デルタ株が猛威をふるうバンコクからサワディーカー。
バンコクは6月末からデルタ株の感染が拡大しはじめ、7月末から本格的なロックダウン。2021年8月現在、コロナの新規感染者は連日2万人を越える厳しい状況です。
レストランでの飲食は禁止され、ショッピングモールは、スーパーと薬局を除いて、全てクローズ。悪名高いバンコクの渋滞がなくなったのは良かったものの、バンコクの街は活気を失い、ひっそりと静まりかえっています。
私もずっと在宅続きで、気が滅入る毎日。外出するといえばスーパーに食品を買いに行くくらいです。唯一の楽しみはホテルや有名レストランからのデリバリー。
ああ、いつになったら、自由に外出したり、旅行に行ったりできるようになるんだろう・・・。
※注)バンコクでの最新入国情報はこちら
長引くコロナ禍で、日本からのタイ渡航もハードルが異常に高くなり、気軽に旅行はできなくなってしまいました。
ただ、タイは世界有数の観光立国。経済的にも大きな比率を占める観光産業をこのまま放置するわけにはなりません。そのため、タイ政府はタイの開国プランを定め、厳しい条件付きながらもプーケット・サムイでの観光客受け入れ施策を少しずつ、本当に少しずつ進めながら、元通りの自由な観光客受入れの準備を始めています。
その施策の一つ、プーケットサンドボックスについてはこちらの記事をお読みください。
また、サムイプラスについても詳しい情報を書かせていただきました。詳しくはコチラの記事をお読みください。
早くタイ旅行に行きたくてたまらない!という皆さんのために、最新のタイ旅行情報とタイの最新入国情報、タイ政府の開国プランをご紹介しましょう。
実はタイ旅行は可能、ただしハードルは限りなく高い
タイは2020年4月、世界中の外国人の入国を禁止。実質的な鎖国状態となりました。これによってタイ国内の観光産業は大打撃。新型コロナウィルスの感染対策をしつつ、観光産業を復活させるために、様々な「条件」付きで2020年後半から外国人観光客の受入れをテストを兼ねて再開しています。
ただ、この「条件」というのが非常に厳しく、コロナ禍以前に比較すると、タイ旅行はとてつもなくハードルが高くなってしまったのです。膨大な「時間」「労力」「費用」が必要となったため、以前のように気軽にタイを訪れることは難しいと言わざるをえません。
ただでさえバックパッカーの聖地と言われていた時代があるため、気軽に安く旅行ができると思われていたタイ。これでは旅行者が戻ってくるとは思えません。
「ハードルが高くてもいいから行きたい!」「お金も時間もあるよ!」という方のために、2021年8月16日現在のタイ旅行入国の現実と最新情報をまとめます。
ただし、入国に必要な書類や条件はタイの新型コロナウィルス感染状況によって、頻繁に改訂されています。実際に渡航する際には在京タイ大使館、大阪タイ王国領事館、在タイ日本国大使館、タイ国政府観光庁日本事務所の最新の情報を確認してくださいね。
ハードル①タイ行きの航空便が減った!
新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大により、海外旅行が自由にできなくなって以来、航空会社も定期便を大幅に減便してしまいました。しかも、以前なら格安で旅行ができたLCC便は、定期便がほぼ全てキャンセルされています。エアアジア・ジャパン、ノック・スクートなど、経営破綻してしまった航空会社もあるくらいです。
8月16日現在、日本とタイを結ぶ直行便は、日本航空(JAL)、全日空(ANA)、タイ国際航空(TG)、そしてJALのLCCであるジップエアーのみとなっています。また、羽田、成田からは毎日定期便が就航していますが、関西と名古屋は現時点では週2便のフライトとなっています。
今後は増便される可能性もありますので、最新情報は航空会社のホームページで確認してくださいね。
日本航空(JAL)
ZIPエアー
全日空(ANA)
タイ国際航空(TG)
ハードル②入国後15日間の強制隔離が必要になった!
現在のタイへの入国で最も高いハードルこそ、タイ入国後14泊15日間の強制隔離です。強制隔離はタイ政府代替検疫施設(AQ;以前のASQから名称が変更)として認定されたホテルなどの宿泊施設で行われます。
隔離施設へはどのように行くの?
面倒な書類記入、提出を経てタイの空港に到着し、無事に入国できれば、予約したAQホテルの人が迎えに来てくれて、専用車でホテルに連れていってくれます。
隔離はどんな生活になるの?
