2021年9月末日。筆者の住むオーストラリア・シドニーでは未だ新型コロナウィルス感染防止策のためのロックダウンが続いています。
2020年3月からオーストラリアでも徐々に感染が拡大した新型コロナウイルス。外国人の入国を認めない事実上の鎖国を徹底させたおかげもあり、感染者数も比較的抑えられていたはずのオーストラリアですが、デルタ株拡大により2021年6月末シドニーで始まったロックダウンは未だ続いています。
日本ではロックダウンやそれに反対する人たちのデモなどの光景がニュースで紹介されていますが、それは切り取られた情報。コロナ禍のオーストラリアは不思議と「オーストラリアっぽさ」を更に実感することも多いです。今回はコロナ禍の2021年9月末の様子を現地からお伝えしながら、コロナ禍オーストラリアで流行したこと、在住者目線での「今のオーストラリア」をご紹介したいと思います。
2021年9月末、未だ続くロックダウン
2020年3月の新型コロナウィルス感染拡大から、ロックダウンはあったものの、各州で感染者0人が続くなど比較的「コロナを抑え込んできた優秀な国」という印象が強かったオーストラリア。その時点でも、筆者の暮らすシドニーではレストランやカフェでのんびりと過ごし、ショッピングや海に出かけたりと、ほとんどマスクを使わず、ほぼ普段通りの生活を送っていました。
しかしシドニーでは2021年6月末、たった一人から始まったデルタ株の感染で、9月末の今もなお3ヶ月以上のロックダウンが続いている状況。現在は急ピッチでワクチン接種が進んでおり、10月から徐々に日常生活に戻すとのアナウンスがありました。
オーストラリアでコロナ禍に流行したもの
新型コロナウイルスの感染拡大で世界中の人々の生活が一変しましたが、それはここオーストラリアでも同じです。恐らくこんなオーストラリアを感じられることは二度とないかもしれません。という訳で、今回はコロナ禍でオーストラリアで流行したものをご紹介しながら、筆者の個人的な感想を踏まえて「オージー(Aussie / オーストラリア人)」気質や「オーストラリアってこんな国だよ」ということをお伝えできればと思います。
1. フィットネス需要の増加でスポーツ用品が品切れ
フィットネス大国のオーストラリアの人達(以下”オージー (Aussie)”)は、ワークアウトが大好き。ランニングコースが整備された海や川沿いには、早朝から夜までランナー達が行き交い、公園ではヨガをする人や、屋外ワークアウトの設備で筋トレをする人達で毎日溢れます。
コロナ禍での「人との接触を避けたい」人達のスポーツジム離れや、ロックダウンによりジムが閉鎖されたことで、筋トレ大好きなオージー達は大騒ぎです。「家をジム化」するべくスポーツ用品店に人が殺到し、店からダンベルが消えるという事態になりました。
その後暫くはどの店でもダンベルは欠品で、ネットの個人売買では古いダンベルが高値で取引される事態になりました。この時期たまたまダンベルを買い足そうと思っていた筆者でしたが、現在はダンベルやベンチも無事に購入し家トレに励んでいます。
2. お酒が爆売れ!酒屋の売り上げが過去最高に
ビールやワイン、ウィスキーなど、お酒がとにかく大好きなオージー。オーストラリアは世界的にも人気のワイン生産地ですが、現在クラフトビールの醸造所が国内700軒以上、クラフトジンの蒸留所が400軒以上もあり、酒類業界全体が今、かつてない盛り上がりを見せています。
コロナ禍でレストランやバーが営業停止になったことを受け、外でお酒が飲めなくなったオージー達は「家飲み」にスイッチ。「ボトルショップ」と言われる酒屋さんの売り上げが過去最高水準(昨年比プラス50%)にまでアップし、さらにロックダウン直前になると段ボール箱を抱えて酒屋さんから出てくるオージーで溢れました。
未だかつてないアルコール消費量に、アルコール研究教育財団が健康被害について注意を促したほど。筆者個人的にはいつもは購入しないエリアのワインを飲んだり、今まで手を出さなかった各地のクラフトジンを試したりと、オーストラリアの美味しいお酒を開拓できた年でした。
3. ホームセンターの売り上げアップ
