富山県「大牧温泉」宿泊記・アクセス方法は船のみの秘湯!

ライター 泉よしか

泉 よしか

女子目線温泉ライター

日本広しといえども、ここまで徹底した秘湯はなかなかありません。富山県の「大牧温泉」は、船でしか行くことができない庄川峡に面した一軒宿。野趣あふれる露天風呂や周辺に他の建物もない山あいの静かな環境は、非日常感を味わうのにぴったりです。

客室やお風呂からも秘境の渓谷が見下ろせる「大牧温泉」をご紹介します。

大牧温泉へのアクセス

「大牧温泉」への旅は、庄川峡遊覧船の船着場から始まります。

ここはその昔、『よしえサン』(須賀原洋行 作)というマンガに、部屋から釣りができる秘湯の宿として登場したことがあります。それを読んで以来、「いつか行ってみたいね」と私たち夫婦はずっと「大牧温泉」に憧れてきたのです。今はもう客室から釣りはできないそうですが、それでも船でしか行くことができない秘湯という環境は当時と変わっていません。

アクセスは船のみの秘境感!船で30分庄川峡の眺めが楽しめる

大牧温泉行き遊覧船の船着き場

ドキドキしながら到着した「庄川峡遊覧船」乗り場は、小牧ダムのすぐ近くでした。これから向かう「大牧温泉」は、このダムが作った幅広い川とも細長い湖ともつかない庄川峡の奥にあります。

おりしも紅葉まっさかり。大牧温泉へ向かう途中の渓谷の眺めも期待できそうです。

庄川峡の紅葉
庄川峡の紅葉

遊覧船は大牧温泉まで往復する「大牧温泉コース」と、途中の長崎橋でターンするショートバージョンの「長崎橋周遊コース」があり、大牧温泉宿泊者はもちろん「大牧温泉コース」の方に乗船しなくてはなりません。ちなみに宿泊しない人は「大牧温泉コース」でも大牧温泉で下船せず、そのまま往復遊覧することができます。

遠ざかる小牧ダム
遠ざかる小牧ダム

私たちを乗せた船は、船着き場を出るとゆっくりと向きを変え、小牧ダムを背にして蛇行する庄川をさかのぼっていきます。途中、長崎橋や利賀大橋が架かっているので、それを順に潜っていきます。
海と違って船はあまり揺れることはなく、また庄川峡が曲がりくねっているので、ゆるやかなカーブを過ぎるごとに新しい景色が見えてきて飽きません。

長崎橋と利賀大橋

およそ30分の船旅で、大牧温泉が見えてきました。船は大牧温泉の前まで行き大きくUターンして、温泉旅館の船着き場に寄港します。

大牧温泉の外観
見えてきた大牧温泉

こうして目の当たりにすると、この宿は本当に庄川峡に向かって張り出すように建っているんですね。途中に大牧発電所を見かけたほかは、まったく建物の影もありませんでした。本当に秘境に建つ本物の秘湯です。

大牧温泉の船着き場

それでは船着き場から階段を上って大牧温泉旅館へ行ってみましょう。

大牧温泉の客室

大牧温泉

「大牧温泉」は人里離れた秘湯ではありますが、立派な建物です。電気も通っていないような不便な旅館をイメージしているとびっくりするかもしれません。

大牧温泉の館内

館内はとても綺麗で快適。隅々まで清掃が行き届いています。そして思ったより広かったです。お風呂や食事処へ行こうとして時々迷いました。

客室からも庄川峡を一望

大牧温泉の客室

お部屋からも紅葉に染まった錦の山々と翡翠色をした庄川峡が見えます。まさに絶景です。この景色を窓から眺めながら滞在時間を過ごせるなんて本当にぜいたく極まりありません。

宿のご主人に伺った話ですが、このあたりは山が切り立っているのでその谷底に泊まる感覚が面白いとか、細長いダム湖ゆえに川にしては幅広く、この対岸との距離がとてもいい雰囲気だと仰るお客さんもいるとか。わかります!

この仙境のような景色と静けさは、日本国内探してもなかなか他にありません。

大牧温泉の客室から見る庄川峡

お部屋でちょっとくつろいだ後はお風呂へ行ってみましょう。ここの温泉に入るのを私は何より楽しみにしてきました。

大牧温泉の温泉は水底に沈んだ源泉を引く秘湯

大牧温泉の源泉は、小牧ダムができたことによって庄川峡の底に沈んでしまいました。現在は湖底から水中ポンプで汲み上げているということで、その源泉井戸も泊まった部屋から見ることができました。

大牧温泉の源泉井戸と湧出地

湖に突き出したプラットフォームのようなところがその井戸です。よく見ると、汲み上げきれなかった源泉がアワとともに湖面に上ってきているもよう。このアワは常に出ているわけではなく、激しく出たかと思うとシンと静まり返っていることもあります。温泉は生き物だとよく言いますが、自然のものなんだなと改めて感じました。

「大牧温泉」のお風呂は、男女ともに3ヶ所ずつあります。女湯は大浴場、中浴場、露天風呂の3つ。男湯は大浴場、庄川峡に面した露天風呂、建物裏手の原生林に囲まれた露天風呂の3つです。

