かつて京都や大阪と一緒にちょっと立ち寄れればいいと考えている人が多かったという奈良県。
しかし、日本人なら誰もが知っている約1300年前に平城京が作られた日本を代表する古都であり、貴重すぎる世界遺産が点在するだけに日帰り、ましてや半日観光だけなんてもったいない!
「大仏見ただけで奈良県に行った、なんて言うんじゃないよ~!」という奈良リピーターも存在する一大観光都市でもあります。
かく言う筆者も「修学旅行で行って以来、全く行っていない」という者の一人。記憶には「大仏大きいなー!」しかない学生のうちの一人でもあり、日本人としてはずかしい…。
これではいけない!日本の世界遺産をまわるような、高尚な旅はできないのか?
というわけで1998年に世界遺産に登録された「古都奈良の文化財」の8つ世界遺産を全部めぐってみることに。綿密な計画の元、2泊3日の旅に出かけてみました。
このスケジュール、かなり歩きますが、しっかり見る場所、サクッと寄る場所のメリハリをつければ、1か所1か所まわって2泊3日ですべて制覇できます!
目次
- 世界遺産「古都奈良の文化財」全部巡り2泊3日モデルコースのポイント
- 1日目は始発の飛行機で出発!
- 7時30分:伊丹空港到着
- 10時:ホテルに荷物を預けてそのまま奈良観光開始へ!
- 10時15分:法相宗大本山 興福寺
- 12時35分:法隆寺
- 16時15分:元興寺(がんごうじ)
- 17時:ならまち散策
- 1日目の一人飲みディナーはワインバー
- 21時:ホテル到着・お部屋でまったり~
- 2日目は早朝スタートがカギ。10キロ以上歩く日
- 7時30分:東大寺
- 10時15分:春日大社本殿
- 11時50分:ちょこっとだけ、春日山原始林
- 12時20分:「ヒサゴ屋食堂」でランチ
- 13時50分:平城宮跡歴史公園
- 17時15分:ホテル着
- 3日目はしっかり食事が取れる余裕
- 10時25分:薬師寺
- 12時30分:唐招提寺
- 14時30分:遅めランチを近鉄奈良駅周辺で
- 近鉄奈良駅バスターミナルから伊丹空港へ
- 世界遺産「古都奈良の文化財」を巡り終えての注意事項や反省点
- 奈良の旅行予約はこちらから!
世界遺産「古都奈良の文化財」全部巡り2泊3日モデルコースのポイント
モデルコースとひと言で言っても、人によって興味あるもの、ないもの、同行者との兼ね合いなど、色々あるでしょう。このモデルコースが参考になる人とは?この旅のポイントを整理します。
古都奈良の文化財8つの世界遺産を全部まわることが必達条件
このモデルコースは、世界遺産「古都奈良の文化財」を全部回ることが目的。奈良市内の8か所の文化財が、その対象。8つの構成資産は以下!
東大寺・興福寺・元興寺・春日大社・春日山原始林・薬師寺・唐招提寺・平城宮跡
8か所も巡るのはちょっと…という方、食べ歩きだけしたい方、やっぱり大阪・京都も合わせて旅行したいわよね、という方には、このモデルコースは向きません。
女子ひとり旅・おしゃれな宿に泊まる
コロナ禍以降、すっかりお家時間で一人行動に慣れ、誰にも気を遣わない旅がしたくなってしまいました。自分勝手に素敵だな、と思った宿に泊まり、ランチ時間も気にせず動きます。
結果、女子一人でも安心で観光に便利なホテルに泊まれたことで、目的達成。もちろん、鹿と戯れる時間もしっかり確保(笑)。子どもたちに「恐~い。大人が鹿と一人ではしゃぎながら戯れている~」という目を向けられながらも鹿との時間を楽しみました。同じアブナイ境遇の方(笑)、ぜひ参考にしてください。
奈良女子ひとり旅でお酒を飲む!
ひとり旅でも捨てたくないのが、筆者の場合「お酒」。
どちらかというと、グルメ堪能というより、お酒堪能の旅になってしまいました(笑)。
女子ひとり旅のお酒のハードルって、ちょっと高いですよね?
奈良はひとり旅の方も多いので、そこまで浮かないことが分かっただけでも良かった♡。この旅では女子ひとりでも浮かなないお酒の飲めるお食事スポットを見つけたので、そちらも紹介します。
奈良へのアクセスは飛行機!伊丹空港からバスが楽な上にお得
奈良・京都・大阪を巡る観光列車、近鉄電車「あをによし」の登場で鉄道好きの方は新幹線で関西へ行き、奈良県を目指す人も多いようですが、新幹線って高くないですかぁ(号泣)。
その点、飛行機の場合は時間帯や予約する時期、航空会社のセールを狙えば新幹線よりはるかに安くなるんですよね。しかも奈良県は京都・新大阪から乗り換えて移動することになり、荷物の多いかよわいワタクシ(怒られるぞ)は、移動だけで体力使いそうでそれだけで嫌になりました。
調べた結果、断然おすすめなのが伊丹空港から近鉄奈良駅やJR奈良駅へのシャトルバス。
料金は1,510円(2023年12月現在)で所要時間は1時間20分ほど。これなら空港に到着したら乗っているだけで目的地の近鉄奈良駅に到着できるじゃないですか!それでは出発!
1日目は始発の飛行機で出発!
筆者はとにかく安く移動したいあまりに全日空の始発で伊丹空港に到着。まだ日も登らぬうちに、よろよろと羽田空港に向かいました。羽田空港の全日空の始発は6時25分。
早起きできたご褒美でしょうか、素晴らしい雲海からアポロチョコと見間違えるような富士山が「行ってらっしゃい!」と言っているような、言っていないような。
7時30分:伊丹空港到着
安いけど眠い。眠いけどあっという間に到着できるのが飛行機。寝る間もなく、朝7時30分には伊丹空港に到着してしまいました。しかし奈良駅へのバスは1時間に1本。この時点で1時間10分も時間があることに気づきました。
まだ暗いうちに家を出て、全日空のおいちいコンソメスープしか飲んでいないことに気づきます。バスに乗ったら近鉄奈良駅に着くのは10時。奈良で朝食を取るにしても、中途半端な時間帯で最悪ランチ迄何も口にできないかも?
伊丹空港で朝食もあり
後で気付いたのですが、近鉄奈良駅周辺は、朝食の時間はファストフード店しか開いていません。だったら早朝に伊丹空港に到着してしまう皆さんは、大阪グルメの名店が早朝から食べられる伊丹空港で朝食もいいでしょう。
筆者は以前大阪で食べ損ねたダイヤモンドカリーをがっつりといただきました。お肉ごろっごろで最高です!
