アメリカは5月から8月にかけて夏休み。2020年の今頃は、世界屈指の観光地であるワイキキが閑散とし「まさかゴーストタウン化するなんて!」と誰もが驚き、これがいつまで続くのかと不安を抱いた人もたくさんいました。ところが、1年経った今、アメリカ本土から予想以上の観光客が一気に押し寄せてきてしまい、ハワイが観光客受け入れに追いつかずにいるという現象が起きています。
大混雑の現地からハワイ在住ライターの私がお届けします。
ワクチンパスポート対象者拡大が拍車をかける?!
7月8日より、ハワイ州はワクチンパスポートの対象をアメリカ本土の渡航者まで拡大しました。
米国内でファイザー社やモデルナ社、またはジョンソン&ジョンソン社のワクチン接種から15日以上が経過している人が対象で、他州からハワイに来る際に必要だった陰性証明書の必要がなくなり、陰性明証書が提示できない場合に必要だった自主隔離が免除に。
アメリカは必要回数のワクチン接種が完了した人の割合が49.7%。それならば!とハワイでの夏休み旅行を楽しもうと大勢の人たちがやってきています。
ワイキキのホテルのプールやビーチも大賑わい
冒頭にも述べたように、2020年の今頃(7月)は、ワイキキがゴーストタウン化し、ワイキキのビーチもローカルの人たちが少数泳ぎに来ているだけで、筆者自身「生きているうちにこんな光景を見るなんて夢にも思わなかった」と感じるほどでした。
2021年の7月下旬は、もうコロナ以前のワイキキに戻った、いえ、もしくはそれ以上の人がいるのではないかと思わせるくらい人で溢れかえり、これで日本を含む他国の観光客が戻ってきたら、どうなるのだろうか?と不安になるほどの大盛況ぶりです。
まさかここまで混雑するとは誰が想像したことでしょう!
人気レストラン、プレートランチ店、カフェは大行列
今、オアフ島はワイキキだけでなく、主要の街の人気レストラン、プレートランチ店やカフェは大行列ができています。
行列の原因は各店ともソーシャルディスタンスを守りながらの運営をしているため。さらにゲストが来なかった時期に減らしたことで生まれた従業員不足や、ロックダウン時にオンラインデリテイクアウトサービスとイートインのサービスを並行して行う営業形態に慣れていないなど…多くの理由が推測されます。
最近では、ハワイ在住者がオンラインでオーダーし、指定した時に取りに行っても、そこからさらに長時間待たされたという声も聞きます。
ローカルTVニュースでも「今のハワイのレストランでは、運営がおいつかず、接客にアロハを感じられない状況もおきている」というような内容が流れたほど。現在は予約ができるレストランであれば、イートインをしたい場合は、事前に予約をしておくことが賢明です。
実は、7月9日からは、オアフ島内の飲食店は、規制緩和案が導入されており、レストラン側が陰性証明書の提示または、ワクチン接種を証明することができる来客者を受け入れる場合は、ソーシャルディスタンスの保持などの対策が不要となり、店内に100%の収容可能人数で対応して良いことになっています。
ところが、この規制緩和案を導入しようとしたところ、来客者からワクチン接種レコードカードの提出を拒む人も多く、クレームが続出。実際に導入できた店がほぼ皆無と言われています。よって、現在は、最大収容可能人数の75%で運営している店舗が大多数を占めます。
レンタカー不足で、料金が高騰
また今のハワイの大きな問題となっているのが、レンタカー不足。
2020年観光客の激減により、レンタカー会社が大量の車を売却をしてしまい、そこで急に観光客が戻り始めたことで「レンタカー予約がなかなかできない。」「予約ができても料金が高騰して、とてもじゃないけれどもレンタカーできない。」という観光客も増えています。
6月末から1週間、ニューヨークからオアフ島に家族旅行に来た方からは、2月から旅行の準備をしていたけれど、レンタカーはどの会社も「Sold Out」で借りることができなかったと聞きました。オアフ島は、まだ他に交通手段があり、代わりにモペッド(原動機付自転車)や自転車をレンタルする人、またはシェア自転車のBIKIを利用する人も増えました。
しかし、オアフ島以外のネイバーアイランド(ハワイ島の州都のあるオアフ島以外の主要島のこと)になると、車がないとどこに行くにも不便な島々なので、さらに深刻な問題になっています。筆者の友人にも、毎年夏休みはマウイ島に旅行に行くことが恒例となっていたという人がいますが、今年はレンタカー代が高すぎてとても無理と諦めたほどです。
