南イタリアで人気の世界遺産「アルベロベッロ」。おとぎの国に迷い込んだ錯覚に陥る可愛いとんがり屋根の町並みが目印です。冬のアルベロベッロは白壁の家々がクリスマスのイルミネーションで輝きます。
今回は現地在住の筆者が「Christmas lights」と題されたアルベロベッロのイルミネーションイベントの様子やクリスマスの伝統イベント、さらにはイタリアのクリスマスの過ごし方についてご紹介します。一緒に現地を旅する気分でご覧ください。
アルベロベッロの誕生
2021年のクリスマスイルミネーションをご覧いただく前に、まずは「アルベロベッロの概要」をサラッと見てみましょう。
アルベロベッロは南イタリア・プーリア州中部の農村のひとつ。1996年にユネスコの世界遺産に登録されました。人口1万人ほどの小さな町で南イタリアで人気の観光地として知られています。
町の歴史は貴族がこの地に農民を住まわせ開墾させた16世紀からはじまります。世界に珍しい「とんがり屋根の家」(イタリア語でトゥルッリ)が誕生した背景は、貴族が王様への税金を払わずにここに新しい村を作ったため。王様の査察が来たときにはすぐに屋根が壊せる家を農民に作らせたのでした。
とんがり屋根と同じく特徴的な白壁は、このエリアが石灰石の産地だから。アルベロベッロに限らず夏の日差しが強いプーリア州では太陽光を反射する白壁の家々が多いのです。
イタリアのクリスマス
日本でクリスマスを祝うのはイヴ(12月24日)とクリスマス当日(25日)ですよね?ですが、イタリアでは12月8日~1月6日がクリスマス期間です。
驚きましたか?
宗教的な意味合いがうすい日本のクリスマスとは異なり、すべて宗教行事にのっとった神聖な期間です。
イタリアの家庭では「プレゼーペ」とよばれるイエス・キリスト誕生の瞬間を再現したジオラマが飾られます。その次に外国文化を吸収し定着したクリスマスツリーが飾られます。ちなみに、イタリア人夫の祖母が幼かった20世紀前半にクリスマスツリーを飾る習慣はまだありませんでした。
そして、クリスマス当日は日本のお正月のように家族や親戚と過ごすのが一般的。食卓を囲んで盛大な食事会が開かれ、この日の定番料理は「トルテッリーニ」という肉詰めパスタが主役のスープパスタです。
イタリアのクリスマスに欠かせないプレゼーペとは?
プレゼーペ(またはプレゼピオ)は、イエス・キリスト誕生の様子を人形で再現した模型。例えるならば日本の雛飾りのようなもの。クリスマスシーズンのイタリアでは家庭だけでなく、教会や広場にもこのプレゼーペが飾られます。
大きさは手のひらサイズの小さなものから町全体を再現した大規模なものまでさまざま。ですが、イエス・キリスト(赤ちゃん)と母マリア様、義父のジュゼッペの三人は必須です。ちなみに、イエス・キリストは25日(マリア様の出産後)に飾ります。
アルベロベッロがあるプーリア州では南部の大都市レッチェの伝統工芸「カルタ・ペスタ」(紙粘土)で作られたプレゼーペが有名です。わが家では、優しい色合いと曲線のフォルムがなんとも可愛い陶器製のプレゼーペを飾っています。
クリスマスの主な行事
ここでは、主なクリスマスの宗教行事を説明します。まずは12月8日「聖母マリアの無原罪の宿り」(イタリア語でインマコラータ)。マリア様のお母様がご懐妊した日とされ、ここから正式なクリスマスシーズンがスタート!
次は、25日のクリスマス(イタリア語でナターレ)。厳密にはイヴである12月24日の夜から教会で盛大なミサが行なわれます。最後は1月6日の「公現祭」(イタリア語でエピファニア)。東方三博士が出産のお祝いを持ってきたという言い伝えによるもの。この日までプレゼーペやクリスマスツリーが飾られます。
いずれの行事も祝日でイタリア各地でミサや宗教行進が行なわれます。実はクリスマスの翌日26日も「聖ステファノの日」で祝日。よって、イタリアのクリスマスは二連休なのです。
クリスマスイルミネーション2021レポート!