1時間20分かかるということで、ぐっすり眠ろうと席に着いたら、一瞬で寝てしまったらしく、体感時間3分ほどで近鉄奈良駅につきました。
神社仏閣が世界遺産の奈良の朝は早い。初日からフルに観光できるのは、朝に無理したご褒美だわあ(ただ航空券の料金をケチっただけだろ!という声は聞こえません)ということでホテルに直行。
10時:ホテルに荷物を預けてそのまま奈良観光開始へ!
まずはホテルに直行。荷物だけ預かってもらいます。今回選んだお宿は「MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS」。
こちらにした理由は、奈良市内の三大世界遺産・東大寺、春日大社、興福寺を徒歩で巡れるという世界遺産のど真ん中にあるといってもいい最強の立地と、他の記事でも紹介しますが、おしゃれかつサスティナブルで、料金もこの立地にありながらお手頃だったから!さらに、女子ひとり旅で外せない、ひとり飲みが遅い時間までできるカフェ兼バーも併設。
旅の目的を決めるとおのずとそれに合った宿と出会える。旅の醍醐味ですね!
10時15分:法相宗大本山 興福寺
初日10時から観光できちゃう、奈良!まだまだパワー全開でやってきたのが世界遺産を「古都奈良の文化財」を構成する資産の一つ、法相宗大本山 興福寺。ならまちなどから見える興福寺の五重塔は奈良のシンボル的存在でもあります。
興福寺の前身、「山階寺(やましなでら)」がこの場所にあるというお寺でしたが、壬申の乱(672年)、平城遷都(710年)と事あるごとに場所を移され、名前が変わり、現在の「興福寺」となりました。
この際には藤原一族の氏寺として、北円堂・東金堂・五重塔などが建ちますが、現在の興福寺には創建時の建物はありません。平安時代末期の南都焼討ちで、ほとんどの建物が焼失してしまったためです。
最も重要な建物とされているのが、中金堂(ちゅうこんどう)。こちらの建物は復元されたのが2018年とまだ新しく、国宝です。
興福寺は敷地内に入るだけなら無料。東金堂・中金堂・国宝館はそれぞれに拝観料・入場料があり、東金堂と国宝館はセットのチケットが販売されています。筆者は東金堂と国宝館のセットを購入。
東金堂は726年(神亀3年)に聖武天皇が元正太上天皇(聖武天皇の叔母にあたる)の病回復を願って建立されたため、本尊は病気に苦しむ人々を助ける仏「薬師如来坐像(やくしにょらいざぞう)」。ただ前述通り、何度も再建されてきた興福寺。東金堂も例外ではなく、当時の薬師如来坐像ではありません。現在の薬師如来坐像は1415年(応永22年)に再建されたころに造立されたと伝わるものの、細かな細工と、その迫力に圧倒されるうえに、歴史の深みなのでしょうか。お会いした瞬間、涙が…。
阿修羅像に会える!国宝館は必見
敷地内の建造物を見て回るには大して時間はかかりませんが、時間を一番長くとっておきたい施設が国宝館。東京で公開された際には、大人気となった阿修羅像に会えます。
残念ながら内部は撮影禁止。っていうことで、ポスターでその凄さを想像していただきましょう!
DATA
法相宗大本山 興福寺
アクセス:JR奈良駅より徒歩約14分/近鉄奈良駅より徒歩約5分
所在地:奈良県奈良市登大路町48
時間:9時~17時
料金:国宝館・東金堂連帯共通券(拝観料)大人・大学生900円/高校生・中学生700円/小学生 350円
※共通券の販売は16:15まで※東金堂工事中の間は中金堂の見学が可能です。
公式サイト:法相宗大本山興福寺▶
12時15分:JR奈良駅発の電車でJR法隆寺駅へ!
小顔な上に男前の阿修羅に癒された後は、同じく歴女にファンの多い聖徳太子ゆかりの地に行くためにJR奈良駅へ向かいます。興福寺からは徒歩約15分ほど。12時15分奈良駅発の大和路線快速に乗れました。11分ほどで、JR法隆寺駅に到着!
法隆寺駅から法隆寺は徒歩約22分。結構距離があります。
ただでさえ朝からの移動で疲れていた筆者は法隆寺駅からタクシーに乗りました!体力のない人はこれが正解です(笑)!
また、JR法隆寺駅前からは奈良交通72番のバスで法隆寺参道迄約8分で到着しますが、1時間に3本しかないので、急ぐならタクシーか歩きの方が確実。
12時35分:法隆寺
法隆寺はじっくり見たほうが良い場所。特に奈良時代の状態をほぼ残している西院伽藍と、昭和生まれの方には懐かしい聖徳太子のお札の透かしになっていた夢殿のある東院伽藍は両方見ないと意味がなく、入場も共通券です。その間の移動距離も結構あるので、2時間は見ておきたいところ。
世界最古の木造建築がお出まし!
えっ?ここが本当に「柿食えば、鐘が鳴るなり法隆寺なの?」と思うほど地味な南大門(創建時の南大門は1435年(永享7年)に焼失。1438年(永享10年)に再建)をくぐった途端、「おおおおお!」と叫びたくなる光景が広がります!
何と言う感動!ここを聖徳太子も歩いたのかと思うと、とてつもない歴史ロマンを感じます。
法隆寺は607年(推古15年)完成。聖徳太子が亡くなった父、用明天皇のため寺を建立し造立した、気が遠くなるほど長い歴史を誇ります。国宝の中門、金堂、五重塔、回廊は飛鳥様式をそのまま現在に伝えている奇跡の建造物。670年(天智9年)に火事があり焼失したものの、いち早く復興。奈良時代の初頭には、西院伽藍が今の形で完成。目の前のこの光景は、世界最古の木造建築群なのです!
あ、うんの呼吸!ムキムキの金剛力士像も日本最古
中門には国宝の金剛力士像がバッキバキの筋肉と恐ろしい形相でお出迎え。どちらも後年改修などはされているものの、作られたのは711年で日本最古の金剛力士像ではないかと言われています。
金堂は12月8日は「お身ぬぐい」
写真左の金堂には、法隆寺の本尊、釈迦如来・薬師如来・阿弥陀如来、国宝の吉祥天や日本最古の四天王像が安置されています。何も知らずに訪れたこの日は、1年に1度の「お身ぬぐい」の日で、埃おとしがおごそかに執り行われていました。なんというお導き…。
五重塔は日本最古の塔!ルーツは東京スカイツリーにも受け継がれる
出た~!法隆寺の五重塔は、日本最古の塔なんですっ!
