観光列車の旅が楽しい四国エリア。愛媛県を走る人気の観光列車『伊予灘ものがたり』が2022年4月にリニューアルしたのは、鉄道ファンの記憶に新しいところ。今回は、香川県と徳島県、四国の真ん中を走る『四国まんなか千年ものがたり』の旅をご紹介します。

徳島と香川を結ぶ『四国まんなか千年ものがたり』
運行開始5周年を迎えた『四国まんなか千年ものがたり』は、香川県の多度津駅と徳島県の大歩危(おおぼけ)駅を結ぶ人気の観光列車で、週末と休日中心に運行。
沿線には、平家の落人伝説や、2億年の時が作った大歩危峡、古くから水運として利用されてきた“四国三郎”と呼ばれる吉野川、山の斜面に貼り付くような独特の景観の傾斜地集落など、歴史を感じるスポットが数多く見られます。
『四国まんなか千年ものがたり』は、通常なら特急で約1時間の区間を、2時間半から3時間かけてゆっくりと走る優雅な旅時間を提供。のどかな四国の真ん中を旅してきましたのでご紹介します。

『四国まんなか千年ものがたり』は、多度津駅から大歩危駅へ向かう列車を「そらの郷紀行」、大歩危駅から多度津駅へ向かう列車を「しあわせの郷紀行」と呼びます。土地勘のない人は下の図をご覧いただくと、イメージしやすいでしょう。

「しあわせの郷紀行」と「そらの郷紀行」では、楽しめるお食事も、洋食・和食と違いがあります。今回は、大歩危駅発の「しあわせの郷紀行」に乗車してきました。
「しあわせの郷紀行」の始発(そらの郷紀行の終点)大歩危駅
「しあわせの郷紀行」の始発駅は徳島県の大歩危駅です。「そらの郷紀行」では、逆に終点となります。大歩危駅下車すぐの場所には、「歩危マート」というローカルスーパーがあるのですが、本店向かいの2号店では、自分で挽いて飲む無料のお茶や名物料理が楽しめるスポットとしても大人気なんです。

中でも観光客のお目当ては、テレビでもよく紹介されている、歩危マートオリジナルの「ぼけあげ」という巨大なあげ。お土産として持って帰って家で食べてもいいし、2号店でぼけあげを使ったメニューを楽しむのもおすすめ。

ふわふわのあげは、トースターで焼くとカリっと香ばしく、お酒のお供にもぴったりなんです。筆者も毎回買って帰るお気に入り!他にも地元・徳島県三好市の特産品が手に入りますので、お土産の購入にもいいですよ。
DATA 歩危マート 住所:徳島県三好市西祖谷山村徳善西7 電話:0883-84-1111 営業:08:00~18:30(日曜のみ18:00閉店) 定休:元旦 web:歩危マート
『四国まんなか千年ものがたり』の車両デザイン
大歩危駅周辺を楽しんだら、いよいよ乗車。
JR四国の観光列車のデザインは、自社でされているそうです。実は前回乗車した時に、ホームで列車の写真を撮っていると、「ぼくがこの列車のデザインをしたんです!」と声をかけてくれた人がいたんです。まさにJR四国のデザイン担当の人でした!びっくり(笑)
『四国まんなか千年ものがたり』のデザインコンセプトは、“日本のたたずまい”。車内は古民家のイメージで、杉の木を薄く貼った壁や、古民家の囲炉裏の火棚から着想を得た天井も見どころ。天井は鏡面になっているので、車内が広く見えます。

写真は1号車「春萌(はるあかり)の章」。四国の山々の新緑を思わせる緑が美しい空間です。よく見ると、ソファーの緑にも濃淡があるような…。

3号車の「秋彩(あきみのり)の章」は、座席レイアウトは1号車とほぼ同じですが、紅葉色のソファーが印象的です。

2号車は更に特徴的で、7メートルの横並びベンチソファーになっています。親・子・孫の三世代旅行や、グループ旅にぴったり。人数が多ければ(6名以上なら)思い切って貸し切ることも検討してみましょう。
あの絶景やあの秘境駅にも!
大歩危駅を出発すると、大歩危小歩危を車窓から眺めながらのんびりとした列車の旅が始まります。景色のいい場所では列車がゆっくりと走ってくれるので、シャッターチャンスを逃すことも少ないでしょう。外国人観光客に大人気の大歩危峡も、今ならゆったりと観光できるチャンスです。時間が許す人は、大歩危駅から乗車する前に、ぜひ遊覧船も楽しんでみてください。