強制隔離中は一日3食付きですが、お弁当が廊下の外に置かれることになります。
2021年5月1日以降は、感染予防のため、部屋の清掃もリネンの交換もしてもらえなくなり、掃除用具と予備のリネンが部屋に届けられるようになりました。
部屋から出られる施設もある?
また、以前は滞在7日目以降はホテルの敷地内で日光浴が出来ましたが、それも現在はできなくなってしまい、文字通り一歩も部屋から外に出ることが許されません。ただし、バルコニーに出て外気を吸うことが許されている貴重なホテルもあるようなので要チェックです。
チェックイン後は、2日目と6日目と12日目にPCR検査が実施され、結果が陰性であれば15日目にようやく解放。実はタイ政府って、新型コロナウィルス対策に関してはとっても厳しいんです。
隔離施設AQホテルの予約方法
AQホテルは出発前の予約が必要です。AQに認定されているホテルの一覧は、タイ保健省のウェブサイトに掲載されています。
現在、バンコクだけで140箇所以上あるほか、プーケット、クラビ、チェンマイ、パタヤなど、地方の主要都市やリゾート地にもあります。ただし、現在タイでは全国的なロックダウン中のため、バンコクから地方への移動は規制されているし、移動手段もありません。日本からバンコクに直行便で入国した場合は、バンコクのAQホテルを利用することになるでしょう。
例えばシンガポール経由など、第三国を経由してプーケットやサムイ島から入国する場合なら、ワクチン接種済みの観光客を対象とした「プーケット・サンドボックス」や「サムイ・プラス」といった制度もあって、隔離が免除されますよ。
AQホテルの料金はパッケージ料金になっていて、3万バーツから25万バーツまで。
意外なことですが、スコータイホテルやアナンタラ系列の超一流のラグジュアリーホテルもAQホテルに名乗りを上げているので、15日も外に出られないのであればここは贅沢してでも快適な空間を取った方が良いでしょう。安くて狭い客室のホテルは避けた方がよさそう。
ホテルのランクや部屋のカテゴリーによって様々ですが、5〜7万バーツくらいが一般的。バスタブ付き、電子レンジ付き、日本食の有無、部屋の外に置かれるお弁当のクオリティ、日本語のテレビ番組の視聴など、サービス内容や備品もホテルのランクによってかなり変わりますので、タイ渡航が差し迫っている人はAQホテルに問い合わせるなどリサーチを。
ハードル③タイ入国に必要な書類や手続きが増えた!
以前なら、タイ入国書類といえば、出入国カード1枚でOKでしたが、今はたくさんの書類が必要になってしまいました。新たに必要になった書類等は下記の通りです。2021年8月16日現在の情報ですので、最新の情報は在東京タイ王国大使館などや大阪タイ王国領事館のウェブサイトで確認しましょう。
- 隔離ホテル(AQ)予約確認書
- コロナ対応医療保険(タイ滞在期間中有効で補償金額US$10万ドル以上)
- タイ入国許可証(COE: Certificate of Entry)
- 日本出発7日前までにタイ外務省のCOE申請サイトより申請
- COE申請に必要な書類:パスポート、フライトEチケット、コロナ対応医療保険証(英文)、隔離ホテル(AQ)の予約確認書
- 英文陰性証明書(渡航前72時間以内)
- ビザ(45日を超えてタイに滞在する場合のみ。現在は45日までビザなしでの滞在が可能)
たくさんの書類があるため、空港に到着後の検疫や入国審査も以前の入国よりはるかに時間がかかります。
ハードル④タイは全国的にロックダウン中・旅行の楽しみはナイ
前述のとおり、2021年8月16日現在、タイではデルタ株の感染者が急増し、全国77県中、バンコクを含む29県が最高度厳格管理地域(Maximum Controlled Area)に指定され、本格的なロックダウン中です。
ロックダウンされている地域では、ホテルはかろうじて営業しているものの、レストラン店内の飲食が禁止されているため、全てルームサービスとなります。もちろんお酒も客室内のみ。スパもプールも閉鎖。
街に出かけたとしても、ショッピングモールはスーパーと薬局と銀行のみオープン。お寺も博物館も、全てがクローズ・・・。(レストランや屋台は持ち帰りやデリバリーのみ利用できます!)
県をまたがる移動も禁止されているため、国内線フライトや長距離バスもほぼ全面的に運休されています。つまり、どこにも行くことができないんです・・・。ですから、タイ国内の感染者数が減り、規制が緩和されない限り、旅行の楽しみは、ほぼないのです。
タイから日本に帰国したら水際対策が待っている!