アジアにもチェディと呼ばれる「仏舎利塔」がありますが、日本の場合は、五重塔で表現されています。そのため、塔の柱の下には仏舎利(釈迦の骨)が納められているのです。
五重塔は積み上げ構造。日本のタワー建築の基礎になっており、あの東京スカイツリーにもこの建築方法が採用されているのだとか。五重塔の造りは地震による倒壊の記録はなく(火災はあり)仏舎利の上に立つ「心柱」がその耐震性を担っているのではないかと考えられています。東京スカイツリーも五重塔を参考に、心柱を重りになるよう機能させていることが、公式サイトに掲載されており、日本最古の塔は、日本で一番高い塔にも役立っているという鳥肌モノの事実を知るわけです。
聖徳太子信仰の聖地・東院伽藍
歴史好きに根強いファンを持つ聖徳太子。法隆寺を訪れたのなら絶対に外せない場所こそ、聖徳太子の住居「斑鳩の宮」の跡地となる東院伽藍の夢殿です。
ここで聖徳太子が生活していたと思うだけでも、本当にいた人だったのか!と感慨深いものがありますが、この夢殿、昭和世代の人ならニセ札防止に使われる「お札のすかし」として記憶している人も多いはず。
堂内には年に2回のみ特別開帳される救世観音像が安置されていて、聖徳太子の等身像と伝わります。
DATA 聖徳宗総本山 法隆寺 アクセス:JR法隆寺駅より徒歩約22分/JR法隆寺駅より奈良交通72番バスで約8分/JR法隆寺駅よりタクシーで約5分 所在地:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1ー1 時間: 2月22日~11月3日まで 8時~17時/11月4日~2月21日 8時~16時30分 料金:一般1,500円/小学生750円(西院伽藍・大宝蔵院・東院伽藍内共通拝観料) 公式サイト:法隆寺▶
法隆寺でお腹が減ったら
このモデルコースでいくと法隆寺見学は、お昼にぶつかります。
実は参道には奈良名物柿の葉寿司のお店や、おしゃれな和食の店、イタリアン、カフェなど結構飲食店が多いので、奈良駅か近鉄奈良駅に戻る前に、法隆寺の参道でランチするのも良いでしょう。
先の予告をしておくと、次に目指すのは「ならまち」。おしゃれな飲食店やカフェが点在するので、町屋の雰囲気のなかでランチしたい場合は、ならまちまで待ちましょう。
14時37分:JR法隆寺駅からJR奈良駅へ!
14時37分の電車でJR奈良駅へ。
朝空腹すぎて書き込むように食べたカレーライスがまだ胃の中にいる関係上、ランチではなくお茶することに。JR奈良駅からバスで近鉄奈良駅、そしてホテルというコースもありですが、歩く時間と変わらないので、歩きます!目指すカフェはまーっすぐ道1本なので、景色を見ながら歩いているとあっという間。徒歩18分なり。
15時15分:ホテルチェックイン&ちょっと休憩
この日に泊まる「MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS」にチェックインがてら、とーっても行きたかったカフェ兼バーが併設されていたことを思い出し(ほぼその店の写真を見て決めてしまったと言っても過言ではない)、濃厚なタルトショコラとコーヒーで胃をじんわりと癒します。
我が足もやっと座れてうれしそうでした。
注文も会計はスマホでQRコードを読み取るタイプ。
テラス席から見える芝に覆われた丘陵地は、鹿さんがたくさん。鹿がテラスのすぐ近くまで寄って来る日もあるようですよ!
今回泊まる「MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS」は、世界遺産「古都奈良の文化財」を構成する8つの文化財のうちの大部分が徒歩圏。「古都奈良の文化財」を全部回る奈良の旅は、ホテル選びがとても重要になってきます。このあたりはお得なゲストハウスから高級ホテルまでおしゃれで素敵なホテルがたくさんあります。お好みと予算に合わせて選んでみましょう♪。
16時15分:元興寺(がんごうじ)
特にクタクタになった時に行こうと、とっておいた元興寺は、ホテルから徒歩約7、8分(とっておいたくせに1日目で登場とは…)!早速行ってみよう!
元興寺(がんごうじ)は巨大大仏で知られる東大寺や、聖徳太子ゆかりの法隆寺、広大な参道に散策のしがいありまくりの春日大社などと比較すると、あまりにも町に溶け込んでいるせいか「世界遺産の一つ」と気付いてくれない人もいる始末。敷地も大きいわけではありません。
しかし!この寺院は日本の仏教に大きな影響を与えたことで「古都奈良の文化財」として登録されているのです。
ならまちに溶け込む日本最古の本格的仏教寺院
元興寺の前身は飛鳥時代に蘇我馬子(そがのうまこ)が創建した法興寺(飛鳥寺)。甥にあたる崇峻天皇(すしゅんてんのう)即位を機会に造られた寺ですが、この法興寺が平城遷都の718年に奈良市に移され、今の元興寺という名になりました。法興寺(飛鳥寺)は日本最古の本格的仏教寺院だったということもあり、大変貴重な存在です。ちなみにご本尊は仏像ではなく、智光曼荼羅(阿弥陀如来を本尊とする極楽浄土図)の中に描かれている阿弥陀如来。
敷地内はとても素朴。本堂もなぜかいるだけで癒されてしまうような空間です。庭園の石像や、おもしろポーズの鬼の置物、季節の花々などなど、他のお寺にはないかわいらしさに満ちています。
なぜ鬼の置物が?
なぜ庭園にお茶目な鬼たちが?
実はこんな言い伝えがあります。
その昔、元興寺の鐘楼に鬼が出て、奈良の都の人たちを恐がらせました。しかし、尾張国から雷の申し子と言われる大力の童子が入寺。鬼の毛髪をはぎとって退治した、というのです。ぎゃー!聞いているだけで痛い。毛髪はぎとらないでぇ~!
それ以降、鬼を退治する雷を神格化して「八雷神」「元興神」と称することになり、鬼のような姿で表現するようになったのだそう。考えてみたら雷様の絵は、トラのパンツにツノが生えていませんか?
そう考えると雷様由来のお寺とも言えるの?雷様の伝説は、元興寺のこの伝説が全国に広まり、形を変えていったとも言われているのです。
飛鳥時代から元興寺を守る1400年前の瓦は必見!
