岡山駅から観光列車「ラ・マル備前長船」と観光船「のりなはーれ」で楽しむせとうちの旅

東郷 カオル

トラベルライター

「晴れの国おかやま」とも呼ばれる岡山県を、観光列車と観光船を組み合わせて、のんびりと旅してみませんか?観光列車や観光船は、定員に限りがあり、空間にもゆとりがあるので、今のご時世には安心感があるおすすめの旅のスタイルです。今回旅するのはJR赤穂線。沿線のスポットも合わせてご紹介します。

岡山駅から観光列車「ラ・マル備前長船」と観光船「のりなはーれ」で楽しむせとうちの旅

観光列車「ラ・マル・ド・ボァ」

日本各地には魅力的な観光列車が数多く走っています。今回ご紹介する「ラ・マル・ド・ボァ(La Malle de Bois)」、通称「ラ・マル」は、岡山駅を起点に、宇野・尾道・日生(ひなせ)、瀬戸大橋を渡った四国の琴平の4方面を走るかわいらしい観光列車です。

行先によって呼び方が変わり、宇野方面は「ラ・マル せとうち」、尾道方面は「ラ・マル しまなみ」、日生方面へは「ラ・マル 備前長船」、琴平方面へは「ラ・マル ことひら」という愛称で親しまれています。

「ラ・マル」は常にこれらの方面を走っているわけではなく、例えば、「ラ・マル せとうち」は4月と8月、「ラ・マル しまなみ」は5月と7月、「ラ・マル 備前長船」は6月と9月というように、訪れる時期によって異なる顔をしてお出迎えしてくれますので、何度訪れても新鮮な旅時間を提供してくれるユニークな観光列車です。

ラ・マル 備前長船

行先ごとにロゴが異なる「ラ・マル・ド・ボァ」。岡山と日生を結ぶ「ラ・マル 備前長船」では、備前焼や鍛冶の炎をイメージしたヘッドマークが掲げられています

ちなみに、「ラ・マル・ド・ボァ」というのは、フランス語で「木製の旅行かばん」という意味。旅心をくすぐるネーミングと、旅行かばんがデザインされたかわいらしい車両に心躍ります。

窓を旅行かばんにみたてたデザイン

ホームに設置された鐘が駅員によって鳴らされると、いよいよ出発です。

「ラ・マル・ド・ボァ」車内での楽しみ方

早速車内を探検!「ラ・マル」の車内の床はサクラの無垢材で、列車とは思えない雰囲気。

せとうちの旅らしく、自転車を積み込めるスペースも設けられています(自転車の持ち込みは要予約)。自慢の愛車を持ち込んで、目的地でサイクリングを楽しむのも素敵ですね。

旅気分に寄り添うインテリアや、旅の思い出をサポートするスタンプやノートも。

ここでしか入手できないグッズが買える車内販売は、観光列車の楽しみのひとつ。地元の特産品を使ったドリンクや、沿線で作られた備前焼のカップ、マスキングテープなど、「ラ・マル」オリジナルの商品が手に入ります。

座席は二人掛けリクライニングシートと、カウンター席の2種類。カウンターの椅子は、窓に向かうと固定されるという優れもの。大きな窓からのどかな田園風景を眺めながらの旅時間は贅沢そのものです。

座席は全席指定。乗車券の他に普通列車の指定席グリーン券が必要です。乗車日の1カ月前の10:00から、JR西日本ネット予約「e5489」や駅のみどりの窓口、主な旅行会社で購入できます。旅の予定が決まれば、早めに予約するのがベター。

沿線の駅では、駅員さんたちの歓迎も!「ラ・マル 備前長船」の岡山から日生への所要時間は1時間少しです。車内のアートやグルメ、グッズ、車窓の風景を楽しんでいるとあっという間に日生に到着。まだ乗っていたい…という余韻を持ったまま下車。観光列車の次は観光船です。楽しい旅はまだまだ続きます。

