軍艦島上陸・周遊ツアーに参加!軍艦少年でも話題

ライター 塚本隆司

塚本隆司

日本観光士会認定観光士

長崎で行きたいところ。きっと、いくつもあるでしょう。その中には、行きたくてもなかなかたどり着くことができない場所があります。それが「端島(はしま)」、通称「軍艦島」です。
海上にたたずむ廃虚の島として人気の観光スポットであり、映画やミュージックビデオなどのロケ地としても知られ、2021年12月10日から公開の『軍艦少年』は、まさに軍艦島が舞台の物語。世界文化遺産登録後、初の映画撮影が行われました。
軍艦島観光は、長崎に着いてから「行こう!」と思っても遅いんです。観光を楽しむための準備から鑑賞ポイントまで紹介しましょう。

軍艦島遠景
廃墟の島、軍艦島

軍艦島って、どんなところ?

正式名称は「端島」。海に浮かぶ姿が、まるで軍艦「土佐」に似ていることから「軍艦島」と呼ばれています。高い岸壁に囲われた中に、廃虚となった高層鉄筋アパート。このミステリアスで圧倒的な存在感が人を惹きつけます。
日本の近代化を支えた石炭産業の一大拠点は、2015(平成27)年7月に「明治日本の産業革命遺産」のひとつとして、世界文化遺産に登録されました。

ただ、それだけでは語れないのが軍監島。明治・大正・昭和とここに住み、働いてきた人たちの生活がありました。最盛期には約5300人が住んでいた街ですが、石炭の採掘が終わり、1974(昭和49)年に無人島に。たった50年ほど前の話です。

軍艦島 船からの眺め

島内には、小中学校や病院、派出所、郵便局。売店もあれば料理屋、映画館、パチンコ店など娯楽施設もある文字通りの”街”が存在していました。
軍艦島を知るには、訪れ上陸するのが一番。そして、今のうちに訪れておくべき観光スポットなのです。

軍艦島上陸は必ずできるわけではない

軍艦島があるのは、長崎港から南西に約18キロメートル、船で片道約40分のところ。上陸・周遊ツアーのほとんどが長崎港発着のため、もっと近いところと思っている人が案外いるようです。

長崎半島の先端にあたる野母崎からなら西に4.5キロメートル。浜辺からでもよく見えます。

軍艦島 野母崎からの眺め
左から端島(軍艦島)、中の島、高島(石炭産業発祥の島)

軍艦島がいつでも行けるわけでは無いと言われるのは、晴れていても波が高ければ上陸できないため。たとえ出航しても、島の周囲をグルッと回ったり、プランを変更して石炭産業発祥の島・高島に上陸するツアー会社もあります。

上陸の判断基準に【端島見学施設利用基準】があり、次の場合は上陸できません(軍艦島運航会社、全社一律の基準です)。

軍艦島に上陸できない条件

  1. 伊王島沖に設置された波高計の測定値が0.5メートルを超えるとき
  2. 許可事業者の船舶に設置された風速計の測定値が、端島周辺海域において5メートルを超えるとき
  3. 視界が、端島周辺海域において500メートルに達しないとき

夏の台風シーズンは、台風が来ていなくても波が高い日が多いので、運に頼るしかありません。
乗船時間が長いため、波が高ければ具合が悪くなる人もいるでしょう。その点に留意しながら計画を立てましょう。

軍艦島上陸ツアーの定期運行会社は5社

軍艦島上陸ツアーに申し込まないと上陸はできません。人気のツアーなので前もって申込をするのがベスト。当日申込でツアーに参加できる人は、かなりラッキーといえるでしょう。
軍艦島上陸ツアーを定期運行しているのは5社。長崎市の公式観光サイト「あっ!と ながさき」の中に、ツアー会社の紹介があります。

DATA
公式サイト:長崎市公式観光サイト「あっ!と ながさき」

それぞれに、内容も違えば時間、料金、出港場所、船のタイプも異なります。天候不良時の対応、キャンセル料の規定などをよく読み、申し込みましょう。

ツアー船

今回利用したのは、(株)シーマン商会の軍艦島上陸+周遊コース。
ネット受付で空席情報も見られるので便利です。乗船する「さるくⅡ号」は、旅客定員120人ですが、余裕をもって楽しめるよう通常85名前後で運航されています。

DATA
公式サイト:軍艦島ツアーのシーマン商会

さぁ出港!どこに座る?