日本最古の本格的仏教寺院を今に伝える本堂「極楽堂」や禅室。内部を見てまわったら、今度は外からじっくりと観察してみて。あまりにもさりげなく存在しているけれど、超越した時間の流れを感じさせてくれるものと出会えます。
なんと1400年前、飛鳥時代の瓦が極楽堂と禅室の一部に残っています。明らかに瓦の色が違うので、すぐわかりますよ。
他にも国宝の五重小塔や、重要文化財の東門など見どころがいっぱい。他の寺院よりも小さいな敷地なので、見学時間は1時間もかかりませんが、ゆっくり、じっくり見たいという人は時間をかけて見学するのもあり。
DATA
元興寺
アクセス:近鉄奈良駅から徒歩約15分またはバスで福智院町下車、徒歩約5分/JR奈良駅から徒歩約20分またはバスで田中町下車、徒歩約5分
所在地:奈良市中院町11
時間:9時~17時※入門16時30分まで
料金:大人500円(展示会などの期間は別料金設定あり)/中学生・高校生300円/小学生100円
公式サイト:元興寺公式ホームページ
17時:ならまち散策
すっかり奈良のおしゃれエリアとして名を響かせている「ならまち」ですが、もともとは元興寺の旧境内だったエリア。江戸時代末期から明治時代にかけての町家が建ち並び、町家の建物内に薬屋さんやお酒屋さん、カフェや飲食店などが通常通り営業しており、とてもいい雰囲気。
そして町屋の造りを詳しく見学させてくれる「ならまち格子の家」など、古民家の造りを学習させてくれる町屋もあります。
ならまちは急速に町屋ゲストハウス、町屋旅館が増えているので、興福寺の門前町だったころを感じながら、町屋に泊まるのも楽しそう、と思いました。次はチャレンジしたいなあ。
DATA
ならまち
アクセス:JR奈良駅より徒歩約14分/近鉄奈良駅より徒歩約5分
所在地:奈良県奈良市中院町
時間:店舗により異なる
公式サイト:奈良市観光協会▶
1日目の一人飲みディナーはワインバー
ひとり旅の旅先で、お酒をちびちびやりながら、地元酒場で料理をつつきたい。そんな旅のイメージを抱いてやってきた奈良旅行。観光名所がほぼ寺院という、奈良の夜は早い!
地元の人の話によれば、20時でラストオーダーなんてザラだそうで、その代わり早めからオープンしている居酒屋やダイニングバーも多いのだそう。
奈良の夜をお酒を飲んで過ごしたい人は、寺社の拝観時間が終わったと同時にお目当てのレストランや居酒屋へGOしてください。
18時:和いんと日本酒 kuriya 〜厨〜
やっと見つけたお店の中から、今回の奈良旅行で最も気に入ったお店、「和いんと日本酒 kuriya 〜厨〜」さん。
まずは奈良の世界遺産にスパークリングワインできゃんぱーい!
手羽先と大根を軟らかーく煮込んだお通しからしてあたたまるぅ。
長ーいカウンター席があり、1人で飲んでいても全然浮きません。しかもテレビが置いてあるから無言でテレビ見ながらお酒飲んでいても誰も何も言いません。まさに求めていたのはこんな店。
ワインも日本酒もびっくりするほど品ぞろえが多く、食事のメニューは「本当にこんなに作れるの?」というくらい多い!
はい!おかわり!(早い)。
ワインも国内産のリーズナブルでも美味しいものが揃っていて「辛口でスッキリ」などお店の方に相談すると、アドバイスしてもらえてありがたいわー。
スタッフの方も距離感が丁度よく、ひとり旅でもダラダラ飲めます。この後色々なワインをグラスで飲んで、お腹が減っていたので次々とつまみをオーダー。
カキフライに、おでんに、あんきも。
誰ですか、奈良の名物入ってないじゃん、言うのは!
筆者の旅行のモットーは
「観光客が食べそうなのでわざわざ作った地元の食材を使った料理や、そんな料理たちを提供する観光客価格のおしゃれカフェやレストラン」より、地元の人が普段使いで食べに行く、おいしそうな店に入りたいんですよっ。
で、できればお酒も飲みたいということで、よろしいでしょうか(笑)。
飲んでいる間に予約の電話が入って「15時から予約ですね?」と返事している様子を見て驚愕したんですが、なんと14時からやっているということで、さすが夜の早い奈良市。同じ日本でもここまで差があるのかと驚きました。ただ、このお店、周辺のお店と比較すれば、23時までオープンしているので、かなり遅い時間まで営業している方でしょう。観光に疲れて宿で休んでいる間に、レストランが閉まっていた、なんて人は、この店覚えておくと良いかもしれません。
DATA
和いんと日本酒 kuriya 〜厨〜
アクセス:近鉄奈良線近鉄奈良駅2番出口より徒歩約4分
所在地:奈良市東向南町一番地AMIビル1F
営業時間:14時~23時(ラストオーダー:22時30分)
定休日:火曜日(祝日の場合は翌水曜日休)
公式サイト:和いんと日本酒 kuriya 〜厨〜▶
21時:ホテル到着・お部屋でまったり~
この日は3時起きで、始発のANAに乗って伊丹空港へ移動。奈良に着いてすぐに3つの寺院を巡ったので、とにかく足がもう「動きたくない」とストライキ。お酒も入って目もとじてきてしまう。まずはお風呂であたたまって、まったりしたーい!
というわけで世界遺産のど真ん中、今回巡る8か所の世界遺産中、5か所は徒歩圏。デザイナーズホテルであり、奈良県の民芸品のデザインも取り入れたおしゃれだけど省くところは省く潔さで、とてもお得な宿泊料金を提供してくれる「MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS」に戻ります。
見て!すっきりとまとまった和モダンのお部屋!筆者は無類のソファ好きなので、お部屋に大きなソファのある客室を選びました!湯船にお湯を張って、足をもんで、旅の疲れも吹っ飛びます。
しかもテレビはYouTubeやNetflixが見れちゃうやつやーん。
大きなソファでゴロゴロしながらテレビを見ていたら…ありゃ、夢の世界へ。
2日目は早朝スタートがカギ。10キロ以上歩く日
この日のスケジュールは「古都奈良の文化財」の中でも東大寺という奈良県で一番の観光名所と、世界遺産の中で最も歩くという春日大社、そして目的を決めないと敷地内で倒れるほど歩くと噂の平城宮跡歴史公園に行くわけです!
スタートは東大寺。参拝できる最も早い時間に行くことをおすすめします。
なぜって?それは修学旅行生や、日帰り奈良の関西旅行組、バス団体旅行者が来る前にでかけるべきだからです。朝の静けさの中で東大寺を楽しめるのは奈良に宿泊したものならではの特権?
ホテルの朝食を食べていると修学旅行の学生たちに負けてしまうということで、筆者は朝食抜きで出かけました。皆さんはご自由に選択を。
奈良公園で鹿と戯れつつ、徒歩で東大寺へ
東大寺の大仏殿は4月〜10月は7時30分から、11月~3月は8時から拝観できます。筆者は12月初旬に出かけたので、ホテルを7時に出ました。
なぜにそんなに余裕をもって出たのかというと、鹿さんとご挨拶をしたかったからであります!前日は、お見かけしたものの近くでコミュニケーションを取れなかったのです。
ただ、まさかこの後、まるでゾンビのように鹿たちが続々現れるとは思ってもおらず…。
7時:登大路園地で鹿に囲まれる
東大寺や奈良公園に到達する前の、登大路園地で鹿のフンを踏まないように下を向いて歩いていたら、いきなり鹿さんに顔を覗き込まれてびっくり!
