両親と愛犬を連れての岡山旅。せっかくなら温泉で癒されたいと調べてみると、目に飛び込んできたのが岡山県を代表する湯原温泉。古くは豊臣秀吉の時代から湯治の地として知られる温泉郷に心惹かれたものの、そんな歴史ある場所にペット同伴で泊まれる宿があるのだろうか…あった!
それが今回お泊まりした「八景」です。お泊まりできるだけでも嬉しいのに、なんと通されたお部屋はスイートルーム! 驚きと感動に満ちた1泊2日をレポートします。
温泉郷の1番奥に立つ「うさぎ」が目印の温泉宿
八景があるのは湯原温泉郷の最も奥。湯原ダムのすく下に架かる吊り橋「寄り添い橋」を渡った先にあります。
お宿の名前の横にはウサギのマーク。エントランスをくぐると…そこにもうさぎがお出迎えしてくれました。
八景の女将さんが卯年で、娘さんもお母さんも卯年という3世代うさぎ親子だからうさぎをシンボルマークにしたのだとか。よく見るとお宿のあちこちにうさぎの置物やイラストがあるので探してみるのも楽しいですよ。
湯原温泉八景で犬と一緒に泊まれるお部屋は最上級スイートのみ
さて、チェックインを済ませスタッフさんに案内された私たち。エレベーターで3階に上がり、長い廊下を奥へ奥へと進みます。もしや、これは犬連れでありがちな「1番暗くて景色の悪い部屋」へ通されるパターンか?とドキドキしたのですが、その予想は大外れ。「このお部屋になります」と通されたお部屋がこちら!
広すぎるー! 暖炉のあるリビングに琉球畳が敷かれた小上がり和室がつながるお部屋は、リビングだけでも98平米!ホテルの客室の中でも1、2の広さを誇るスイートルームです。このお部屋には「OHANA」という名前がついているのですが、ハワイ語で家族を意味するその名前には「ペットも大切な家族の一員。最上級のお部屋でおもてなししたい」という女将の想いが込められているのだとか。うぅぅぅ、到着早々感動して泣きそうです。
絶景を見渡す客室温泉つき!
リビングの広さにも驚きましたが、バスルームもこの広さ!
ガラスの先には絶景が広がる大きなプライベート温泉です。洗面所はダブルボウル仕様になっていて使い勝手も抜群。こんな開放感ある温泉に24時間好きな時に好きなだけ浸かれるなんて…。贅沢の極みとはこのことです。
家族で泊まっても余裕!ベッドルームは別にあり
寝室は廊下を挟んだ先に独立したツインのベッドルームが用意されていました。今回は両親との3人旅だったのでこのお部屋を母と私で使い、父は和室にお布団を敷いてもらうことにしたので窮屈感は一切なし。むしろ広すぎて持て余すほどの贅沢空間です。
お部屋のアメニティは基礎化粧品以外は完備
お部屋には館内着と浴衣、足袋にくわえて最低限のアメニティが揃っています。バスタオルをはじめ、タオルは洗面所に潤沢に用意されているので入浴後はつねに新しいタオルを使えるのも高ポイント。バスルームにはシャンプーやリンス、ボディソープが用意されていましたが基礎化粧品がないので使い慣れたものを持参することをおすすめします。
自宅のようにくつろいでほしいからわんちゃんルールは最低限
お部屋には衛生用品をはじめ食器などのドッグアメニティが用意されています。ケージも用意されていますがわんちゃんはお部屋の中で自由にしてOK!
ペットと泊まることができても、寝る時は別々というお宿が多い中、こちらではベッドでもお布団でもペットと一緒に寝ることができます。ちなみにペットカートもお宿が用意してくれましたが館内もリードで歩いていいのだとか!
温泉とレストランには入れませんが、それ以外は制限なし。本当に「家族」として扱ってくれるのがわかって嬉しくなりました。
トイレトレーニングができていない子はマナーパンツ着用
ただしひとつだけお約束が。それはトイレトレーニングが済んでいない子はマナーパンツを着用すること!