女性専用露天風呂は息をのむ絶景

最初に紹介したいのは女性専用露天風呂。

女性専用露天風呂の看板

建物の外に出て少し歩くと脱衣棚があり、その先に露天風呂があります。思わず息をのむ絶景!まさに秘境だからこそのロケーションです。

庄川峡を望む女湯露天風呂
庄川峡を望む女湯露天風呂

柵越しに見えるのは静かな庄川峡。ちょうど山の紅葉がお湯の表面に映り込み、それを揺らしながら入るのは勿体ないような気さえします。
泉質はナトリウム・カルシウム―塩化物硫酸塩泉。肌に水分を運んでしっとりとさせてくれる保湿と温かさを逃がさない保温の両方を兼ね備えた温泉で、特に寒く乾燥しがちな季節に真価を発揮。

そして実はこの露天風呂の先に、もう一つ小さい野天風呂があります。

大牧温泉の女湯野天風呂
露天風呂の先にある小さめの野天風呂

岩陰にかくれるようにあるこちらの野天風呂は、1人か、せいぜい2人でいっぱいのサイズ。しかしここに入ると正面が庄川峡で、その眺めを独占できるのは最高!

お湯からは柔らかいゆで卵のようなにおいと薬っぽいにおいがして、肌触りはとてもなめらか。露天風呂と野天風呂は両方とも、お湯が冷めないように上に湯口を設置せず、浴槽の中から源泉を注入しているのですが、それがまた温泉の酸化を防ぐので鮮度が保たれます。

なお露天風呂には洗い場はないので、シャンプーやボディーソープを使う時は大浴場か中浴場を使います。

女性専用大浴場では温熱交互浴も可能

大浴場の暖簾

次に大浴場です。大浴場には2槽に分かれた浴槽と、階段を上ったところにある単独の小さな浴槽と3つの浴槽がありました。

大浴場の女湯
大浴場の女湯

階段上の小さな浴槽は、入ってみると下の方がとてもぬるい。ぬるいを通り越してひんやりと感じるほど。実はこのお風呂は温泉のほかに山水を入れてぬるめにしてあるのです。大きい浴槽で温まりすぎたら、ここで少しクールダウンすると温熱交互浴ができちゃいます。

女性専用中浴場

女湯の最後に紹介するのは中浴場。ここは内湯ですが窓が広く、悪天候の日でも湯船から快適に景色を見ながら入浴できます。

中浴場(女湯)
中浴場(女湯)

男湯露天風呂

庄川峡に面した男湯露天風呂
庄川峡に面した男湯露天風呂

ついでなので男湯の方もご紹介しましょう。夫にコメントを聞くと、庄川峡が見える露天風呂より裏手の露天風呂の方が開放感があって気に入ったとのこと。

さらに女性専用露天風呂の写真を見て、こっちの方が良さそうだな、とも。確かに「大牧温泉」で一番の絶景露天風呂は女性専用の方かもしれません。

建物裏手の野趣あふれる男湯露天風呂
建物裏手の野趣あふれる男湯露天風呂

大牧温泉の夕食はホタルイカの沖漬けが絶品!富山湾の海の幸に舌鼓

大牧温泉の夕食一例

夕食には地元・富山産の海産物を中心に彩り豊かなお料理が並びます。この日のメニューは洋風のオードブルにブリ、マグロ、甘エビのお刺身、焼いた車エビに白エビのしんじょ、ホタテの酢の物など。鍋は豆乳鍋で、肉と野菜を入れてから加熱します。

大牧温泉自慢のホタルイカの冲漬け

特に美味しくて印象に残ったのが「ゆず風味ホタルイカの沖漬け」。

ホタルイカの本場と言えば富山湾。そして庄川はゆずの名産地。このホタルイカとゆずのコラボですから美味しくないわけがない。お酒もどんどん進みます。

あさりご飯とお吸い物

〆は豆がたっぷり入ったあさりご飯でした。ごちそうさまでした。

大牧温泉から再び庄川峡遊覧船で帰る

大牧温泉と庄川峡

「大牧温泉」から帰る時は、9時10分か11時5分発の遊覧船に乗る必要があります。
(12月1日~3月31日は冬ダイヤ・春ダイヤで11時5分の便はありません)

ほとんどのお客さんは9時頃にチェックアウトし9時10分の便で帰ってしまいますが、大牧温泉のチェックアウト時間は11時までなので、実は9時から11時までが人も少ない最も贅沢な時間となります。

私はこの時間に露天風呂に入りにいったり、お部屋から庄川峡を眺めていたりしました。本当にゆっくりできました。

大牧温泉旅館の遊覧船船着き場
大牧温泉旅館の遊覧船船着き場

チェックアウトして遊覧船に乗り、船が離岸するとだんだん宿の姿が遠ざかります。その間、スタッフの方がずっと手を振ってくれています。

帰りもよく晴れて、素晴らしい景色を楽しむことができましたが、滞在時間がとても充実していたので寂しい気持ちでいっぱいです。

遠ざかる大牧温泉の船着き場
遠ざかる大牧温泉の船着き場

また機会があれば季節を変えて泊まりにきたいと思う温泉でした。

日常から離れた環境、簡単には行かれない温泉、そんな旅先をお探しなら、ぜひ「大牧温泉」への旅を考えてみてください。

DATA
大牧温泉
所在地:富山県南砺市利賀村大牧44
電話番号:0763-82-0363
アクセス:JR新高岡駅から路線バス約1時間20分「小牧口バス停」下車後、庄川峡遊覧船で約30分の船旅
公式サイト:大牧温泉

ライター 泉よしか

泉 よしか

女子目線温泉ライター