出てくるわ、出てくるわ。鹿せんべい持っていないのに寄って来るわ、寄って来るわ。
出てくるわ、出てくるわ。
ただこの時点では鹿さんとの交流は嬉しく楽しいものでもあるものの、奈良市内の主たる世界遺産を回っている途中で、鹿が野良犬や野良猫より当たり前に思えてくるのであしからず。空港から自宅への道のりに鹿がいないことが不思議に思えたほど、当たり前になりますよ(笑)。
7時30分:東大寺
いやー、早くついて良かった!鹿さんも絵になるし!
とんでもなくサービス精神がある鹿さんも多いし。
修学旅行生は起床6時の、朝食の時間でしょう。よし!まだ学生の姿なしっ!
お土産屋さんがシャッターを開け始め、掃除を始めたくらいの時間に大仏殿には入れました!7時30分にここにいるのは奈良に泊まった方か、朝イチで奈良観光に来て、一発目の寺社巡りの方だけです。
大仏殿へ!奈良の大仏(盧舎那仏)と感動の再会
東大寺と言えば、やはり大仏殿でしょう。東大寺は聖武天皇の発願により建立。751年には大仏殿が完成。
一時期は「奈良県は大仏に頼りすぎている」などと例えられた、日本最大の仏像、通称奈良の大仏こと、盧舎那仏(るしゃなぶつ)が安置されています。日本一有名な、いやもしかしたら世界で知られている有名な仏様にノミネートされていると言っても過言ではないその存在感は、やはりお会いすると感動しますね。何十年ぶりの再会、と言った方がよいでしょうかっ!
高さ14.98メートル、頭部5.41メートル、目の長さは1.02メートル、耳の長さ2.54メートル、台座高さ3.05メートル…何もかも規定外の巨大さ。
世界遺産の東大寺かつ、盧舎那仏は国宝でありますが、実は752年に開眼して以降、様々な事件が起こります。
平安時代に入った855年(斉衡2年)には大地震があり、なんと大仏の頭部が落下するという大珍事も。その頭部は真如法親王によって修復されたものの、その後も2回の戦により焼失しているんです。こんなに美しい仏像が戦で焼かれてしまうなんて、いつの世も戦は本当に愚かです。
今、ここで筆者を見下ろしている盧舎那仏は1691年(元禄4年)に復元されたもので、それでも332年もここにお座りになっているのですから、やはりすごい。その割にはつるつるで血色(?)も良いし、古さを感じさせないのはさすがです…。
盧舎那仏の背後にいるのは、子分ではなく化仏(けぶつ)という仏の像で、人々を救済するために仏が別の姿で現れた分身のような存在なのだとか。
大仏殿内には他にも重要文化財が!
幼いころの記憶って曖昧ですね。実は大仏殿内には盧舎那仏だけではなく、他にも素晴らしい彫刻が安置されています。国指定重要文化財の虚空蔵菩薩は盧舎那仏の左側に安置されている脇仏。30年以上かけて作られたそうで、1752年(宝暦2年)に完成。
盧舎那仏に向かって右側に安置されている脇仏は、同じく国指定重要文化財の如意輪観音。同じじゃないんかい?と思ってしまうほど似ていますが、上げている手が左右が異なる芸の細かさに注目。虚空蔵菩薩と同時期に造られましたが、完成は1738年頃(元文3年頃)で虚空蔵菩薩よりかなり早く完成しました。
穴くぐりが復活!
奈良の大仏と言えば、大仏の鼻の穴と同じ大きさの穴をくぐることでご利益があるとされる穴くぐりが有名でしたよね。コロナ禍の間は感染防止のために穴はふさがれていましたが、2023年6月28日に解禁されています!筆者は小学生の頃にくぐったことがありますが、今はくぐれるのだろうか(遠い目)。
正倉院
大仏殿を出た後も、東大寺には教科書でしか見たことがない有名なアレに出会えます。
正倉院です!
聖武天皇の残した愛用の品々を納めた北倉、東大寺の年中行事のために使う仏具などを納めた中倉・南倉に分かれています。昔は東大寺の所有でしたが、宮内庁管轄に。通常は内部を見ることはできません。
毎年秋に奈良国立博物館で一部が展示される「正倉院展」が開催されるので、興味がある方は展示に合わせて奈良旅行を計画してみましょう!
9時30分ごろには修学旅行生が何校も!
見学を終え、鹿さんとコミュニケーションを取っていたところ…
9時30分ごろには修学旅行生たちが襲来!
やはり朝イチ東大寺は奈良観光の基本と心得ましょう!
DATA
東大寺
アクセス:近鉄奈良駅から徒歩約20分/JR奈良駅・近鉄奈良駅から市内循環バス「東大寺大仏殿・春日大社前」下車徒歩5分/近鉄奈良駅から「ぐるっとバス(大宮通ルート・奈良公園ルート)」乗車「大仏殿前駐車場」下車すぐ
所在地:奈良県奈良市雑司町406ー1
拝観時間:4月〜10月:7時30分~17時30分/11月~3月:8時~17時
料金:大人(中学生以上)800円/小学生500円※団体割引・セット料金あり
公式サイト:東大寺▶
9時30分:春日大社の参道を進む
鉄則になりますが、東大寺と春日大社はよほどのことがない限り、セットで回りましょう。
春日大社の本殿は一之鳥居から入ると、すさまじく歩くことになります。その距離、片道約1.7キロ!東大寺も参道が長いので大差はありませんが、一之鳥居まで引き返すくらいなら、東大寺から直接行った方が無駄はありません。
筆者は鹿を追っかけているうちに方向感覚がなくなり、なぜか一之鳥居から春日大社を目指すことになりました。とほほほ。
お辞儀する鹿、役者のような鹿、神の使いは芸達者
奈良市内にいる鹿は、春日大社の神の使いたちでもあります。春日大社の参道には、奈良公園と変わらず鹿が闊歩しているものの、ちょっと頭のいい子が多い気がします。
たとえば鹿の像の前でポーズを決める写真を撮ってほしいモードの(もしくは写真を撮らせてやるから鹿せんべいよこせモード)貫禄ある鹿様や…
鹿せんべい屋の前で待ち伏せする知能犯の鹿さん。
こんにちは、と、お辞儀をしたら、誰が教えたのかお辞儀を返してくる鹿さんなど、バラエティ豊かすぎて、1.7キロの道のりもなんてことない。
10時15分:春日大社本殿
参道にずらりと並ぶ石燈籠はなんと約2,000基。本殿にある吊り燈籠約1,000基を合わせると、3,000基ほどあり、平安時代の貴族や、戦国武将、そして現在も心願成就の願いが叶ったお礼に奉納されています。
レア燈籠と言われる「春日大明神」と刻まれた石燈籠があり、2,000基中わずか15基。3基見つけるとお金持ちになれるという都市伝説もあるそうで、探す人の姿もちらほら。
古い石燈籠は壊れやすいので、触れないように。
鹿と戯れながらのろのろと歩いたので、一之鳥居から45分もかかって到着。南門が目の前にどーん!