最近は「TURO」という個人の車をレンタカーするシステムを利用する人も増えましたが、それもレンタカー同様に料金が高騰。ハワイ在住者で失職中の人が自分の車を登録し、収入源にしている人が増えていると聞きます。
マウイ島は水不足!観光客制限の訴え
マウイ島は特にアメリカ本土からの観光客に人気があり、アメリカ本土からマウイ島への直行便は、2021年5月はパンデミック前の2019年の6%増!その急激な観光客の増加と、日照りも重なり、マウイ島が水不足という事態に追い込まれています。
7月2日より水の利用制限が始まり、それを破ると$500の罰金。これは「住民よりも観光客優先とはひどい!」とSNSなどでも炎上しました。そして、観光客の影響で交通渋滞や違法駐車も増え、マウイ島のインフラ、自然資源、地域社会に大きな負担がかかっている状況にまで陥っています。
マウイ市長が観光客の波を制限するなんらかの対応が必要とし、各航空会社に減便を求めたほどのレベルなのです。
オアフ島の人気の町カイルアやノースショアも住人が苦言
オアフ島もワイキキだけでなく、人気の観光地カイルアやノースショアも、観光客が押し寄せて住民たちが苦言をしています。
オアフ島東部ワイキキから車で40分のカイルアには、「天国の海」という意味のラニカイビーチがあり、全米で最も美しいビーチの一つとしていつも選ばれる人気のビーチですが、そこはツアーでやってきた車は立ち入り禁止区域になっています。通常は観光客はレンタカーで行き、住宅街に路上駐車をすることになりますが、2021年は12月末まで、月〜金8:30~16:00はラニカイビーチ周辺の路上駐車を禁止しました。
また、ワイキキから車で1時間ほどの町ノースショアも大混雑。以前は週末がロコたちも出かけるのでひどい渋滞になる印象でしたが、ノースショアの住民たちが「今は、毎日週末かと思うくらいひどい渋滞だ」と苦言をするほどです。ノースショアは片側一車線ということもあり、どうしても渋滞になりやすいのです。
マナー違反の観光客も問題に
ハワイといえば、美しい自然を楽しみたくてくる観光客も多いわけですが、最近は絶滅危惧種に指定されている野生の動物に対するマナー違反をする人が増えていてこちらも大きな問題に。それこそノースショアには、ホヌ(ハワイ語で「海亀」の意味)を見るために大勢の人が訪れます。またハワイ固有のアザラシハワイアンモンクシールがビーチ沿いで寝そべっているところに遭遇することも。これらの動物はしっかりと絶滅危惧種保護法のもとで守られており、10 feet(約3 m) 以上近づいてはいけません。それを知らずに、近づいて触ったりし、その様子をSNSに投稿する人が増え、これまた大炎上!これらの投稿者を「起訴するつもりだ」とイゲ州知事が警告を発したほどです。
夏休み後がまたどうなるのか大きな課題
ハワイは7月18日の時点でワクチン接種率が59%となり、イゲ州知事もこのままのペースでいけば目標の70%に9月には到達するだろうと予想しています。前回の記事でもご紹介したように、70%に達した暁には、全部の規制を撤廃することになっています。
…ところが!7月に入ってからハワイ州でのコロナウィルス感染者が3桁となり、さらにデルタ株が猛威を奮っていることから、また油断が許せない状況になってきています。
また、アメリカは8月中旬あたりから学校が始まります。この夏休み後がまたハワイの観光がどうなるのか、という懸念事項になっているのです。アメリカ本土の観光客の波が夏休み終了と共に収まると予想はされているのですが、そうすると今度はレストランやショップなどの経営がどうなるのか。そういったこともあり、今現在従業員不足とわかりながらも、雇用できないという事情があるようです。
観光で成り立っているハワイなだけに、もちろん多くの観光客に戻ってきてもらいたいという願いもあります。しかし、コロナ渦前にハワイに訪れていたアメリカ本土からの観光客の層と、2021年7月に訪れている観光客の層があまりにも異なり、ハワイの民族性、文化、法律を知らない人たちもたくさん訪れてることから、苛立ちを覚えているハワイ住人たちが多いという状況です。
さらに、コロナ禍でせっかく綺麗になった自然を保ちながら観光業を再開を目指す「レスポンシブルツーリズム」を新たに掲げているハワイは、今また大きな岐路に立っているといえます。