DATA
ラ・マル 備前長船
運行区間:岡山-日生
停車駅:東岡山、長船、伊部
日程:2022年6月と9月の土曜・日曜
web:観光列車の旅時間

観光船「のりなはーれ」

「ラ・マル 備前長船」終点の日生は、カキの町として知られており、カキがたっぷりと入ったお好み焼き「カキオコ」は全国的に有名ですよね。通常カキは大きくなるのに2~3年かかりますが、日生のカキは1年で成長します。その身はぷりっぷりで、熱しても縮まないのが特徴のひとつ。

「ラ・マル 備前長船」と合わせて楽しみたいのが、日生駅の目の前の港から出ている、水戸岡鋭治氏デザイン監修の「のりなはーれ(NORINAHALLE)」

赤と白のかわいらしい船で、カキの養殖筏を間近に眺めながら、約60分のショートクルーズが楽しめます。船ではガイドさんによる案内も。日生の海のことや、四季折々に咲く花のこと、遠くに見える島影についても教えてくれます。一方通行のガイドではなく、乗客の質問に答える形のガイドもあり、会話も楽しめるクルーズです。

船内は、木材を基調としたあたたかみのあるデザインで、革張りのシートはふかふか。座席幅も、ゆったりです。

2階甲板はウッドデッキになっていて、海風に吹かれながらの心地よいクルーズを楽しむことができます。

DATA
のりなはーれ
乗り場:日生駅前港
日程:2022年6月と9月の土曜・日曜
web:大生汽船

周辺でのグルメ・体験・ショッピング

観光列車「ラ・マル 備前長船」× 観光船「のりなはーれ」と合わせて楽しみたい周辺スポットもご紹介しておきましょう。

「キッチン 星の」で絶景ランチ

「キッチン 星の」は、2021年8月に誕生した、海を一望できるレストラン。日生から橋を2つ渡った頭島にあり、日生駅で電動アシスト付き自転車を借りてアクセスするのがおすすめ。2015年に開通した「備前♡日生大橋」からの景色は素晴らしいのですが、車の通行に気を付けて走りましょう。

ちなみに、私が勝手にハートを付けたわけではなく、本当に「備前♡日生大橋」という名称。橋の名前は公募で決まったそうです。橋の開通を楽しみにしていた気持ちと、地元に対する愛情が感じられますね。

「キッチン 星の」は海の大切さを伝える海洋教育施設「ひなせうみラボ」の2階にあり、瀬戸内海を大パノラマで見渡すことのできるロケーションが魅力。ランチでは瀬戸内海で獲れた鮮魚や牡蠣、備前黒牛などの地元の食材を使ったお料理が楽しめ、テラス席だけではなく屋内の席も解放感抜群!せとうちの魅力を存分に感じられるレストランです。

DATA
キッチン 星の
所在地:岡山県備前市日生町日生3518-5 ひなせうみラボ2階
電話:0869-92-4166
時間:ランチ 11:00~14:00(last 13:45)、cafe&軽食 14:00~17:00
定休:水曜日
web:備前観光協会 キッチン 星の

赤穂線伊部駅周辺 カフェ&ショッピング

「ラ・マル 備前長船」で走った赤穂線伊部駅周辺には、日本六古窯のひとつ、備前焼の里があり、窯跡がいくつも残っていて、町歩きが楽しいエリア。

伊部駅からほど近い「一陽窯」の店舗の奥には窯場と工房があり、製作過程を見学することができます(※お店の方にお声がけを)。備前焼は、「火襷(ひだすき)」という、襷をかけたような赤い文様が出るのも特徴のひとつ。ひとつとして同じ作品はありませんので、ぜひ自分だけのお気に入りのうつわを見つけてくださいね。

DATA
一陽窯
所在地:岡山県備前市伊部670
電話:0869-64-3655
時間:10:00~17:00
web:備前焼陶友会 一陽窯

町歩きの後は水分&当分補給!伊部駅構内には、とっても美味しいスイーツを出すカフェがあるんです。それが、「軽食喫茶 UDO」。

自家焙煎珈琲や手作りのケーキを、備前焼のうつわで提供。フレッシュなフルーツとさっぱりした生クリームのコラボで、いくつでも食べられそうなお味。伊部の町歩きの休憩におすすめしたい一押しカフェです。