タイ入国のハードルがとても高いということはおわかりいただけたと思いますが、実は厳しくなったのはタイだけではありません。帰国先の日本の入国制限もデルタ株含む変異株の感染防止のために厳格化されました。
旅行を終えて日本に帰国。そこに待ち受けるいくつものハードルについても、しっかり理解しておきましょう。
2021年8月16日現在の情報を元ににまとめていますが、デルタ株感染拡大国に関しては日々変わるため、厚生労働省や在タイ日本国大使館のホームページで最新情報をご確認くださいね。
水際対策①入国者数制限でフライトが予約しにくい
現在、タイから日本への直行便は非常に少なくなっていますが、搭乗できる人数も制限が行われています。8月16日現在、全世界から日本に入国できるのは1日に3500名のみ。
日本の水際対策として、日本入国時にも必要書類や手続きが増えました。空港でのチェック体制も強化されていますが、入国者の人数が多すぎると、受入側のキャパシティを超えてしまうこと、新型コロナウィルスが海外から持ち込まれてしまうことが人数制限の理由に挙げられています。
各航空会社も、座席は空いているのに、制限人数を超えて航空券を販売することが出来ず、航空券はすぐに完売してしまいます。帰国者は帰国の予定が決まったら早めに航空券を抑えましょう。
水際対策②日本入国時の必要書類
日本入国時に必要な書類と手続きは以前よりも複雑になっています。現時点で必要な書類は次の通りです。
- タイ出国前72時間以内の陰性証明書(日本政府指定の陰性証明書に明記してくれる病院や検査施設の受検が必須条件です)
- 検疫所が確保する宿泊施設での待機・誓約書の提出
- 入国後14日間の自主待機用の指定アプリケーションの登録
- 健康フォローアップ用質問票
日本の空港に到着してからは、チェックポイントがたくさんあり、飛行機が空港に着陸してから全てのチェックが終わるまでに、なんと3〜5時間もかかるそうです。また、陰性証明書を持っていても、指定の検査方法や様式でないと入国が認められず、日本人なのに出発地に強制送還されたケースもあるほど。とても厳しいので、事前に十分に確認してくださいね。
水際対策③タイからの帰国者は3日間の待機義務あり
デルタ株が流行している地域から日本に帰国した場合、検疫所が確保する宿泊施設で待機し、再検査を受ける必要があります。ほぼ「強制隔離」に近い待機です。
隔離に近い待機期間は、入国前に滞在した国によって、3日間、6日間、10日間に指定されていて、タイの場合は3日間。ただし、タイでの感染状況が悪化すれば、今後日数が変更する可能性もあり、新規感染が落ち着けば、隔離に近い待機をしなくてよくなる場合もあります。最新の情報を確認してくださいね。
宿泊施設は、到着した空港近くのホテルですが、日本の空港に到着してからホテルが指定されるようです。日本での隔離に近い待機は、タイとは違って、事前予約や経費負担は必要ありませんが、タイからの帰国者は日本到着の翌日から3泊4日分の宿泊準備を忘れずに。食事も宿泊施設でお弁当の用意があります。
3日間の待機後、再度PCR検査を受け、陰性であれば、施設から出所して自主待機期間が始まります。
水際対策④検疫施設待機後も11日間の自主待機が必要
海外からの帰国者は、帰国後14日間の自主待機が必要になります。タイからの帰国者はすでに検疫施設での待機で3日間経過しているので、4日目以降11日間が自主待機期間となります。
自主待機期間中は、公共交通機関が利用できないことに注意が必要です。空港から自宅まで近ければ、自家用車、レンタカー、帰国者専用のハイヤーなどを利用して移動し、自宅待機をすることができます。
交通手段が確保できない場合は、空港近くのホテルに滞在する必要があります。これはもちろん有料。自己負担となります。帰国滞在者用の宿泊パッケージがある宿泊施設を探しましょう。
日本の自主待機は、必要最低限の生活用品や、食材の購入の外出は許されています。タイの強制隔離と比較しても、まったく厳しくありませんが、それでも出社をしなくてはならない仕事の人は、時間や経費のことを考えると、まだまだ気軽に海外旅行ができるというわけにはいきません。
プーケットとサムイで始まった観光客受け入れの第一歩
タイ旅行のハードルがどれほど高いか、おわかりいただけたのではないでしょうか。しかし観光客のハードルが高ければ高いほど、本当の意味で困るのは、旅行客を受け入れるタイの観光産業で働く人たちです。観光客がいなくなって、どれほど多くの人が失業してしまったか。もちろん国として、なんとか観光産業を守っていかなければなりません。
