「オリンピック終了後の9月には日本―ハワイ間の観光も戻るだろう」と2021年の春頃には多くの人が予想をしていました。その日が来ること信じ待ち侘びてやっと訪れた9月。残念ながら期待に反して、ハワイはデルタ株が猛威をふるい、再度規制が厳しくなっています。
ハワイはこのコロナ禍でも日本からの入国を歓迎してくれていた貴重な場所。そのハワイに何が起きたのか。一体どんな経由を辿っているのか、時系列を追ってみていきましょう。
感染対策の行動制限を再導入(8月10日)
ハワイは2021年に入ってからワクチン接種もすすむと同時に、新規感染者の数も減っていき、誰もがこのまま落ち着き、収束に向かっていると思っていました。
ところが、6月末にデルタ株の感染者が主要ハワイ諸島(オアフ島、マウイ島、カウアイ島、ハワイ島、モロカイ島)で13件確認されたというニュースが流れてから、あっという間に広まっていき、それまで2桁で落ち着いていた感染者数が、7月中旬から100人超えとなりそれからは爆上がり。それに伴い、ハワイ日時の8月10日より、州知事は以下の行動制限を課すことを発表しました。
ハワイ最新行動制限
最新の行動制限とはいえ、ワクチン接種70%超で全解除と期待されていた行動制限が復活するだけですが、店内の飲酒禁止やロックダウンのような措置は2021年9月14日時点では取られていません。しかし今後の感染拡大によってはどのような措置を再導入するか、先が見えないため、今が正念場です。
結婚式や葬儀、コンサート、スポーツイベントなどの集会
屋内10名、屋外25名までに制限する
50人以上の参加者を予定するイベント
オアフ島の新型コロナウィルス情報サイト『One Oahu』から「COVID Mitigation Plan(新型コロナウイルス感染症 緩和計画)」の提出が必要
感染リスクの高い屋内施設(レストラン、バー、ジム他)のガイドライン
屋内施設の中でも感染リスクの高いレストラン、バー、ジムなどには以下のガイドラインを適用。
– 収容人数の50%まで
– 飲食店でのパーティは、着席ベースとし、グループ間で6フィート(約1.8メートル)の距離を保つ
– 触れ合わないようにする
– 飲食時以外はマスク着用を義務付ける
ハワイ州知事が渡航自粛を要請(8月23日)
ついには1日の新規感染者数が800人を超える日が出て、ハワイ州内の医療体制が逼迫してきたことから、イゲ州知事は、8月23日「ハワイ州民へも不要不急の渡航はしないように、さらに、州外からの旅行者もハワイ旅行を10月末まで延期するように」と記者会見で呼びかけました。
ハワイだけでなく全米で、ハワイ州知事が「Stay Away from Hawaii」と要請しているというニュースが一気に駆け巡り、ハワイには来ないで欲しいという強い気持ちが伝えられました。
州知事は今、ハワイに来ても、レンタカー不足や、飲食店も50%しか入店できないので「思っているようなハワイ旅行は難しい」と説明し、自粛を要請しました。
1日の新規感染者数まさかの過去最多1000人超(8月27日)
州知事の渡航自粛要請から数日して、ハワイ州内で新型コロナウィルスの1日の新規感染者が1,035名、死亡者が9名に。これは新型コロナウィルスのパンデミック発生後、過去最多の新規感染者数と死亡数でした。さらに、ハワイ日時9月2日にハワイ州保健局が、州内で過去14日間に確認された新型コロナウィスルのほぼ100%がデルタ株の感染例であると発表しました。
ハワイ州の総人口は、およそ141万6,000人と言われています。東京都の人口が約1,400万人なので、東京都の約1/10、日本の総人口に換算すれば1/90にあたります。その割合から考えても、ハワイでの1日の新規感染者数は単純に日本に置き換えれば、1日の新規感染者が9万人という状況。あり得ない数です。
ちなみに、8月29日には1658人になり絶望的な状態になりましたが、渡航自粛に加え行動制限再開により、2021年9月13日には454人にまで減少してきましたが、ハワイにとってこの数値は全く予断ができる数値ではなく、新たな措置が投入されました。
オアフ島で9月13日より60日間のワクチンパスポート始動
オアフ島はハワイの企業や従業員、顧客を守るために9月13日より、島内にあるレストランやバー、美術館などを利用する際に、ワクチン接種証明か陰性証明の提示を義務付ける「セーフ・アクセス・オアフ・プログラム」を60日間にわたって試験的に導入することを決定。運用が始まりました。これは日本でもニュースになったので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
対象施設:レストラン、バー、フィットネスセンター、ボーリング場やビリヤード場、映画館、美術館、動物園や植物園などの屋内施設。
対象外施設:スーパーマーケットやファーマーズマーケット、ショッピングモール、テイクアウト専門のフードトラック。レストランのテークアウトサービスを利用する際に15分以内の滞在であれば提示は不要
子どもの証明書について:ワクチン接種資格がない12歳未満の子どもは対象外