ツアーの全体の所要時間は約2時間半。軍艦島に上陸するとトイレや売店などありません(さるくⅡ号の船内にはあります)。事前にトイレを済ませ、夏場などは熱中症対策用の飲料水などもお忘れなく。

乗船時に悩むのが、どこに座るか。さるくⅡ号は、自由席です。船中央から乗り込み一段下がった船内座席と壁のない後部座席に分かれています。
出港するとガイドさんの解説が始まります。お顔も見ながら楽しみたいなら、後部座席がいいでしょう。
次に、左右どちらに座るか。進行方向左側は、世界文化遺産の大浦天主堂やグラバー園など長崎の町の風景が見られます。

船から見た風景(グラバー園)
船から見たグラバー園

右側には造船所があり世界文化遺産で今も現役で動いているジャイアント・カンチレバークレーンや戦艦武蔵が建造された第2ドック。さらに海上自衛隊の護衛艦やイージス艦がメンテナンスのため停泊しているかも知れません。

船から見た風景(造船所)
停泊中の護衛艦とイージス艦

長崎湾にかかる女神大橋をくぐれば、神ノ鳥教会や岬のマリア像が進行方向右側に見えます。

船から見た風景(神の鳥教会)
神ノ鳥教会と岬のマリア像(船内座席は、窓越しのため写真が不鮮明になる)

ガイドさんの説明も右側が中心になりますので、行きは進行方向右側がオススメです。ただし、帰りは左側になるので、ご心配なく。
湾を抜け伊王島を過ぎると、DVDによる軍艦島の案内が始まります。しっかりみたいなら、テレビの場所も要チェックですね。

船上展望デッキにあがって軍艦島を周遊

軍艦島まで到着すれば、船の展望デッキへと誘導してくれます。

船の展望デッキから見た軍艦島
展望デッキから軍艦島を望む

さるくⅡ号は、屋根がないので開放的。どの位置に立っても軍艦島がよく見えます。揺れにはご注意を。
写真を撮るのに一生懸命になりがちですが、ガイドさんの話はぜひ聞きたい。とはいえ、船上ですから、離れていると聞こえにくいのも事実。ガイドさんや船員さんの近くで、指さす方向に視線を向けたいところです。

船の展望デッキから見た軍艦島
撮影ポイントなども教えてくれる

上陸しても見学エリアは限られています。特にポツンと頂上付近に見える端島神社の祠(1号棟)や慰霊碑などは、船上だから鑑賞できる風景です。

端島神社の祠

軍艦島に上陸! 見学スポットは3カ所

軍艦島の岸壁
ドルフィン桟橋に接岸中。船内座席から見ると迫力あり

さぁ、ドルフィン桟橋から上陸です。操業時からの唯一の上陸口です。

軍艦島上陸

他の上陸ツアーと時間をずらしながら上陸します。見学スポットは3カ所。はぐれないように注意しましょう。足元は悪くはありませんが、アップダウンがあるので歩きやすい靴にした方が良さそうです。

上陸見学スポット① 第2見学広場

まずは、第1見学広場を通り過ぎ、第2見学広場まで移動。

第2見学広場での説明風景
操業当時の夜の端島の明かり

写真を撮りたくて仕方ない気分になりますが、後で撮影の時間を作ってくれます。ガイドさんが昔の写真を見せながら説明をしてくれるので、じっくり説明を聞いてから撮影しましょう。

炭鉱といえば山に坑を掘って、石炭を採掘しているものと思いがち。この島のどこに石炭があったんだろうかと不思議に思う人も多いようです。端島炭鉱は、海底を掘り進んでいました。

第2見学広場の風景
第2見学広場の風景

写真の右に、下部を補強した階段と櫓があります。この櫓が第二竪坑入坑桟橋跡。この下に垂直に穴が開けられ、深さは636メートル。壁のない枠だけのエレベーターがあり、およそ90秒で落ちていくそうです。怖すぎます。
そこからさらに斜坑が伸び、1000メートル地下を掘っていました。危険と隣り合わせの過酷な労働現場と地上の分かれ目が、写真右部の櫓とつながった階段なのです。

左に、補強されたレンガ造りの壁があります。第三竪坑捲座(たてこうまきざ)といってエレベーターを上げたり下げたりするモーターが入っている倉庫みたいなところ。明治期のものです。

世界文化遺産として端島が登録されているのは、「明治日本の産業革命遺産」としての登録です。端島は世界文化遺産エリアですが、指定されているのは2カ所のみ。1つが、この明治期に作られた坑道部分です。中まで見学できないのが残念です。

もう1つは、島を取り囲んでいる岸壁です。

第2見学広場から見える岸壁内部
第2見学広場の風景

レンガを手で積み上げ、赤土に石灰を混ぜて接着剤とし、コンクリートをかぶせています。工法は、昔の城壁と同じ。軍艦島はこの岸壁でできています。

もとは岩礁だった端島。岸壁で囲う範囲を徐々に広げながら街として発展させ、現在の大きさになっています。明治時代から端島炭鉱を守ってきたことで、世界文化遺産となりました。