さて、ヨーロッパのクリスマスといえば、ワクワク!の「クリスマスマーケット」が定番ですよね。残念ながら、イタリアにおいて盛んなのは中北部。南イタリアの伝統ではありません。
近年観光イベントとしてクリスマスマーケットを試験的に開催する町々がようやく登場してきたばかり。よって、派手なクリスマスマーケットはありませんが、プーリア州ではイルミネーションを使ってクリスマスを盛り上げています。ロマンチックで幻想的なこの時期限定の町並みが楽しめますよ。
2021年のアルベロベッロのクリスマスイルミネーション「Christmas lights」は、11月28日~翌年1月9日まで開催。時間は17時頃スタート。町の観光名所が集中する文化財指定地区(モンティとアイア・ピッコラ)が中心です。
エリアごとの紹介
ここでは、筆者が訪れた2021年12月18日(土)のイルミネーションの様子をお届け。アルベロベッロ観光の中心地であるモンティ地区から効率よく回れるルートでご紹介します。
モンティ地区
7本の坂道に約1000軒のトゥルッリが並ぶアルベロベッロ観光のメインエリア。トゥルッリを用いた土産物店やレストランがずらりと並び、ショッピングや散策を楽しむ人でいつもにぎやかです。
旅雑誌の表紙にもなったアルベロベッロを象徴する「5軒のトゥルッリ」が並ぶ光景もこのエリア。それぞれの屋根に描かれたシンボルがミステリアス。
見どころは、坂の頂きに建つ「聖アントニオ教会」。 1927年にトゥルッリの技法で建造された珍しい教会です。プロジェクションマッピングの光によって赤や青の幻想的な姿に変身してました。
DATA 聖アントニオ教会(Chiesa Sant'Antonio di Padova) 所在地:P.za Antonio Lippolis Canonico, 16, 70011 Alberobello BA, イタリア URL: 聖アントニオ教会の公式ホームページ 開館時間:7時30分~23時 休館日:なし 入場料:無料 アクセス:アルベロベッロ市庁舎から徒歩10分
マルテロッタ通りスケート場
モンティ地区の前に広がる大きな一本道「マルテロッタ通り」には、南イタリアでは珍しいスケート場が登場!キラキラ輝く馬のおもちゃのイルミネーションが目印です。
微笑ましいワクワク顔の人達が期間限定(12月4日~翌年1月10日)の催しを朝から晩まで楽しんでました。
DATA マルテロッタ通りスケート場( la pista di ghiaccio in largo Martellotta) 所在地:Largo Martellotta, 70011 Alberobello BA, イタリア 営業時間:10時~20時 定休日:なし 入場料:6ユーロ/30分間(週末7ユーロ) アクセス:アルベロベッロ市庁舎から徒歩5分
アイア・ピッコラ地区
にぎやかなモンティ地区とは対照的に静寂に包まれ、約500軒のトゥルッリが点在する「アイア・ピッコラ地区」は、トゥルッリを使ったB&Bや住居が今でも多く残っているのが特徴です。
2021年のイルミネーションの目玉は、ずばり!ココ。いつもとは趣向を変え、聖書の場面をモチーフにした光のオブジェで構成されています。評判を聞きつけて当日はたくさんの観光客が列を成してました。
子供からお年寄りまで親しみのある聖書の物語をロマンチックな光で演出。
ちなみに、このエリアの見どころは人気のドゥーカ・デッリ・アブルッツィ通りにある「展望台」。向かいにあるモンティ地区の夜景を遠くに眺めることができます。
DATA ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ通り展望台(Belvedere di via Duca degli Abruzzi) 所在地:Via Duca degli Abruzzi,70011,Alberobello BA, イタリア アクセス:アルベロベッロ市庁舎から徒歩3分
サンタ・ルチア展望台
次は、写真好きな人は絶対に見逃せない「サンタ・ルチア展望台」からの絶景です。
TVや雑誌でおなじみの「とんがり屋根が目の前に際限なく広がる光景」はこの展望台から撮ったもの。2021年は広場に登場した高さ20mの大きなクリスマスツリーが人々の注目を独り占め。赤や青の光を秒単位で放つ姿はまさにエレガント!