旅の時間に限りがあり、じゅうぶんに観光できなかった人も、車内でアテンダントによる沿線情報が楽しめますよ。橋やトンネル、川の紹介などに耳を澄ませてみてくださいね。沿線では地元の人が手を振る姿が見られたり、地元の物産を買い求めることのできる停車駅もあります。

中でもおすすめなのが、本来ならなかなかアクセス困難な秘境駅の坪尻駅での下車。『呪術廻戦』のオープニングのモデルではないかと噂されているあの駅です。

坪尻駅では珍しいスイッチバック(列車が急こう配の峠をのぼるためのジグザグの線路)がありますので、こちらもぜひお楽しみください。少しの距離だけ、列車が反対方向に進みます。
DATA JR坪尻駅 住所:徳島県三好市池田町西山立谷
『四国まんなか千年ものがたり』車内でのお楽しみ
『四国まんなか千年ものがたり』では、車内で味わう香川・徳島の味覚も楽しみのひとつ。「しあわせの郷紀行」、「そらの郷紀行」では、提供されるお食事(予約制)が違うので、予約する際には旅程と一緒にお料理のチェックもお忘れなく。

今回乗車した「しあわせの郷紀行」のお料理は、日本料理「味匠 藤本」料理長監修の「おとなの遊山箱」。「遊山」という言葉、なんだかウキウキしませんか?「遊山」というのは野山に遊びに行くことを意味し、徳島でよく耳にする言葉です。
箱の中は3段のお重になっていて、徳島の季節の味覚がぎっしりと詰まっています。食後にはコーヒーと季節の和菓子も。

ちなみに前回乗車した「そらの郷紀行」では、金刀比羅宮が運営する「神椿」による、さぬきこだわり食材の洋風料理でした。こちらでは、香川の厳選素材を使ったお料理が楽しめます。

オリーブサイダーや、地元の野菜や果物を使ったノンアルコールカクテル、日本酒飲み比べなどの各種ドリンクやおつまみは車内でオーダーできますので、気になるものはメニュー表でチェックしておきましょう。
※お料理内容やドリンクは季節などによって異なります

列車がトンネルを通るタイミングにもご注目。暗い車内にオレンジ色のライトがほのかに灯り、この一瞬にはまるでレストランのような雰囲気が味わえます。

車内では、『四国まんなか千年ものがたり』のオリジナルグッズのワゴン販売もあり、乗客に引っ張りだこ!

筆者は千年ものがたり限定デザインの和三盆を購入。他にも、車両をイメージしたSWEETS BOXや、徳島の銘菓・ぶどう饅頭など、お土産にぴったりなグッズがラインナップ。
琴平駅構内のラウンジTAIJU
『四国まんなか千年ものがたり』には、観光列車用待合室を設けている駅があります。それがこんぴらさんの最寄り駅の琴平駅。

お食事を事前予約されている人には特別なおもてなしも。「そらの郷紀行」ではウェルカムサービスが、「しあわせの郷紀行」ではフェアウェルサービスがありますので、忘れずに受け取りましょう。

お食事を予約されていない人も、ぜひ立ち寄ってみてください。琴平駅乗車降車でなくても、列車は琴平駅でしばらく停車しますので、見学するタイミングがあります。
DATA JR琴平駅 住所:香川県仲多度郡琴平町榎井
四国のまんなかを優雅な列車で旅しよう
『四国まんなか千年ものがたり』は、ベビーカーや車いすでも利用しやすい設計になっています。移動そのものが旅時間になりますので、乗換や移動が大変な小さなお子さんやご高齢の家族と一緒の旅には特におすすめです。次の旅では、列車に乗ったまま観光やお食事も楽しめる観光列車の旅に出かけてみてください。
また、せっかくならお得に旅したいですよね。「四国フリーきっぷ」や「バースデイきっぷ」などのお得なきっぷで旅人の間では有名なJR四国ですが、現在はこれらよりお得な「四国アフターDC満喫きっぷ」というものが発売されています。期間限定のため2022年6月26日発売で終了ですが、特急にも乗れて3日間乗り放題で11,000円と破格!詳しくは下記のDATA記載の公式webでご確認ください。
DATA 四国まんなか千年ものがたり web:JR四国 四国まんなか千年ものがたり 四国アフターDC満喫きっぷ web:JR四国ツアー 四国アフターDC満喫きっぷ