上陸見学スポット② 第3見学広場

第3見学広場からは、アパート群を見学できます。

第3見学広場の風景
第3見学広場の風景

写真正面の黒い建物が、30号棟。1916(大正5)年に建築された、日本最古の鉄筋コンクリート(RC造)のアパートです。
建築基準法の前身となる市街地建築物法が制定されたのが1919年(大正8)年。関東大震災が1923(大正12)年です。東京にさえ、鉄筋コンクリート製の建物は少なく、震災後に耐震性が認められコンクリート建築に変わっていくことを思えば、どれだけ先進的な建物だったのかわかります。

軍艦島を覆うほどの高波
第3広場の風景、ガイドさんが写真を見せながら説明してくれる

ここでの生活で一番大変だったのが台風だそうです。ガイドさんが、アパートより高い波の来る写真を見せてくれます。台風ですから、珍しい話ではなく、年に何度も経験するのかと思うとゾッとしますね。
海側の建物はアパートでありながら、防潮棟でもありました。波を防ぎ、内側の建物を守っています。住民は、避難せず台風が通り過ぎるのを待つしかありませんでした。
その時の生活は? 食料は? 訪れてガイドさんの話に耳をかたむけてください。

上陸見学スポット③ 第1見学広場

戻ってきて、最後の見学スポットが第1見学広場です。

第1見学広場
第1見学広場の風景

写真奥の白い建物が小中学校跡。住居の窓は小さく、明かりも差し込まないところがほとんどだったので、子どもたちには光をいっぱい浴びて欲しいと、大きな窓になっています。
ず~っと山の上の方にあるのが3号棟。トイレ風呂付きのエリート用の住居。一般は共同トイレ共同風呂でした。

端島炭鉱が発見されてから約200年。閉山になるまでの84年間は三菱が管理。三菱の初代社長・岩崎弥太郎が「ここを大きな街にする」と発展させました。途中戦争がありましたが、戦後すぐに操業を再開。鉄を作るには石炭が必ず必要で、製鉄所に運び戦後の日本復興に端島炭鉱は大きな役割を果たしたのです。

軍艦少年他・進撃の巨人他、軍艦島はロケ地巡りにも最適

ガイドさんの話は、他にもいっぱいあります。ぜひ訪れて耳を傾けてください。
それでも、見学できるエリアは極わずか。もっと詳しく知りたいなら「軍艦島デジタルミュージアム」をオススメします。古い貴重な写真などを使い、軍艦島の歴史を追体験できます。

DATA
軍艦島デジタルミュージアム
住 所 :長崎県長崎市松が枝町5-6
営業時間:9時〜17時(最終入館16時30分)
定休日 :不定休
料 金 :一般1800円、中高校生1300円、小学生800円、幼児(3〜6歳)500円、3歳未満無料
公式サイト:https://www.gunkanjima-museum.jp

また、軍艦島は独特なロケーションもあり、様々な映画やMVのロケ地にもなっています。
主なものは、映画なら『007 スカイフォール』(2012年公開、写真をもとにロンドン郊外にセットを作成して撮影)、『進撃の巨人』(2015年公開)、MVならB’zの『MY LONELY TOWN』など。また、ドラマでもよく登場し、ロケ地巡りに来る人も。

今なら、2021年12月10日から公開の映画『軍艦少年』。

DATA
公式サイト:映画『軍艦少年』

予告編PVでも、端島神社がある屋上の映像がバッチリ。映画本編でも、冒頭から軍艦島の映像で始まります。夜の暗い海で軍艦島を包み込むように瞬く星空のシーンは感動もの。映画館の大きなスクリーンで見て欲しいシーンです。

上陸の記念に

帰りの船は景色を眺めながら出発地点を目指します。今回利用したシーマン商会から、軍艦島上陸記念証明書をいただきました。記念品があるとうれしくなりますね。

軍艦島上陸記念証明書他
気分が悪くなった時用なアメちゃんとウチワは乗船時に配布。

石炭もいただきました。端島炭鉱は、世界文化遺産ですし、石ころ1つも持ち出し厳禁なので、端島の石炭ではありませんが、炭鉱らしい土産です(可燃物なので飛行機への持ち込みはNG。ご注意を)。

何よりの土産は、上陸したという経験。軍艦島の建物の老朽化は、今も風雨にさらされ進んでいくばかり。長崎市は30号棟をはじめ、建物の保存は難しいと判断しました。朽ちていくのを待つばかりです。建物崩壊のニュースを目にする日は、そう遠くないのかも。

長崎市は、新幹線の開業に向け新しい街へと変貌しているところ。その中で、朽ちていくものもあり。今や華やかさの対極にある軍艦島は、長崎観光でより一層注目すべきスポットなのかも知れません。

DATA
軍艦島
所在地:長崎県長崎市高島町端島
問合先:095-829-1426(長崎市観光交流推進室)
アクセス:長崎港から軍艦島上陸ツアー船に乗船し、約40分
ウェブサイト:ながさき旅ネット

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ライター 塚本隆司

塚本隆司

日本観光士会認定観光士