント」と言えば、LGBTの聖地オックスフォード・ストリートを練り歩く、クライマックスを飾るパレードです。新型コロナウイルスの影響で2020年から一時は中断していたストリートパレードですが、2023年からは完全に復活しています。
ストリートパレードが中止だった期間は、クリケットスタジアムでチケット制のパレードが開催されました。それをテレビで観ていた筆者ですが、マルディグラ特有の熱気や場の一体感のようなものが感じられず少し残念だったのを覚えています‥‥が、もうそんな心配も必要ありません！
オックスフォードストリートを10,000人以上がパレード
パレードは、ハイドパーク（Hyde Park）からムーアパーク（Moore Park）まで約2kmの道のりを、約200団体、12,000人以上の人達が、5時間掛けて山車（フロート）に乗ったりダンスをしながら練り歩きます。
警察を総動員して主要バス通りのオックスフォード・ストリートを午後から一切に通行止めにするという、シドニー市を挙げてかなりの気合の入れようです。
最寄りの駅から徒歩で会場に向かう人の波が、オックスフォードストリート沿道を埋め尽くす様子は圧巻です。秋に差し掛かり夜は若干肌寒くなるシドニーですが、そんなことも忘れてしまう程辺りはものすごい熱気に包まれます。
大通りが交差する「テイラー・スクエア（Taylor Square）」はちょうどパレードの中間地点。TVの中継ブースや大きなモニターが設置されているので、パレードが一番盛り上がるメインステージのような場所です。この周辺は歩くのもままならないほど混み合うので、この辺りで観覧する場合は早め（3〜4時頃から）の席取りをオススメします。
DATA テイラー・スクエア（Taylor Square） 場所：Taylor Square, Oxford Street Darlinghurst NSW
マルディグラのパレードの様子
ここからはマルディグラのパレードの様子を少しご紹介します。
「78ers」と書かれたバスに乗って笑顔で手を振っているのは、「第1回マルディグラ」とされている1978年の抗議デモの参加者の人達。当時逮捕されたり、新聞に名前が掲載され職を失うなど壮絶な人生を歩んだ彼らを、沿道にいる私達は大歓声と温かい拍手で迎えます。
ドラァグクイーンのお姉様方や水着ダンサー達率いるグループはもちろん、医師や消防士、シドニー大学などの教育機関や、カンタス航空などの企業、LGBTの子供を持つ親達など。現オーストラリア政権与党「労働党」のアルバニージー首相も、毎年パレードに参加する常連組です。
性別や人種、外見やバッググラウンドなんて全く関係なく、様々なグループが音楽に合わせて行進していきます。皆思い思いの衣装を身に纏い、自分を解放している様子は本当に楽しそう！
煌びやかな衣装やエネルギッシュなダンス、フロートのデコレーションなど、それぞれの個性が光るパフォーマンスはまるでアトラクションのようで、見ているだけでも全然飽きません。他国のプライドパレードは日中に行われるそうですが、シドニーのマルディグラは夜の開催なので、エレクトリカルパレード感もあります。
ダンスに選ばれているのは、シェールやマドンナ、レディ・ガガやリアーナ、デュア・リパなど、グラマラスかつ華やか、凛とした強さとたくましさを持つアーティストの楽曲が多い印象です。知っている曲が流れるとそれに合わせて沿道の私達も歌って踊る、このパーティのような一体感もたまりません。
2024年はマドンナの曲だけをひたすら流し続ける、「マドンナ・バー（Madonna Bar）」というイベントも開催されるとか。LGBTアイコンとして絶大な人気を誇るマドンナなので、かなり盛り上がりそうです。
多様性の国・オーストラリアでプライドパレードを体験しよう
マルディグラはLGBTの人達に焦点を当てたイベントではありますが、国籍・人種・性別・文化など人ぞれぞれの多様性を受け入れて尊重しようという考えは、まさに多文化国家・オーストラリアそのもの。
イベントに参加している皆が「Happy Mardi Gras!（ハッピー・マルディグラ）」と叫びながら笑顔で手を振ったりハイタッチしたり、街中にハッピーなオーラが満ち溢れているだけで私自身も幸せな気持ちになります。
そんな愛と自由で溢れた感動と興奮のイベントを、是非シドニーに訪れて直接肌で感じて、楽しみ尽くしましょう！
DATA 【公式サイト】シドニー・ゲイ・アンド・レズビアン・マルディグラ 毎年2月中旬〜3月第一週まで開催され、2024年は2月16日（金）〜3月3日（日）まで。 オックスフォード・ストリートでのパレードは3月2日（土）18:00〜23:00まで。