春日大社の正門的存在で、表参道から来る方は、この門から本殿へ向かいます。
平安貴族のあつい信仰を受けていただけに、まるで絵本で見た竜宮城のような華やかさ。ここには元々鳥居があったそうで、1179年(治承3年)に楼門になりました。
春日大社の歴史
春日神社ってよく聞くけどな、と思った人!正解。春日大社は全国に約3,000社あるという春日神社の総本社。
平城京ができた710年ごろに、現在の茨城県である常陸国(ひたちのくに)の鹿島神宮の神様、武甕槌命(たけみかづちのみこと)を平城京の守り神として迎え、768年に造営されたことが春日大社の始まり。武甕槌命は白い鹿に乗って、春日の地にやってきたという言い伝えがあり、奈良にいる鹿は神様の使いとして、大切に保護されるようになりました。
以来、平城京の天皇一族や貴族、全国の有名武将、そして一般庶民からもあつい信仰を寄せられてきた神社です。
春日大社のまわり方
春日大社の敷地に入るには、料金は不要で春日大社本殿に向けて参拝を行う「幣殿(へいでん)」と「舞殿(ぶでん)」があります。もちろんここで参拝して、他の世界遺産を巡ってもいいのですが、一之鳥居から20分以上(鹿と遊びながらだと30分以上)かけて、やっとここまでたどり着いたのに、それではあまりにもあっけない!
そこで、特別参拝です。特別参拝受付で500円を納めると、春日大社の神聖なエリアで参拝することができるだけではなく、燈籠が釣り下がる回廊をくまなく散策することができます。
特別参拝のコース
東回廊:南門を背に右手にある東回廊へ。釣燈籠がずらりと並びますが、中には歴史的に名を残した戦国武将や、将軍をはじめ著名人が奉納した燈籠も。
御蓋山浮雲峰遥拝所:東回廊を通り、外に出ると御蓋山浮雲峰遥拝所(みかさやまうきぐものみねようはいしょ)に出ることができます。御蓋山の頂上である浮雲峰は、鹿島の武甕槌命が白鹿に乗って降臨した場所。春日大社にとっての聖地です。入山は制限されているため、ここから参拝しますが、鳥居の奥に広がるのは同じく世界遺産「春日山原始林」。
自然のヒーリング効果と武甕槌命のパワーをいただけると思うと、やはり特別参拝して良かったな…。
本殿参拝:中門の前から本殿を参拝します。4棟からなる本殿は国宝です。
後殿御門から後殿の神様を参拝:本殿の真後ろにある後殿の神様を参拝。本災難厄除けの神様が鎮座しています。
万燈籠再現 藤浪之屋:春日大社では節分と8月14日、8月15日の年3回、すべての燈籠に火を灯す春日万燈籠を行います。現在は藤波之屋を開放し、その様子を再現。外からいきなり暗くなるので、誰かが入っているとびっくりしますが、春日万燈籠に行きたくなること間違いなし!
若宮十五社めぐり
春日大社には本殿の4柱の神様のほかにも摂社・末社としてたくさんの神様が祀られています。なんと62社の神様が祀られているんですよ!その中でも若宮神社15社は、ご神託によって創建された神社。春日大社にたっぷり時間がさける場合は、15社めぐりもあるのでチャレンジしてみては?全行程で1時間30分ほど。
縁結びで有名な夫婦大国社(めおとだいこくしゃ)、開運財運を守ってくださる金龍神社(きんりゅうじんじゃ)
、伊勢神宮をお参りできる遥拝所神社など、人生に係る全ての神々が鎮座しています。
DATA 春日大社 アクセス:JR大和路線「奈良駅」または近鉄奈良線「奈良駅」から奈良交通バス「春日大社本殿行き」乗車。「春日大社本殿」下車徒歩すぐ/奈良交通バス(市内循環外回り)「春日大社表参道」下車徒歩約10分 所在地:奈良県奈良市春日野町160 時間:6時30分~17時30分(11~2月は7~17時)詳細は公式サイト参照 料金:敷地内の散策は無料/回廊内特別参拝500円(9時~16時) 公式サイト:春日大社公式サイト▶
11時50分:ちょこっとだけ、春日山原始林
春日大社の御蓋山浮雲峰遥拝所で、しっかりと春日山原始林の雰囲気とパワーをいただいたよね…と思ったものの、春日大社の敷地内にある水谷神社のあたりから、ほんのちょっとだけ春日山原始林遊歩道に入れると聞き、行ってみました。
春日大社の東側にある春日山は、841年に狩猟と伐採が禁止されました。また、武甕槌命が降臨した場所とも重なるため、春日大社の聖域として保護されています。そのおかげで「ココは屋久島?」とも思えるような森が、都市のすぐ近くにあるという、貴重な存在。春日大社と一体で世界遺産登録されていますが、同時に特別天然記念物に指定されています。
筆者は空腹すぎて目の前がかすんできたため、仏頭石付近で引き返しました。とても軟弱です。
春日山原始林ハイキングは世界遺産めぐりとは別がおすすめ
今回は時間と体力の都合で「春日山原始林」もちょっとだけ行ったよね~…という訪問でしたが、できれば春や初夏、初秋など、木々が美しく、ハイキングが楽しい季節に、ハイキングを主目的に行くことをお勧めします。
ハイキングの服装と、旅行の服装ってやはり違うので、荷物も増えがち。やはり10キロ近い山道。これで1日使って、宿でゆっくりした方がいい旅ができることでしょう。
DATA 春日山原始林遊歩道 アクセス:JR大和路線「奈良駅」または近鉄奈良線「奈良駅」から奈良交通バス「春日大社本殿行き」乗車。「春日大社本殿」下車 所在地:奈良県奈良市春日野町 公式サイト:春日大社公式サイト▶
12時20分:「ヒサゴ屋食堂」でランチ
朝食を抜いてしまい、途中でコンビニでコーヒーを買ってあたたまったくらいで、午前中総歩行7キロくらいいってしまった筆者。
腹ペコで、そしてゆっくりランチをいただきたくなりました。
ならまちを歩いている時に、ランチ時、たくさんの人が入っていたお店に目をつけていたので、ホテル近くまで戻ります。
世界遺産に囲まれた立地だというのに観光客向け価格とは真逆をいくお得なランチを揃える「ヒサゴ屋食堂」さん。昭和25年創業という老舗ながらすっきりとした和食堂的なお店。
夜の営業はしておらず、ランチのみで15時まで営業している。寺院が観光地という奈良らしい潔い営業時間がいいですね。しかもランチの食べ遅れが続出しそうな世界遺産巡りにありがたいです。
まずは本日の寺院系世界遺産の見学(というかお参り)は終えたので、ジュースを…ビールをいただこうじゃないか!