ただこれはルールというより、当たり前のことですよね?我が家の愛犬ふわりはトイレは完璧なのでその点はクリア。広いお部屋の中を走り回って遊んだり、ソファーでお昼寝したり。自宅のようにくつろいでいました。
肌にしっとりまとわりつく無色・無臭の低張性アルカリ高温泉
お食事まではまだ時間があるので、館内を探検することに。まずは楽しみにしていた温泉です!
八景には男女入れ替え制の大浴場「川の湯」と有料の貸切温泉とサウナが合わせて4つ用意されています。私たちはお部屋に立派な貸切温泉があるので今回は大浴場だけを堪能しました。
大浴場「川の湯」
大浴場へ続く階段の入り口にはタオルが常備。お部屋から持っていくことなく、いつでも新しいタオルが使えるのが嬉しいです。そして大浴場「川の湯」がこちら!
湯原温泉の泉質はph9.3の低張性アルカリ高温泉。肌にまとわりつくやわらかさで無色透明で無臭なお湯は赤ちゃんでも安心して入れる温泉としても有名なんだとか。お湯はややぬるめでしたが、お宿の前を流れる旭川を眺めながらじっくりのんびり浸かっていると体の芯からポッカポカ!
心なしか保湿クリームなしでもお肌がしっとりしているような。滞在中、朝晩と大浴場を利用したのですが翌朝の化粧ノリがよかったのはいうまでもありません!
露天風呂番付で「西の横綱」と呼ばれる砂湯
そして湯原温泉といえば「砂湯」。湯原ダムの足下に湧く温泉を岩で囲んで作られてた浴場で、川底から砂を噴きながら温泉が湧き出していることからが砂湯と呼ばれているのだとか。全国の露天風呂番付で西の横綱とも称されたこの砂湯を求めて湯原温泉に来る方が多いそうです。
24時間無料で入浴可能。混浴なので深夜は避けるのがベター
この砂湯があるのは八景のすぐ脇。大浴場や私たちが泊まったお部屋からも一望できる場所にあるので、八景のゲストはアクセスしやすいのが魅力です。混浴に抵抗がある人のために入浴着の貸し出しもあるのでご安心を。とはいえ、トラブル防止のためにも深夜の時間は避け明るい時間に入浴するのがおすすめです。私も入ってみようと思ったのですが、宿泊した日は大雨だったので泣く泣く断念。帰宅してからどうせ濡れるんだからやっぱり入ればよかったなぁと後悔しています。
ゲスト同士の話も弾むラウンジ
湯上がりにお邪魔してみたのがロビー脇にあるラウンジ。
暖炉が暖かく迎えてくれるラウンジはクラシックな雰囲気で、おしゃれレトロな喫茶室といった趣き。もちろんわんちゃんも同伴可能で一緒にくつろぐことができます。
ラウンジではサイフォンで入れたコーヒーが楽しめたり、ゲストには無料のソフトクリームサービスも!
私たちがソフトクリームを食べているとお隣のテーブルから「何度目ですか?」「私はもう10年通ってますよ」なんて会話が耳に届きました。そういえば温泉でも何十年も通っているというリピーターさんが話しかけてくれたっけ。
気づけば「野菜が美味しい」「朝には芋粥を食べて」「温泉は何時が空いてるからおすすめ」などなど、どんどんリピーターさんから情報が集まってくる(笑)。温泉宿というとちょっと肩肘を張りがちですが、ここのゲストはみーんなフレンドリー。そんなほっこりした雰囲気も八景の魅力なんだと思います。
不定期開催のライブも楽しみのひとつ
夜のラウンジでは不定期でライブを開催。もちろんわんちゃんも一緒に参加できます。
この日はカホーンや和太鼓、竹笛を使ったライブが開催され、懐メロから子供が喜ぶ歌まで数曲を披露してくれました。迫力ある和太鼓の音色に最初ふわりはびっくりしていましたが、竹笛の音色が心地よかったのか最後はカートの中でスヤスヤ。愛犬と音楽鑑賞できる機会はめったにないので貴重な経験ができて得した気分です。
野菜が60種類以上!リピーター続出の山里料理
さて、残る楽しみはお食事です!
