千葉県の南房総エリアは首都圏から距離的に近いこともあって、休日に遊びに行きたい場所。しかし電車で行こうとすると、東京駅から船橋駅や千葉駅などを通って…と、東京湾をぐるっと回ってだいたい1時間半~2時間くらい。さらに本数がすくない線もあり、時刻表と念入りに見ながら計画を立てなくては…ちょっと待った!
房総半島を訪れるのに必ずしも千葉駅を通る必要はありません!横浜市在住の筆者にとっては、南房総に出かける場合はむしろ東京駅や千葉駅を通らない方が早く、安く行けます。それは、久里浜港と金谷港を結ぶ東京湾フェリーを使えばできること。
先日筆者がJR内房線を訪れた時、京急電鉄が発売している「東京湾フェリー往復きっぷ」が役に立ちました。今回は京急電鉄「東京湾フェリー往復きっぷ」を使い、電車の撮影をして来た旅のことを紹介したいと思います。
東京湾フェリー往復きっぷの概要
改めまして、東京の品川駅から羽田空港へのアクセスや、横須賀・三浦方面への観光輸送を担う赤い電車、京急電鉄では、泉岳寺駅と京急久里浜駅を除く各駅で「東京湾フェリー往復きっぷ」を発売しています。
これは、乗車駅から京急久里浜駅までの京急線、京急久里浜駅から東京湾フェリーターミナルまでの京浜急行バスの往復きっぷと、東京湾フェリーの久里浜港~金谷港間の往復乗船券が2枚セットになったきっぷです。発売額は駅によって異なり、主要駅で例にすると品川駅発売分は2,980円、横浜駅発売分は2,320円、上大岡駅からは2,200円、横須賀中央駅からは1,910円(いずれも大人料金)となります。
値段の話だけではよくあるお得なきっぷですが、なんとこれ、発売日から4日間も有効なのです。ということは、1日目に千葉県に渡り、房総半島で3泊して4日目に帰って来ることもできるし、1日で十分満喫できたなら(少しもったいない気もするけど)日帰りで帰って来てもOK!有効期間が長い分、使い方の幅の広いきっぷになっています。
筆者は「東京湾フェリー往復きっぷ」を利用した日、横浜駅の2つ隣、日ノ出町駅で発券しました。日ノ出町駅での「東京湾フェリー往復きっぷ」の料金は2,320円。この場合、日ノ出町~京急久里浜間の通常の運賃は大人430円(往復860円)、京急久里浜駅から東京湾フェリーまでのバスは通常大人200円(往復400円)、東京湾フェリーの往復券は大人1,450円なので、正規の値段で移動すると合計2,710円かかります。
しかし東京湾フェリー往復きっぷの金額は2,320円なので、390円お得!実質的にバスの料金が浮いたことになります。京急久里浜駅から久里浜港までは徒歩だと約25分で意外と時間がかかるけど、「バスを使うのも…」と悩みそうなところなので、往復きっぷでバス代が実質浮くのはかなりありがたいことです。
千葉県の金谷港まで大幅ショートカット!
さて、「東京湾フェリー往復きっぷ」を実際に使ってみましょう!まずは券売機で「東京湾フェリー往復きっぷ」を購入。先ほどの画像のように、京急線と京浜急行バスの往復きっぷと、東京湾フェリーの往復きっぷがセットになった状態で発券されるので両方ともなくさないように。
京急久里浜駅までは京急線に乗車します。京急久里浜駅は特急・快特停車駅なので、その通過駅から乗車する場合は、他の特急・快特停車駅(横浜駅・上大岡駅・金沢八景駅など)で特急・快特に乗り換える方が早く京急久里浜駅までたどり着けます。
京急久里浜駅で電車を降り、改札を出場した後も、きっぷは回収されずに手元に戻ってきます。そのまま今度は「久7」または「久8」系統の京浜急行バスに乗り換えましょう。10分程度で東京湾フェリーターミナルに着きます。バスを降りる時は、改札機に通したきっぷを運転士さんに見せればOK!
