東京都の小笠原がコロナでロックダウン!緊急事態宣言「村内コロナウイルス一掃期間」とは?

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のなかあき子

ライター&イラストレーター

小笠原諸島が夏休みの人流増で新型コロナウィルス感染症が東京並みの発症状況に!

そこで小笠原村導入したものこそ島独自の緊急事態宣言「村内コロナウイルス一掃期間」。事実上のロックダウンとなるというから驚きです。

どのような経緯で、どのようなロックダウンが行われるのでしょうか?現地の様子を細かくお届けします。

小笠原諸島 ロックダウン
東京都の超南国、世界遺産・小笠原諸島に何が起こった!?

感染拡大を防ぐため、あらゆる努力をしてきた小笠原諸島

世界遺産・小笠原諸島は、これまでも島内に新型コロナウィルス感染拡大を起こさせないために、島への唯一の交通手段である定期船「おがさわら丸」の乗船前の無料PCR検査導入など、いちはやく対策を行ってきました。さらに「おがさわら丸」も、定員数を半分以下にして運行するという涙ぐましい努力も。

「おがさわら丸」についての記事はコチラをチェック

南の楽園・小笠原諸島の発症率が東京並みに増加

たゆまぬ努力で感染拡大を抑え込んできた小笠原諸島に大きな変化が生じたのが2021年の夏休みの連休。観光客や島民の内地との往来が増加した8月7日(土)〜13日(金)の1週間でした。

なんと、村民5人、来島者2人の感染者を確認したのです!

小笠原村の総人口はたったの約2500人。人口比おいて、東京都全体の発症状況に匹敵する深刻な状況です。この感染者の中には事前PCR検査では陰性だった人も含まれているとか。

小笠原諸島には、大きな病院はありません。これまでの重病人や重症患者の対応は、島出ができない状態でした。診療所は父島と母島に各1カ所と、医療体制がとても脆弱。当然、島内では新型コロナウイルス感染症に対応ができないので、海上自衛隊機による内地への救急搬送が必要になります。

危機的状況だと判断した小笠原は、8月16日(月)に村独自の緊急事態宣言「村内コロナウイルス一掃期間」の設定を発表。観光客の来島自粛と島民の上京自粛を要請することになりました。

これは実質上のロックダウン

これまでも小笠原村では

・おがさわら丸乗船前のPCR検査の受検の徹底
・村民には不要不急の上京(小笠原諸島以外の東京都への上陸)
・止むを得ず本土に上陸しなければならない場合、緊急事態宣言やまんえん防止等重点措置が発令されている地域への訪問自粛

など、様々な要請を島民に行ってきました。それではもう対処できない……ということで、今回の強い要請を出すに至ったのでしょう。

救急患者は、海上自衛隊によって硫黄島経由で内地搬送!救急車どころの騒ぎではない!

小笠原独自の緊急事態宣言「村内コロナウイルス一掃期間」

透き通った海で、安心して泳げる日が待ち遠しい…

新型コロナウイルスのない小笠原にリセットし、村民の暮らしに安心を取り戻し、観光客も安心して来島できる島に戻すための2週間です。定期船おがさわら丸は運行し、生活必需品などの物流は維持しつつ、人流を止めるという施策です。

期間

小笠原村役場ホームページより

2021年8月24日(火)竹芝発〜9月6日(月)父島発の2週間
※特に強い全面帰島自粛要請期間は8月27日(金)、9月2日(木)の竹芝発便

観光や仕事で来島予定だった人には、全面来島自粛を要請しています。「こっそり行こう」なんてことは考えないでください。すでに取扱旅行会社や、宿泊施設などから予約者に連絡が行われています。内地滞在中の島民には8月24日(火)便での帰島を呼びかけており、帰島後は2週間行動自粛を要請しています。

受け入れ再開はいつから?気を付けるべきことは?

おがさわら丸は定員を半数以下に減らして運行、例年大混雑のお盆便も広々と使えていました

観光客の受け入れは、9月8日(水)竹芝発から再開します。再開後も以下のことは必ず守って、島に新型コロナウィルスを持ち込まないよう徹底をお願いします。

・PCR検査を必ず受検。陽性反応が出ていないと判断した人のみ来島してください
・来島後は検体受領書や配達伝票控え、陰性証明書(竹芝以外での検査の場合)などを常に携帯してください

※宿泊施設への入館、飲食店への入店、ガイドサービスの利用の際に必要です。

乗船時のPCR検査が陰性でも、島で発症する例が起きている

島民の生活への影響は

「村内コロナウイルス一掃期間」は、島民の生活にも大きな影響を与えます。村からは、以下の5つの行動基準が示されました。

「村内コロナウイルス一掃期間」の行動基準

・スポーツ、サークル活動の中止(ウォーキングなど個人活動は可)
・休校期間中に子供が集まることは避ける
・買い物は密にならない時間帯を選ぶ
・おしゃべりは電話かSNSを活用
・飲食店だけでなく、同居する人以外との自宅での会食は我慢

小笠原の学校にも制限が!

村立小中学校は休校、高校はリモート授業(予定)になります。また、家族などと内地に行っていた保育園児は、島の保育園への登園を竹芝乗船日から2週間自粛することに。

アオウミガメの里帰りにも影響が!

さらにはアオウミガメの里帰りにも影響が出ています。

現在東京都のすみだ水族館では、小笠原生まれのアオウミガメのジョン&コペペが飼育されています。1年間をすみだ水族館で過ごし、今月中に小笠原に帰って、島の砂浜から大海原に旅立つ予定でした。しかし「村内コロナウイルス一掃期間」により、小笠原への里帰りを延期することになりました。旅立ちはもうちょっと待っててね……。

放流の様子。すみだ水族館のジョン&コペペが故郷の海に入れるのはいつ…?

船は週に1本、所要24時間。簡単には渡航できず、往来する個人を特定可能な小笠原だから可能な、独自の緊急事態宣言です。これを都内のほかの区に置き換えても、現実的に難しいでことでしょう。

新型コロナウィルスに対応できない小笠原諸島では、12歳以上の島民へのワクチン接種が開始されており、すでに接種対象者の8割が2回目の接種を終えていますが、変異ウイルスの感染拡大も危惧されています。
期間中に村内でコロナウイルスが一掃されても「内地の感染状況が減らなければ、受け入れ後にはまた元どおりでは…?」という声も。確かにその通り。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、自治体として独自の判断を行った小笠原村の動きを、今後も注目していきたいと思います!

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