そのため、新型コロナウイルス感染対策と並行して、タイの開国(Reopening)に向けた取り組みも着々と進められているのです。「開国」とは、強制隔離なしでの外国人の入国を意味します。
その第一弾として、プーケットでは7月1日から「プーケット・サンドボックス」と称し、「ワクチン接種済み」を条件として、強制隔離なしでの外国人観光客の受入れを試験的に開始しました。プーケットでの14日間滞在後はタイ国内の他の地域に移動することができます。
プーケットでは、このプランを実施するために、全国に先駆けて地域住民のワクチン接種を開始し、70%以上の住民の接種が完了。予定通りに開国を実現しました。
現在、タイは感染拡大のピークを迎えているため、こちらの情報も常に変わりがちです。ロックダウンされている県にスムーズに移動できるかなど、懸念点が多くあります。詳細はタイ国政府観光庁日本事務所の「プーケット・サンドボックス」の詳細をご覧ください。
続いてサムイ島でも、ワクチン接種が進んだことから、7月15日からの開国を宣言。但し、プーケットがかなり以前から開国予告していたのに対し、サムイ島の場合は、7月6日に急に宣言となり、7月15日からあわただしく開始されました。また、プーケットが入国後すぐ自由になるのに対し、サムイでは到着後3日間は、AQに指定されたホテル内で過ごさなければなりません。
詳しい利用方法はタイ国政府観光庁日本事務所の「サムイ・プラス」の詳細をご確認ください。
8月16日には「7+7プーケット・サンドボックス」の開始が発表されたばかりです。プーケットに14日間ずっと滞在しなくても、7日間滞在すれば、プーケットに隣接するクラビ県(ピピ島など)やパンガー県(カオラックなど)、あるいはサムイ島などに移動して7日間滞在することができるようになりました。
ただし、7月からデルタ株が大流行しはじめ、全国的なロックダウンが開始されたことで、タイ人は現在プーケットに入ることを禁じられています。また、プーケット内での感染者も増えてきて、飲食店や観光施設の営業規制が強化されてきました。プーケットサンドボックスの条件が、今後どうなっていくのか注視すべきでしょう。
9月1日から開国を予定していたパタヤも、先日、早々に開国延期を宣言。10月1日からは、バンコク、ホアヒン、チェンマイなど、主要観光地の開国も予定されていますが、現状では予定通り開国されるかどうか、はっきりしてしません。
当初の予定では、徐々に開国する地域を拡大し、2022年1月にタイ全国の開国を予定していました。ところが6月16日、プラユット首相が前倒しで10月中旬の全国の開国を宣言。ただ、タイ国内ではワクチンの調達が予定よりも大幅に遅れていて、現時点での全国の接種率はわずか20%台。コロナの新規感染者数は連日最高記録を更新。タイ国民の不満は最高潮に達し、最近は首相退陣を求めるデモが毎日のように行われている始末です。
いくら観光産業や経済のためとはいえ、このような状況で本当に予定通り開国できるのか、暗澹たる気持ちになってしまいます。
コロナ後のタイ旅行はどうなる?
当初の予想以上に長く続くコロナ禍の世界。その間に、タイの観光産業は大きく変化してしまったようです。まず直接的な変化として、多くのホテルやレストランが、経済的に持ちこたえることができず、廃業を余儀なくされてしまいました。有名な老舗レストランのオーナーが新型コロナウィルス感染で亡くなったというニュースもあり、元通りのタイの活気が旅行再開時に楽しめるのか否かは、予想ができません。
バックパッカーの聖地といわれたバンコクのカオサン通りに、観光客の姿は一人もいません。美しい夜景で有名なラチャダーの鉄道市場も閉鎖されています。
一方、観光客がいなくなったことによって、タイの自然環境は大きく回復しました。プーケットやサムイのビーチでは、かつてないほど澄み切った青い海が見られます。今タイを訪れるなら、絶対にこの美しいビーチを見てほしいと思います。
タイ政府のこれからの観光政策は「量」より「質」を重視し、格安団体ツアー客よりも、富裕層や長期滞在者をターゲットにしたい意向のようです。
また、旅行者の価値観も大きく変わったに違いありません。新型コロナウィルス感染症の世界的なパンデミックの経験を得て、これからの旅行に何を求めていくのか。今までの既存の観光情報が、全て新しく書き換えられることになるのかもしれませんね。
変化しつつあるコロナ後のタイ旅行に備えて、私も最新のタイ情報を発信していきたいと思います。