ここでいったん電車・バスの往復きっぷの役目は終了。次にフェリーのきっぷを用意し、フェリー乗船口で確認してもらってから乗船!久里浜港~金谷港間の所要時間は約40分なので、その間に船内でご飯を食べたり(売店があります)、デッキに上がって潮風に吹かれたりと、船旅ならではの時間を満喫!なお波が激しい時は船体ももちろん大きく揺れます。船酔いが心配な場合は酔い止めなどで対策しておきましょう。体調を崩してしまった場合のためのエチケット袋も売店に用意されています。
東京湾フェリーは日によってダイヤが異なり、主に平日に運行するAダイヤと、土日祝や夏休み期間に運行されるBダイヤに分かれています。Aダイヤは1日12往復、Bダイヤは1日14往復運行されます。しかしどちらも始発は久里浜港・金谷港ともに6時20分発で、最終便は久里浜港19時15分発・金谷港19時30分発となります。その他、特定の日によっては特別ダイヤでの運行となる場合もあります。
いよいよ金谷港に到着!
船を降りて、案内表示に従って駅に歩いていくと、徒歩8分ほどでJR内房線の浜金谷駅に着きます。ここから木更津方面・館山方面のどちらにも行けますので、お出かけのプランに合わせて内房線の電車に乗りましょう。ここからの4日間は、南房総でのひと時をめいっぱい楽しんできてくださいね!
南房総での時間を終え、金谷港から久里浜港へ帰る時は、東京湾フェリーの往復きっぷをもう一度見せて乗船しましょう。そして、久里浜港のフェリーターミナル前から京浜急行バスに乗り換えて京急久里浜駅、京急久里浜駅から京急線できっぷに書かれた発券駅へと帰り、「東京湾フェリー往復きっぷ」を使った旅はおしまいです。フェリーの往復きっぷは久里浜港での下船時に、電車・バスの往復きっぷは、帰りの京急線の下車時に回収となります。それまでどちらも失くさずに持っていましょう。
浜金谷駅から金谷港まで徒歩8分かかるので、電車の時間とフェリーの時間が合わないと乗船がギリギリになってしまうこともあります。しかし先に往復きっぷを買っておくことで帰りにきっぷを買わなくて済み、乗船がスムーズに。往復きっぷは、帰りの改札がスムーズになることもメリットになるのです。先に述べた通り金谷港からの最終便は19時30分発なので、帰りの最終便には絶対に時間を合わせましょう。
東京湾の海沿いや緑にあふれる沿線を走る!
浜金谷駅のある、JR内房線の南部エリアは、随所から東京湾の絶景を見られる風光明媚なエリア。千葉方面の電車と接続する木更津駅・君津駅から安房鴨川方面に乗ると、上総湊駅手前あたりから進行方向右手に、青く輝く海が見え隠れするようになります。左手は線路際まで山が接近していることもあり、海沿いのギリギリをキープしつつトンネルが連続することも。
一方で内陸部では水田など田園地帯も多く、自然が豊かな沿線を走ります。とくに春夏の間は、田んぼに張られた水が光を反射して、まるで鏡のように風景を映し出す「水鏡」を見られることも。また、君津駅から南に位置することもあり、線路が単線になっているのでローカル線のような趣を感じることもできるでしょう。
館山駅から千倉駅までは房総半島の南端部(チーバくんで例えると足首の付近)を横断しますが、そこから今度は太平洋側に出て、安房鴨川駅へと向かっていきます。太平洋側に出ても海の眺めは車内からバッチリ見えます!なお、内房線の君津以南は、日中の本数は上下線とも1時間にほぼ1本。朝夕でも最大2~3本程度なので、電車の時間には十分注意しましょう。
内房線・外房線では3月13日のダイヤ改正により、木更津~安房鴨川~上総一ノ宮間が、2両編成の新型車両「E131系」に置き換えられました。黒い前面にデザインされた黄色と水色の水玉模様がチャームポイント!ホームの長さに対して電車が圧倒的に短いので、乗車位置にも注意しましょう。
千葉方面から上総湊駅までは、従来車両の「209系」も朝と夜に乗り入れます。また、土日祝日には新宿駅から発着する特急「新宿さざなみ」が館山駅まで運行されます。どちらも見られる機会の少ない電車ですので、時間が合ったら見学・撮影してみるのもいかが?