提示するもの:新型コロナウィルスのワクチン接種証明証 または、対象施設の使用48時間以内の陰性証明書
さらに、9月15日からはマウイ島でも30日間同様、ワクチンパスポートプログラムが始動します。ハワイ島は現時点(9月14日)では、このようなプログラムを導入する予定はなく、カウアイ島は、導入することを考えているが、まだ決断はしていないという状況です。
ワクチンパスポートのアプリが登場
「セーフ・アクセス・オアフ・プログラム」の始動が決まったことで、次に、ワクチンパスポートのアプリ「スマート・ヘルスケア・カード」が登場すると発表がありました。これは最近も偽造ワクチンパスポートでハワイに渡ってきた観光客が逮捕される事件も起きており、偽造を防ぐ一貫でもあります。
そして、スマートフォンさえ持っていれば誰でも自分の接種状況を事前に確認でき、また、ワクチン接種の証明が必要な際に、接種カードを提示する代わりに自分のスマホを提示すれば済むようになるので、常時接種カードを持ち歩く必要がなくなると予想されています。
そうなればカードの紛失の心配がなくなるので、スマートフォンを持つハワイ住民には朗報です。
10月15日から一部のホテルでワクチン接種証明を要請
さらに、ハワイ日時10月15日(金)より、ハワイ州内にある一部宿泊施設で、宿泊客および訪問者に対して、ワクチン接種証明書の提示を求める予定あることが発表されました。
対象宿泊施設は、ワイキキにあるアロヒラニ・リゾート・ワイキキビーチと6軒のハイゲート・ハワイ・ホテル。対象ホテルの従業員は9月13日までにワクチン接種が義務付けられ、全ての人にとって安全な環境を確保するためにもホテル利用者にもワクチン接種を求めることにしたようです。
ちなみに、これらの施設では、陰性証明証は受付不可!
ホテル側は「従業員と利用者の双方を同じ基準を保つことができることになり、私たちはハワイ州で最も安全なホテルとなります」とコメントしました。ハワイでは日本からの渡航は陰性証明書提示で可能です。しかし、ワクチン接種証明がなければ日本からハワイへ渡航しても、以下のホテルには宿泊できないことになります。
また、9月14日現在、日本のワクチンパスポートがハワイ入国時に使用できるか否かは、外務省が確認中のため、証明書があっても確実に宿泊できるか否かは判明していません。何せ日本のワクチンパスポートの電子化は2021年内とされているため、世界水準ではないのです。
対象ホテル
いずれもワイキキの超有名ホテルばかり。眺望が良いものの、収容人数が大人数。ワクチン接種証明所持客のみを受け付けるとした意味が分かるホテルばかりです。
●アロヒナニホテル
●アストン・ワイキキビーチホテル
●パークショア・ワイキキ
●アンバサダー・ワイキキホテル
●パール・ワイキキ・ホテル
●ヒルトン・ガーデン・イン・ワイキキビーチ
●コートヤード by マリオットワイキキ
ハワイのデルタ株感染拡大の要因は?
なぜハワイは短期間で一気に感染爆発が起きたのか…?以前の記事でお知らせしたとおり7月には一気にアメリカ本土からの観光客が増え問題になりました。
そのため「アメリカ本土からの観光客が一気に増え、彼らが広めている」と思いがちですが、実はそれは違います。
地元でのコミュニティ感染が大部分
保健局が出しているデータでは、アメリカ本土からの観光客に関連する感染は、なんと全体の1%に留まっているのです。では何の感染が多いのかというと、コミュニティー関連による感染。半数を優に超える69%とあります。結局のところ現地の人々のコミュニティ感染が爆発的感染増加の原因だった言われているのです。
行動制限緩和でビーチ遊びやBBQパーティが盛んに
ハワイでは新型コロナウィルスの新規感染者数がしばらく2桁台に下がり、落ち着きをみせたことから、7月8日から屋内の集会は25名まで、屋外は75名まで行動規制を緩和しました。屋外ではマスクの着用義務も必要なくなり、またちょうど学校が夏休みだったこともあり、もともと家族や友達で集まることが好きなハワイの人たちは「待ってました!」とビーチに出て遊び、多くのBBQパーティーも開催。これが感染拡大の大きな要因なのではないかと言われています。
登校再開で子供たちが感染を拡大
デルタ株による新規感染者の大部分はワクチン未接種者によるものとされています。ワクチン接種対象外の12歳以下の子供たちにも感染が広がり、大きな問題に。事実、6月末と比べて9月現在は約15倍もの人数の子供たちが感染。夏休みも終わり、対面授業が始まったばかりで、子供たちは感染していると気づかずに学校に行き、また、症状が出ても最初は単なる風邪だと思ってしまうことが多く、そこから知らぬ間に広まっていることが多いようです。
ハワイからアメリカ本土旅行⇒戻って感染
アメリカ本土からハワイに来る観光客だけではなく、ハワイに住む人たちもアメリカ本土に旅行し、そこで感染し、ハワイに戻ってきて広めてしまうケースがあり、実はその数の方が、アメリカ本土からやってくる観光客よりも感染者が多いと言われています。
水際対策が強化される可能性も?