ビールを飲んでいてアレなんですが、すっかり朝からの寺院巡りで身体の芯まで冷え冷え。ということでお供は関西ならではの喜び、あったか具だくさんの「肉吸い」。
やわらかで優しいお味のスープに、やわらか豆腐、そしてしっかりと大き目スライスの牛肉が嬉しい!
中にはトロトロ卵ちゃんがいい感じの火加減で入っているのに、ご飯のお供に生卵までついてきちゃった!
たんぱく質、たんぱく質!
このお店の良さは、まず観光客だけではなく、スーツの出張族、近くのショップの方も気軽にランチしているところ。そんな環境から、この日は1組のグループと2組のカップル以外、みんな一人という環境!入りやすくてよかったー。
うどんメニューは600円台からある、この立地ではありえない安さも良心的でした!
DATA ヒサゴ屋食堂 アクセス:近鉄「奈良駅」より徒歩約10分 所在地:奈良県奈良市鶴福院町32 時間:11時〜15時(ただし出し汁が売り切れた場合は営業終了) 定休日:月曜日・金曜日(その他臨時休業有り) 公式情報:instagram▶
13時50分:平城宮跡歴史公園
イヤー、もう歩きたくないなあ、という足に色々言い聞かせて、近鉄奈良駅から電車に乗ればわずか2分の近鉄「新大宮駅」へ。さらにそこから微妙に遠い徒歩約20分で、平城宮跡歴史公園…。
いや、もう歩けない…。しかもさりげなくビールを飲んでしまった筆者、新大宮駅からタクシーに乗車しました。平城宮跡歴史公園は広すぎるので、降りた場所によって、とんでもない歩行距離になるってことで、一番見たかった朱雀門に近い入り口で降ろしてもらいました。1,000円ちょっとなり。
軟弱者目!と思った方におすすめしたいのがレンタルサイクル!
平城宮跡歴史公園は東西南北1キロ。そこに「張り出し」と呼ばれる東西250メートル・南北750メートルの敷地が隣接した恐ろしいまでの広さ。どちらにしても徒歩ですべてまわることは、これだけ歩き回った後には無理。しかもレンタル自転車は店舗により異なりますが、新大宮駅の支店は24時間ごとに160円というお得さ!ホテルの場所によってはそのまま自転車を借りて、使いまくるのもありです。
平城宮跡歴史公園の歴史
「なんと(710)立派な奈良の都!」と、とひたすら繰り返し覚えさせられたお影で、多くの人が知っている平城京。710年、現在の奈良県橿原市(かしはらし)にあった藤原宮より、元明天皇が遷都。784年まで日本の中心地だった場所で、平城宮はいわば皇居的存在でした。
平城京は唐の長安をモデルにして造られたと言われています。碁盤の目のように大路を配し、再建されている大極殿などの朝廷の建物や、官庁街が規則正しく並べられていました。
外国使節の送迎の際に儀式も行われたというので、当時の日本は国際都市ではあったんだなあと感動してしまいます。また「男女が集まり恋の和歌をお互いに詠みあいそれを天皇が見る」という今に置き換えるとシュールすぎるというか、恥ずかしすぎるイベントも行われていたそうで、筆者だったら間違いなく「いやだ!見ないで~」って言っちゃう。
当然天皇がいらっしゃる敷地で行うわけなので、貴族などなかなかのご身分の方が集まって、愛だの恋だのを鶯や梅の花にたとえたりなんぞしていたということ。
時代が違うと、こうも恋愛事情が違うんですねえ。
発掘が行われ後に復元がすすんだため、今のように建物が充実してきたのは世界遺産登録後。他の寺院が昔からあるもののせいか、8つの世界遺産の中では扱いが低め。とはいえここに都がなかったら、これまで見てきた神社仏閣は、なかったかもしれません。
徒歩でこの広大な敷地を歩くことになった筆者ですが、復元されている施設や門はそれほど多くなく、外から眺めるだけでいい、という建物も(好みによりますが)。筆者も奈良到着前に、絶対に見たい、じっくり見たいものだけピックアップ。
平城宮・時間がない時に巡るには?
全施設巡るには、3時間以上かかると思った方が良いです。ざくっと平城宮を知りたい筆者は、以下に絞りました。
日の長い夏はぎりぎり16時30分に入場しても明るく、建物内からの眺めも良いのですが、他の施設に行く際、次は真っ暗…。2時間半程度でまわりきらねば!
平城宮いざない館
リサーチしていない、方向感覚がない、という人はまず筆者同様朱雀門広場の「平城宮いざない館」へ。大きな敷地の建物や施設、庭園を巨大スクリーンの映像を使い、わかりやすく教えてくれます。立ち寄らないと、迷う上に、大幅に時間のロスになる可能性も。
「あ、私はここに行ってみたい!」という新たな気づきも得られます。
朱雀門
朱雀門はかつての平城宮の正門。もし時間がなくて、夕方から夜にかけてしか平城宮跡歴史公園に行けないという人は、この門だけでもいい!ライトアップされ、とても幻想的です。
東院庭園
現在の迎賓館的存在。雅やかな庭園では儀式が行われていたのだそう。
遺構展示館
発掘現場をそのままの状態で保存し、展示しています。
大極門(第一次大極殿院 南門)
2022年3月に完成し、園内では最も新しい建物。
第一次大極殿
平城宮最大級の宮殿で、天皇の即位式や外国使節との面会など重要な儀式のために使われていました。
平城宮跡資料館
平城宮内にあった役所や宮殿の内部をジオラマで再現。これまでに発掘された土器、遺跡の瓦など奈良に都があったいにしえの日々を感じさせてくれる展示。
せっかく来たのでまわったけれど…
公園内は24時間入場できるものの入場できる施設は最終入場が16時、もしくは16時30分です。しかも冬だったので日が落ちるのが早い早い。資料館を最後にして正解でした。
駅前でレンタサイクルを借りて園内をまわるか、割高ですが施設内にもレンタルサイクルがあるので、それを利用した方が断然効率良し。国立ということもあり入場料は無料。自転車にお金をかけても痛くはありません。
もう足が前に進むことを拒否します。
駅に行く気力もないので、帰りはタクシーでホテルまで一直線。2,000円ちょいでした。
翌日もまだ観光が残っているので、無理はしない!