内房線・外房線には無人駅も多く、日中は駅員さんがいても朝夕に無人化するところもあります。Suica・PASMOなどを持っている場合は、「入場」「出場」と書かれた簡易改札機にカードをタッチします。
ICカードを持っていない場合は券売機できっぷを買う必要がありますが、みどりの窓口が営業している9:20~16:10の間しか券売機を利用できません。窓口が営業していれば、下車時は駅員さんにきっぷを渡せばOK。
窓口が終了している場合、降車駅ではきっぷ、または乗車駅証明書と運賃(現金)をきっぷ回収箱に入れて下車します。乗車駅証明書は、きっぷ券売機を利用できない場合にオレンジ色の証明書発行機から発行します。知らずに行って運賃の支払いに迷わないよう、事前に知っておいていただけたら何よりです。
鋸山やマザー牧場など、房総の観光スポットの玄関口にも
金谷といえば鋸山もあります。街の至る所から見える、切り立った岩肌が大迫力の山ですが自然の力強さを思わせます。それは鋸山の登山・山道エリアにある石切場跡(岩舞台)。また有料の日本寺エリアには、県指定名勝「東海千五百羅漢」などの重要文化財が数多く点在しています。
手っ取り早く山を登るなら、大通り(国道127号線)館山方面に歩いて浜金谷駅から徒歩8分のロープウェイを利用すると良いでしょう。ロープウェイのゴンドラ内や、鋸山山頂から眺める景色は、記憶に残ること間違いなし!
また、内房線の佐貫町駅からのバス、または金谷港からの直行バスで行ける「マザー牧場」や、館山・安房鴨川方面に足を伸ばして館山湾海中観光船、「アロハガーデンたてやま」や「鴨川シーワールド」など、南房総エリアの観光施設も様々で面白い!南房総エリアのさまざまな車窓や観光施設を、ぜひとも現地でお楽しみください。
京急の往復きっぷか、フェリーのセット券か
最後に「東京湾フェリー往復きっぷ」を有効活用しやすいパターンを考えてみたいと思います。
単刀直入に言うと、京急ユーザー、および京急線に接続できる場合にはかなり有用です。たとえば品川駅を起点に考えた時、この駅で「東京湾フェリー往復きっぷ」を購入すると2,980円。対して品川(山手線内)~浜金谷間をJR線で行くと片道1,980円かかります。JRのみで往復すると3,960円かかるので、久里浜港経由の方が実に980円もお得に!品川駅や、その他の他社線からの乗り換え駅で京急に接続できれば、東京湾フェリーおよび「東京湾フェリー往復きっぷ」を有効活用できるでしょう。
その一方で、同じ千葉県内でも木更津周辺エリアが目的の場合はフェリーを使わず、JR線か、川崎駅前から東京湾アクアラインを通っていける高速バスを利用する方が良いでしょう。川崎駅~木更津駅間の高速バスの片道料金は大人1,470円ですが、わざわざ久里浜港からフェリーを利用するより明らかに早いです。幕張や成田など千葉県北部のエリアへも東京都内経由の方が良いですね。ちなみにJR線の浜金谷~木更津間の片道は大人590円です。
また、東京湾フェリーからも、大人1,450円で7日間有効な往復乗船券や、「マザー牧場」や「鴨川シーワールド」などとのセット券も発売されています。なので京急電鉄の「東京湾フェリー往復きっぷ」は、あくまで「金谷港に渡るまでの行程がお得になるきっぷ」として考えておき、特定の観光施設等への行き先が既に決まっている場合は、東京湾フェリーが発売しているセット券も考慮に入れると良いでしょう。
今回は京急電鉄より発売中の「東京湾フェリー往復きっぷ」を利用して、千葉県南房総エリアの金谷に渡った時のことをご紹介しました。京急久里浜駅~久里浜港間のバス料金が実質的に浮くので、電車からバスを経由してフェリー乗船までの流れがスムーズに!金谷港に渡ってから最大4日間は、それぞれのプランに合わせた旅や観光を楽しんでくださいね。筆者も内房線で撮りたい写真がまだまだあるため、今後もこのきっぷにはお世話になりそうです。
なお、まだまだ新型コロナウィルス感染防止対策を心掛ける必要があります。外出時はマスクの着用、手指のアルコール消毒、咳エチケットなど、飛沫感染の対策を万全に、旅を楽しみましょう。
【DATA】 東京湾フェリー 久里浜港 所在地:神奈川県横須賀市久里浜8-17-20 金谷港 所在地:千葉県富津市金谷4303 公式サイト: 京急電鉄 東京湾フェリー往復きっぷ / 東京湾フェリー公式サイト