オーストラリアワインは歴史の古いヨーロッパと比べると、まだまだ新しいワインです。しかし広大な大地と恵まれた天候を生かした世界に誇れる銘醸地もたくさんあります。今回はその中から、ワイン大好きオーストラリア在住ライターの私が、オーストラリアで必ず訪れておきたいワインの産地やおすすめのワインの品種・特徴をご紹介します。
オーストラリアワインとは?
フランスやイタリアなどヨーロッパの歴史ある「旧世界(オールドワールド)」ワインに対して、まだ歴史の浅いオーストラリアのワイン。アメリカやチリ、ニュージーランドなどと共にワイン界の新興勢力「新世界(ニューワールド)」ワインと言われています。
オーストラリア全土には現在2,000以上のワイナリーがあると言われ、ワイン生産量では世界第6位にランクインしています。最近では世界的なワインコンテストで並み居る強豪を抑えて1位を受賞するワイナリーもあるなど、数々の快挙も成し遂げている世界的にも大注目の存在です。
オーストラリアワインの歴史
オーストラリアに初めてワイン用の葡萄が持ち込まれたのは、オーストラリア大陸の開拓が始まった18世紀後半。その後1825年にNSW州のハンターバレー(Hunter Valley)で初めて商業用のワイン畑が作られました。今からわずか200年ほど前の話なので、紀元前まで遡るヨーロッパに比べるとまだまだ歴史は浅いですね。
オーストラリアワインの特徴
ワイン用のブドウ栽培はワインベルトと呼ばれる緯度30〜50°の地域が適していると言われていて、オーストラリアのワイナリーが集中しているのも主に大陸の南側に集中しています。オーストラリアで一番涼しいタスマニア州でさえも緯度は43°なので、世界でも比較的暖かいワインの生産地です。
強い日差しと温暖な気候は果実味が強いボリュームのある赤ワインに適していますが、広大なオーストラリア大陸ならではの天候や地形の違いを生かして、様々な品種のブドウで個性的なワインが作られています。
エリアによって栽培できるブドウの種類や製造方法に細かい制約があるヨーロッパとは異なり、法の縛りが少なく、いい意味でも自由なワイン作りができるのも「新世界」であるオーストラリアらしい特徴。国内で栽培されているブドウの種類は100種類以上もあり、1つのワイナリーで多種類のブドウを栽培しているのもオーストラリアならではです。
ボトルにはスクリューキャップが使用され、ワインオープナーがなくても簡単に開けられます。さらに、ラベルにしっかりとブドウの品種が書いてあるので、「ブルゴーニュの赤ということは、ピノ・ノワールか‥‥」なんてわざわざ小難しいことを考えずに簡単に選べるカジュアルさもいいです。
オーストラリアワインの主要産地とおすすめの品種
そんなオーストラリアワインを一度飲んでみたいけれど、そんなに種類があるなら一体どこの生産地の、どんな品種のワインを飲めばいいの?という方もいますよね?
そんな方のために今回はワイン好きの筆者がおすすめする、オーストラリアの主要ワイン産地とそこで飲むべき品種をご紹介します。
ハンター・バレー(NSW州)のセミヨン
シドニー近郊にあるNSW州のハンター・バレー(Hunter Valley)は、オーストラリアで「ワインの父」と呼ばれるジェームズ・バズビーが、商業用ブドウ畑をつくったオーストラリア最古のワイン産地です。シドニー市内からも車で2時間程度と一番アクセスしやすく、シドニー観光の合間に訪れるにはぴったりのワイナリーです。
ハンター・バレーでマストなのは、日本ではあまり聞き慣れない「セミヨン(Smillon)」。ヨーロッパでは主に貴腐ワインや他種とのブレンド用に使われる白ブドウですが、「ハンター・セミヨン」と呼ばれるセミヨン単独のワインがたくさん作られています。シトラス系の酸味と適度なミネラル分、キリッとした辛口のワインは、お刺身やお寿司などの日本食によく合いますよ。
ヤラ・バレー(VIC州)のピノ・ノワール
VIC州のヤラ・バレー(Yarra Vallry)はメルボルンからも車で1時間程度とアクセス抜群の、VIC州で最初にブドウが植えられた歴史あるワイン生産地です。起伏のある地形と冷涼な気候、昼夜の寒暖差はフランスのブルゴーニュ地方に類似しているせいか、ブルゴーニュ同様シャルドネとピノ・ノワールを主軸に、スパークリングワインなども作られています。