八景のお料理は地元の旬の野菜を使った野菜中心のお料理。夕食・朝食をあわせると60種類以上の野菜を提供するという山里料理を目当てにリピートするゲストが多いそうです。ラウンジで会ったリピーターさんも大絶賛していたお食事、食べる前から期待が膨らみます!
湯原温泉八景の夕食
そぼろ餡がかかったうすい豆どうふの先付けから始まった会席は、菜の花の辛子和え、竹の子の木の芽和えなどで彩られた八寸へと続き、春と舌で春の訪れを感じさせてくれます。
お吸い物は蛤、焼きものは雨子の塩焼きを特製のお味噌で。一品一品、とてもシンプルなのに出汁の旨味や食材の旨みが口いっぱいに。そして、筆者を驚かせたのがこちら!
八景の名物料理「野菜の炊き合わせ」
里芋に春人参、えびす南瓜に千両茄子。その時の旬なお野菜が詰まった八景を象徴する野菜の炊き合わせです。「野菜中心のお料理に期待大!」なんて言いましたが、実は筆者…野菜が苦手(笑)。食べられないわけではありませんが、好んで食べないというか、食べ切れたことがないというか…ざっくりいうと美味しいと思ったことがない。それが、初めてお野菜を美味しいと感じました。
苦手な野菜のえぐみが一切なく、ほどよい甘さと上品なお出汁がなんて優しいんでしょう!
これは野菜ごとに別々に炊いて、最後に合わせるという手間がかかった調理法だからこそのおいしさ。いつもなら絶対残す絹さややカブもペロリと食べる私の姿に母が1番驚いておりました(笑)。
「逸品」セレクトプランでより豪華に
今回、私たちがチョイスしたのが八景会席にこだわりの料理を一品プラスできるプラン。「東伯牛」「あわび」「季節の逸品(この日は山菜の天ぷら)」から好きなメインをチョイスできます。
母はあわびのお造りを、父と私は東伯牛をチョイスしてシェアして楽しみました。この後にも小鍋、揚げ物、炊き込みご飯と続く八景の豪華会席。食べ終わるころはお腹がパンパンで「野菜メインだからきっと物足りないかもね」なんて話していた自分たちを叱り倒したいくらい(笑)。八景が「食べる宿」と言われているのを身をもって実感した大満足のお夕飯となりました。
わんちゃんにも特別メニューを
わんちゃんを家族の一員として扱ってくれる八景ですから、わんちゃん用のメニューも用意されています。
この日、ふわりがチョイスしたのは合鴨のソテー! まぁ、なんて贅沢なんでしょう。もちろん大喜びで食べていましたが、驚いたのは付け合わせのお野菜まで綺麗に食べたこと!
我が子は飼い主に似たのか、それ以上の野菜嫌い。どんなに細かく刻んだ野菜でも見事にそれだけ残すという特技の持ち主なのに、ほうれん草まで食べちゃうとは!
やはりわんちゃんも人間と同じで美味しいものはわかるんですね。
湯原温泉八景の朝食は和食か洋食をチョイス
八景の朝食は和食と洋食から選べますが、私たちは和食をチョイス。
お出汁たっぷりの含め煮に、厚焼き卵など朝から体が喜ぶおかずがトレーいっぱいに並びます。
八景ならではのポイントが「白米」「卵かけご飯」「芋粥」の3種類の主食が楽しめること!しかもチョイスではなく「全部」食べられちゃうんだから憎らしい(笑)。ダイエットはどこへやらで朝から3膳、しっかりいただきました!