DIY大国のオーストラリアでは業者に頼らず、DIYをはるかに超えた域まで自分でリフォームする人が多いです。さらに今回のコロナ禍でWFH(ワーク・フロム・ホーム)が推奨されたので、自宅で仕事ができるよう作業環境を整えたり、おうち時間の充実を図るために庭などのエクステリアにお金をかける人が続出。
オーストラリアのホームセンター「バニングス・ウェアハウス(Bannings Warehouse)」では、売り上げ前年比約25%アップという決算報告も出ました。特にガーデニングやバーベキュー設備、テラスや屋外ソファなど、アウトドアリビングの充実化にニーズが集中。筆者自身もロックダウン中、アパートのベランダに家具や緑を買い足し、暇さえあればベランダBBQを楽しんだので、その売り上げアップに貢献しています。
因みに、もともとオージー達はとにかくBBQが大好きで、ホームパーティのおもてなしもBBQ、公園や海のピクニックでもBBQを楽しんでいます。民家やマンションの各家庭のベランダにBBQグリルがあるのは珍しくないですし、週末になるとそこかしこでお肉の焼ける良い匂いが漂ってくるのもオーストラリアあるあるです。
4. キャンピングカーでロードトリップ
海岸線周辺に10,000ヶ所以上の美しいビーチと、内陸には手付かずの自然が残る、世界でも6番目に大きいオーストラリア大陸。アウトドアでのピクニックやBBQなど、自然に触れることが大好きなオージーはキャンプも大好きです。特にコロナ禍以降は自由に旅行ができないことから、ロードトリップやキャンプ人気に拍車がかかります。
シャワーやトイレ、キッチンのあるキャラバンパークも点在しているので、元々人気があった車で寝泊まりしながらロードトリップできる「キャンパー・バンの旅」にさらに注目が集まります。車にベッドなどを設置しキャンプ仕様に改造するニーズも高まり、ミニバンの中古車の価格も高騰し、数ヶ月待ちという状態になりました。
「鎖国で海外旅行へ行けない」「自由に外出できない閉塞感」「人との接触をなるべく避けたい」というニーズを全て解決してくれるが、キャンパー・バンでのロードトリップという訳です。オーストラリア大陸があまりにも大きすぎるので、ちょっとやそっとでは制覇できない、というのも逆にいいのかもしれません。
5. 遅れてきたオンラインショッピング・ブーム
日本ではもはや定番ですが、実はオーストラリアは「オンラインショッピング」後進国。今までそこまで普及していなかったオンラインショッピングですが、コロナ禍で「安全な買い物(Safer Shopping)」のニーズが急騰し、さらにロックダウンでお店も休業していることを受け、オンラインショッピングの売り上げが爆上がりしました。
オンラインショッピングが浸透していなかったせいか、オーストラリアの配送サービスはかなり微妙。日本のようにオーダーした当日や次の日に届くなんて夢のまた夢です。「最速(Express)」の追加送料を払っても3〜4日掛かり、家にいるのに呼び鈴も鳴らさず局戻し、さらに再配送はしてくれないなんてザラ。それがコロナ禍以降は2日後に商品が届いたり、呼び鈴を鳴らしてくれるようになり大感動です!
それでも当日や次の日に手に入れるのはまだ難しいので、今では予めオンラインでスーパーや小売店に注文したのものを、店頭や駐車場、ロッカーで受け取れる「クリック&コレクト(Click & Collect)」が人気です。配達まで時間がかかる物流事情の悪さと、車ならどこまででも行く「車社会オーストラリア」ならではのシステムですね。
もうすぐオーストラリアに行ける?
2021年9月未、オーストラリアは鎖国状態で、残念ながら日本からの観光客を受け入れていない状態です。ただ現在ワクチンの接種を急ピッチで進めていて、シドニーのあるNSW州では10月半ばには80%を超える想定だとか。10月初旬にはロックダウンも解除になって徐々に普通の暮らしが戻り、クリスマス前までには国境を開こうかというプランも出始めています。
「眩しい太陽の元で体を動かすこととアウトドアが大好きで、仲間と美味しいお酒を飲んでストレスを溜めていないから、ひょっとしてオーストラリアが世界的に見ても感染者が少ないのかも?」と変な勘違いしてしまうほど、適度にゆるくお気楽な国民性があります。コロナ禍で逆にそれがよくわかる様々な流行が生まれました。
国境が開いたら是非、そんなゆったりとしたオージー達に会いにオーストラリアに遊びに来てください。