ヤラ・バレーで外せないのが、チェリーのような果実味と柔らかな酸味、柔らかなタンニンで、複雑で繊細な後味のあるエレガントな赤ワイン「ピノ・ノワール(Pinot Noir)」。某ワイン漫画で「ロマネ・コンティを超えた極上ピノ・ノワール」と紹介されたのも、実はヤラ・バレーのピノ。是非、極上のピノ・ノワールを味わってみましょう。
バロッサ・バレー(SA州)のシラーズ / シラー
オーストラリア国内のワイン生産量の約半分を担う「ワインの州」と言われる南オーストラリア(SA)州。国内のみならず世界的にも有名な大手ワインメーカーが本社を構えるのがバロッサ・バレー(Barossa Valley)です。州都アデレード(Adelaide)からの車でわずか1時間の場所に、国内最高と言われるワイン銘醸地があります。
ヨーロッパでは「シラー(Syrah)」と呼ばれるオーストラリアの「シラーズ(Shiraz)」は、オーストラリア国内で生産数No.1を誇る赤ブドウです。バロッサの代名詞的な品種でもあり、世界最古と言われるブドウの木もあります。ベリーの果実味の豊かさと黒胡椒のようなスパイシーさ、チョコレートのような芳醇な香りのあるフルボディのオーストラリアン・シラーズは、ヨーロッパのシラーとは一味違い、一飲の価値ありです。
クナワラ(SA州)のカベルネ・ソーヴィニヨン
同じSA州にあるクナワラ(Coonawarra)はVIC州との州境近くで、アデレードとメルボルンのちょうど中間、というどこからもアクセスが悪い場所ながら、世界中からワイン好きが訪れるオーストラリア有数の銘醸地です。南極海からの涼しい風が吹き温度上昇を防ぐため、じっくりと果実味が凝縮されたブドウが育つと言われています。
クナワラと言えば有名なのが、重厚さのあるカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)。フランスのボルドーではエレガントなカベルネ・ソーヴィニヨンも、オーストラリアでは濃厚な果実味と適度なタンニン、パンチのあるどっしりしたフルボディになり、赤身が美味しいオージービーフのステーキによく合います。
クレア・バレー(SA州)のリースリング
同じくSA州にあるクレア・バレー(Clare Valley)はアデレードの北に位置するワイン生産地。標高400mを超える比較的冷涼な気候と1日の激しい寒暖差、独特の石灰岩の土壌からは、国内最高峰と言われる「リースリング(Riesling)」が作られています。
ドイツで有名なリースリングですが、クレア・バレーは近隣のイーデン・バレーと共に総植栽数でドイツに次ぐ第2位を誇り、国内では1/3を占める生産量を誇ります。爽やかな柑橘系の酸味とほのかな甘味、繊細でライトボディのワインが、シドニー・ロック・オイスターやシーフードに合います。
マーガレット・リバー(WA州)のシャルドネ
WA州の州都パース(Perth)から車で南へ3時間のマーガレット・リバー(Margaret River)は、オーストラリアでも小規模なワイン生産地ではありますが、国内の上質なワインの20%以上を生産するプレミアムワインの聖地です。三方をインド洋に囲まれ、一年を通して寒暖差が穏やかな気候から芳醇で香り豊かなブドウが育つと言われています。
世界有数のシャルドネ(Chardonnay)の生産地として有名なマーガレット・リバー。オーストラリアではシラーズの次に栽培されているシャルドネは、濃厚なフルーツやオーク樽の香りを感じるパワフルなものが多い中、爽やかなライムのような柑橘味と複雑な風味が絡み合うエレガントなワインが特徴です。是非、世界のワインコンテストで高得点を叩き出すというシャルドネを試してみましょう。
ワインが飲めなくても楽しめるワイナリー巡り
今回はオーストラリアで楽しめる主要生産地と6種類のワインをご紹介しましたが、他にもタスマニア州をはじめ有名なワイナリーがたくさんあります。美味しいワインが試せるのももちろんですが、美しい景色を眺めながら美味しい食べ物とワインのペアリンが楽しめるワイナリー巡りは、ワイン好きでなくても楽しめるはずです。
今回ご紹介した産地のワインは、日本のワインショップやネットで購入可能なものもあるので、気になる品種があれば是非飲んでみましょう。もし気に入ったワインが見つかったら「その産地やワインの品種で次の旅の行き先を決める」という旅の計画もアリかもしれませんね。