レストラン食を希望すれば宿泊代が割引に
お宿にはレストランもあり、そちらでの食事を希望すれば1食につき1人5,000円引きになるそうです。朝晩どちらもレストランで食べると1万円引き、3人なら3万円引きになるので大きいですよね。でも我が家はふわりと離れるなんて選択肢はないのでお部屋食一択でしたが、いろんな選択肢があるのは嬉しい限りだと思います。
多くのファンを持つ八景の名物女将
温泉宿の女将さんというと、お着物を着て「ようこそいらっしゃいました」と迎てくれる。そんな方を想像しませんか? でも八景の女将は違います。
エプロン姿!(笑)。
お宿に来たゲストを「おかえりなさい!」、帰るゲストを「いってらっしゃーい!」と見送ってくれる元気で陽気なこの女将こそ、八景の魅力そのもの。
「ゲストの人生に寄り添う」をモットーに、赤ちゃんからお年寄り、そしてわんちゃんまですべてのゲストが気持ちよく宿泊できるように設備を整え、ひとりひとりの嗜好に合った料理を提供できるように対応しているのだとか。
もっと犬連れにも寄り添いたいからペットホテルもオープン
そんな女将が、さらに犬連れゲストのことを考えて2月にオープンさせたのが「ドギーズ八景」。真庭地区初のペットホテルです。愛犬と一緒に宿泊するとどうしても値段が高くなってしまったり、観光できるスポットが限られてしまったりするのは致し方ないところ。私たちはそれを承知で旅しているのですが、もっと気軽に犬連れ旅ができたらなと…感じる方も多いでしょう。そんな想いを汲み取って、わんちゃんだけでなく猫ちゃんも預かる施設を作ったというのだから驚きです!
ペットと離れるのは少し不安ですが、ここでLINEの報告サービスがあるので安心!(別途550円、八景のゲストは無料です) 敷地内には300㎡のドッグランも用意されていて滞在中に遊ばせてもらえるのだとか。わんちゃんたちもストレスなくお留守番を楽しめる心遣いが嬉しいですね。
DATA ドギーズ八景 所在地:岡山県真庭市禾津373-1 アクセス:湯原ICすぐ TEL:0867-62-2212、090-8511-1397(対応可能時間10:00-17:00) 1泊料金:小型犬(8kg以下)・猫4,000円/中型犬(8~24kg)5,000円/大型犬(24kg以上)6,000円(税別) 一時預かり料金:6時間まで3,000円(以降、1時間ごとに500円) URL:ドギーズ八景▶ ※生後5ヶ月から13歳までの健康なわんちゃんと猫ちゃんに限ります。利用には1年以内に接種したワクチンおよび狂犬病注射の接種証明書が必要です。
「ただいま!」と帰りたくなる居心地のいい温泉宿
はじめて訪れた八景でしたが、どこか実家に帰ってきたような安心感と居心地のよさを感じた1泊2日。リピーターが多いというのも納得でした。
それを象徴するかのように、エントランスには来訪ゲストが残した絵馬がいっぱい! 「またここへ戻ってこれますように」という言葉がいくつも並んでいました。
もちろん私も「またふわりと家族と再訪できますように」と一筆。この次は砂湯にも入ってみたいし、まだ気づいていない野菜のおいしさもまだまだあるはず! 次来る時は 「ただいまー!」と帰ってきたくなるような優しさと懐かしさに溢れた温泉宿でした。
DATA 湯原温泉 八景 所在地:岡山県真庭市豊栄1572 アクセス:【電車の場合】 JR山陰本線倉吉駅正面出口→タクシー約50分または事前予約の送迎 JR姫新線中国勝山駅正面出口→バス蒜山高原行き約35分湯原温泉下車→徒歩約10分またはタクシー約5分 【自動車の場合】 米子自動車道湯原ICから国道313号線約6km約10分 TEL:0867-62-2212 URL:八景 ※わんちゃんの宿泊には1年以内に接種したワクチンおよび狂犬病注射の接種証明書が必要です。