世界的に有名な疫学者であるラリー・ブリリアント博士がハワイの地元TV局のインタビューで、ハワイがデルタ株や新たな変異種から身を守り安全でいるためには「ワクチン接種&未接種に関わらず、ハワイに到着した人たちは、検査をし、陽性者は隔離をする。とてもシンプルなことなんです」と語っていました。
現在は、米国内からの旅行者や、ハワイ在住者たちが旅行から戻ってくる際、ワクチン接種者は、PCR検査も不要、自主隔離も不要になっています。つまり、水際対策を再度強化していくことが大事なのかもしれませんね。
3度目の「ブースター」接種が始まる
さらに、最近ではワクチン接種者でもデルタ株に感染する人たちもでてきているので、3度目のワクチン「ブースター」の接種が開始されています。こちらはファイザー社とモデルナ社を接種した人たちが対象で、2度目の接種から8ヶ月以上経った人が接種可能です。ジョンソン&ジョンソン社は対象外になっています。
ハワイのワクチン接種状況
最新データ(2021年9月7日)によると、ハワイ州全体でワクチン2回接種を終了した人は64.3%になっています。1回以上接種している州民は72.6%なので、このまま順調に行けば7割以上の人がワクチン接種を完了させることでしょう。新規感染者のほとんどがワクチン未接種の人たちと言われていることもあり、現在、さらに「ワクチン接種」を強く促している状況です。
もちろん様々な事情でワクチンを打てない人もいるわけですが、打てるけど「接種したくない」人たちもいます。本来は自由の国アメリカは、個人の意見を尊重するはずですが、今後はどんどんワクチン未接種者が肩身の狭い思いをする流れになっており、そんなワクチン接種反対者によるデモが各地で起きています。
ハワイはどの国の観光客を受け入れている?
ハワイはどこの国からの渡航も受け入れている、という分けではありません。
2021年9月14日現在、アメリカにはブラジル・中国・EUヨーロッパ連合のシェゲン圏・イラン・インド・アイルランド・南アフリカ・イギリスに過去14日間以内に滞在している人は入国拒否。それはアメリカの一つの州であるハワイも同じです。しかしその他の国からの旅行者は、基本的に受け入れています。
その中でも特別に優遇された入境ができる国こそ、日本・カナダ・フィリピン・韓国・タヒチ・台湾。
出国72時間前にハワイ州公認の医療機関でPCR検査をし、ハワイが求める陰性証明を日本の搭乗機のチェックイン時やハワイ入境時に提示できれば、10日間の自主隔離は免除されています。これら以外の国から来る人たちは、PCR検査結果に関係なく10日間の自主隔離が義務付けられます。
日本からの観光客はどうすればいい?
10月末まで渡航自粛要請は出ているものの、今、日本からハワイへ観光のための渡航で入境することは可能です。
しかし、2021年前半は「日本にいるよりハワイにいた方が安全」と思っている方も多く、筆者も日本の友達にそう言われていました。ところが、ここまでの説明でおわかりのように、デルタ株が入ってきたことで、ハワイは日本よりはるかに安全ではなくなりました。
それでもハワイへ今渡航したい人にアドバイス
もしどうしても2021年9月にハワイ旅行の計画を立てるとしたら、在住者として以下の点をアドバイスします。
●ワクチン接種を必要回数済ませ、証明書が提示できること
そして以下の覚悟はしてください。
●日本語でのツアーはほとんど開催されていません
●ホテルや店舗は従業員不足の場合が多く、サービスが行き届きません
●ハワイリピーターや自主的に行動できる方、全て英語での対応が可能な方は楽しめるでしょう
これらの状況を踏まえて、一番良いのは、ただひたすらビーチでのんびりしたり、ハイキングにいったりハワイの自然に触れることを目的とする旅がおすすめ。
「コロナが落ち着いたらハワイに行くぞ!」と思っている方も、可能な限り、ワクチン接種は済ませておきましょう。ハワイだけではなく今後、海外旅行再開時にはマストの条件となる可能性が高いです。