DATA
軽食喫茶 UDO
所在地:岡山県備前市伊部1657-7
電話:0869-93-4701
時間:10:00~17:00
web:軽食喫茶 UDO

備前おさふね刀剣の里 備前長船刀剣博物館

備前長船は刀剣の名産地で、「備前長船刀剣博物館」は日本刀を専門展示する全国でも珍しい博物館。上杉謙信の愛刀として知られる「山鳥毛(さんちょうもう)」が、2022年8月11日~9月25日の期間展示される予定です。次回の「ラ・マル 備前長船」の運行期間が6月と9月なので、ちょうど9月の「ラ・マル備前長船」に乗って「山鳥毛」を見に行くことができそうですね。

「備前長船刀剣博物館」は、“推し剣”に会いに来る刀剣女子(刀剣乱舞の女性ファン)がわんさと訪れます。刀剣の展示だけではなく、併設のショップ「ふれあい物産館」で刀剣グッズが買えるとあって、刀剣女子に大人気なんです。身近に刀剣女子がいたら、何気なく“推し”を聞き出しておいて、グッズを買って帰ると喜ばれるはず。

DATA
備前長船刀剣博物館
所在地:岡山県瀬戸内市長船町長船966
電話:0869-66-7767
時間:9:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日(ただし休日の場合は翌日に振り替え)、祝日の翌日、年末年始(12月28日~1月4日)
web:瀬戸内市 備前長船刀剣博物館

旅の締めくくり!お土産は岡山駅で

最後に、「ラ・マル」の起点となる岡山駅のおすすめお土産ショップも紹介しておきましょう。岡山駅の改札を出たところが、「さんすて岡山」の南館2階になっていて、ここで主要なお土産を購入することができます。

こだわりのお土産を探している人なら、新幹線改札口横のセレクトショップ「せとうちCUBE」がおすすめ。ミニサイズの地酒や特産品を使ったおつまみから、定番のきびだんごまで、喜ばれるお土産が揃います。

「蒜山ショコラ」は、せとうち産のドライフルーツを散りばめた贅沢なショコラバー。例年11月~5月初旬頃まで販売しています(夏季は販売休止)。実際に中身もパッケージと同じようにギッシリとフルーツが乗せられていて、期待を裏切らないお土産です。しかもそんなにお高くないんです…。

牡蠣の家しおかぜの「牡蠣のアヒージョ」は、食べだすと止まらない美味しさ。そのまま食べてもいいですし、残ったオイルはパスタに使えるという優れもの!個人的にリピートしたい岡山土産です。

こちらは山方永寿堂の「きびだんご」。とっても柔らかいお団子です。なんといってもパッケージがかわいい!個包装なのが嬉しいですね。会社のお土産にぴったりです。

DATA
さんすて岡山 おみやげ・スイーツ
所在地:岡山駅2階 改札出てすぐ
電話:086-800-1020
時間:10:00~21:00(一部店舗によって異なる)
web:さんすて岡山 スイーツ・おみやげガイド

せとうちCUBE
所在地:岡山駅2階 新幹線改札口横
電話:06:30~22:00
時間:086-223-9117
web:せとうちのいいものセレクトショップ せとうちCUBE

密を気にせずのんびり楽しむなら観光列車がおすすめ

以前は、移動は時間を消費されるだけのものでした。近年盛り上がりを見せる観光列車の旅は、旅の移動時間を豊かにしてくれるものです。ゆったりとした車内は限られた乗客しか利用できず、密にもならないため、まだちょっと心配なこのご時世には最適な旅の楽しみ方。

「ラ・マル」は訪れる時期によって異なる景色を見せてくれますので、何度でもせとうちを旅したくなること間違いなしです。

東郷 カオル

トラベルライター