DATA サンタ・ルチア展望台(Belvedere di Santa Lucia) 所在地:Via Contessa, 70011 Alberobello BA, イタリア アクセス:アルベロベッロ市庁舎から徒歩1分
ポポロ広場
市庁舎前のポポロ広場には、毎年大型の光のオブジェが登場します。今年はいかにもクリスマスらしい「トナカイとソリ」。記念撮影をする観光客が後を絶たない盛況ぶり。向かいにはメリーゴランドも登場してました。
DATA ポポロ広場(Piazza del Popolo) 所在地:Piazza del Popolo, 70011 Alberobello BA, イタリア アクセス:アルベロベッロ駅から徒歩8分
聖メディチ聖堂と博物館
最後は、旧市街の北に位置する2つの観光名所です。
町の守護聖人・双子の医者を祀る「聖メディチ聖堂」の前には、大きなクリスマスツリーが登場。 辺りは厳かで神聖な空気に包まれていました。
DATA 聖メディチ聖堂(Basilica di Santi Medici Cosma e Damiano) 所在地:Piazza Antonio Curri, 70011 Alberobello BA, イタリア URL:聖メディチ聖堂の公式ホームページ 開館時間:6時30分~12時30分 / 15時30分~20時30分 休館日:なし 入場料:無料 アクセス:アルベロベッロ市庁舎から徒歩4分
そして、教会の後ろにあるトゥルッリの博物館「トゥルッロ・ソブラーノ」は、毎年恒例のプロジェクションマッピングで雪の結晶を投影。真っ黒な夜空を背になんともロマンチックな青色が美しい。
DATA トゥルッロ・ソブラーノ(Trullo Sovrano) 所在地:Piazza Sacramento, 10, 70011 Alberobello BA, イタリア URL:トゥルッロ・ソブラーノの公式ホームページ 開館時間:10時~13時 / 15時30分~18時 (4~10月は19時まで) 休館日:なし 入場料:2ユーロ アクセス:アルベロベッロ市庁舎から徒歩5分
クリスマスシーズンのイベント
プレゼーペを生きた人間が忠実に再現する「プレゼーペ・ヴィヴェンテ」。簡単にいうと、人間プレゼーペです。イタリア各地でクリスマスシーズンに開催されるイベントで、2021年のアルベロベッロでは12月26日~29日の4日間開催されます。場所はアイア・ピッコラ地区で料金はひとり2ユーロ(要予約、8歳未満は無料)。
民族衣装をまとった村人が昔の生活の様子を再現するため、一瞬でタイムスリップした錯覚に陥るロマン溢れるイベントです。
一度は見てほしいアルベロベッロのイルミネーション
世界遺産「アルベロベッロ」のクリスマスイルミネーション2021はいかがでしたか?
光溢れるキラキラ感にクローズアップするというより、夜空と白壁のとんがり屋根が映える落ち着いたイルミネーションといった印象です。
日本のクリマスイベントで有名な「神戸ルミナリエ」。実は使われる光のオブジェはプーリア発祥。職人がプーリアから現地へ派遣されています。そう、このことからも分かるようにプーリア州はイルミネーションでお祭りごとを祝う習慣が昔からあるのです。
光を彩る魔術師がいるプーリア州、毎年クリマスの時期にはイルミネーションを通じて楽しい発見があります。ぜひ一度、ロマンチックな光が灯るアルベロベッロで冬のクリスマスを過ごしてください