DATA 平城宮跡歴史公園 アクセス:近鉄「新大宮駅」から徒歩20分/近鉄「大和西大寺駅」南口から徒歩約20分/近鉄「大和西大寺駅」から「ぐるっとバス」で約10分「朱雀門ひろば」下車/近鉄奈良駅またはJR奈良駅西口から路線バス学園前駅行きで「朱雀門ひろば前」下車すぐ/近鉄奈良駅からぐるっとバスで「朱雀門ひろば前」下車 所在地:奈良県奈良市二条大路南3ー2ー14(朱雀門ひろば) 時間:資料館や門、第一次大極殿など入場できる施設は9時~16時30分※敷地内は24時間入場可能 料金:無料 公式サイト:平城宮跡歴史公園公式サイト▶
17時15分:ホテル着
もうだめだ。こんなに歩いたのは人生初めてなんじゃないだろうか。ホテルへ戻ったら足をもむべく、そして冷えた身体をあたためるべくまずはお風呂へ。
ソファーでぐんにゃりしていたら、眠ってしまい、びっくり仰天!ぎゃー!もう20時じゃないか!もう外に出たくない!
しかしお腹はペコペコ。そう、そんな時のために、このホテルを選んだことを忘れていましたっ!
このホテルを選んだ理由は、併設のカフェ兼バーがとっても素敵だったこと。メニューも奈良県にこだわったお酒、そしてお夜食向けのメニューがあるんです。
というわけで、眉毛だけ書いて、着替えて1階へ。
夜も素敵だわ~!
外来の方も、ホテルに泊まっている方もいるはずだけど、この時間、誰もおらず筆者ひとり。やったねー!
他の宿泊客の皆さんは、外食して、お部屋に戻る前に立ち寄るのかもしれないですね。
通常はハイボールを水のように飲むワタクシですが、実はココで衝撃の出会いを果たしました。
「えっ?何なのこの香り!」とうっとりする爽やかな香りのハイボールです。「岩井トラディション」というウィスキーで作ったものだとホテルの方が教えてくれ、このホテルに泊まったお客さんで同じように「このハイボール、香りがすごい!」とびっくりした人がいるのだとか。
これは水のように飲むのではなく、香りと、このバーの雰囲気を楽しむものですな。そしていつになく、ちびちび、そしてしっかりおかわり。
メニューにある「夜の宝石」ことナッツなどの入ったおつまみをつまみながら、お酒を飲んで、お夜食メニューはお茶漬けと奈良県産の名物そうめんを使った温かいにゅう麺がありました。
もう寝るだけの筆者はつるつるっといきたいのでにゅう麺を。
やさしいお出汁に大満足。名産のお夜食がいただけるなんて、いいですねー。
3日目はしっかり食事が取れる余裕
この日はホテルで朝ご飯をしっかり食べてからスタート。最終日にとっておいた、隣接する2つの寺院で世界遺産8か所巡りは完了します。初日、2日目とも近年こんなに歩いたことがない、という距離歩きまくり世界遺産を巡ったおかげで余裕の最終日。
和洋食で朝食選べますが、ここでは和食を。空間コーディネーターの石村由起子さんが出がけるカフェ「くるみの木」が監修した朝食ということで、奈良の食材を、おしゃれにいただけました。洋食も同じく奈良の食材を使っています。どちらかというと洋食の方がボリュームありな写真の印象。
バスで空港に行く最終日は近鉄奈良案内所内のコインロッカーを狙え!
朝食をいただいて準備を済ませたらホテルをチェックアウト。今日は近鉄奈良駅から伊丹空港行のシャトルバスを利用するため、ホテルに荷物は預けず、定期観光バス近鉄奈良案内所内にあるコインロッカーに荷物を預けます。バスで空港に行く人は徒歩時間や時間ロスがなくてこれが一番便利。
ロッカーの数は決して多くはありませんが、筆者が平日9時30分に伺った際には、3つ空いていました。
これから行く薬師寺は近鉄を使います。このモデルコースを参考にする場合は、近鉄奈良駅構内にたくさんあるコインロッカーを利用してもいいでしょう。
筆者は10時5分発の近鉄奈良線快速急行に乗り、大和西大寺駅で近鉄橿原線(橿原神宮前行)に乗り換え。西ノ京駅下車。今日最初の目的地、薬師寺へ向かいます。
10時25分:薬師寺
「古都奈良の文化財」の8つ世界遺産の中で、一番駅から近いのが、ここ、薬師寺!
薬師寺の歴史
680年、天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気治癒を祈り発願。697年に本尊である薬師如来の開眼が行われますが、710年、都が藤原京から平城京へと遷都したため、現在の地に移ります。
ただその後、何度も火災に見舞われ、比較的新しく見える建物が多いのも事実。ただ、都度火災から免れた仏像や貴重な仏具、仏像などは展示されています。
上の写真を見るとわかる通り、中央に本尊を祀る金堂、東西に二つの塔を置く伽藍配置は、薬師寺が日本で最初のお寺となりました。そのため同じ配置をしているお寺の伽藍は、現在でも「薬師寺式伽藍配置」と呼ばれているのです。
見逃せない!薬師寺の文化財や建物
近鉄の駅側に近い門から入るのが正式なのか、車で来た人が駐車場から入る中門から入るのが正式なのか悩むところですが、近さを取って駅側から入ります!ここでは絶対に見ておくべきポイントをお教えしておきますね。
大講堂
近鉄西ノ京駅側から薬師寺に入ると、最初に目につく建造物が大講堂。中は広く、重要文化財の弥勒三尊像や国宝仏足石、仏足跡歌碑など貴重な文化財や仏像を見ることができます。国宝ではないものの、強烈な存在感を放っている彫刻が中村晋也氏作「釈迦十大弟子」。弟子たちの表情や名前を見ていると堀が深く、お釈迦様は本当にインドにて、仏教がインドから伝わり、日本に至るまでの長い道のりを経たんだなあと、感じてしまいます。
金堂
創建時の金堂はきらびやかに荘厳されていたようですが、度重なる災害、火災で現在の金堂が再建されたのは1976年と意外と最近。とは言え、薬師三尊像は、創建当初から金堂に祀られている薬師寺のご本尊。
その存在はあの 『日本書紀』にも明記されており、697年7月29日に開眼法要が行われたと伝わっています。
薬師寺で絶対に見逃せない!平城京最古の建造物・国宝東塔
最も見逃せない薬師寺内の建造物は、国宝・東塔。薬師寺は災害や火災で多くの貴重な建物が失われ再建されていますが、この東塔は、創建当初から唯一現存する平城京に残る最古の建造物。730年に創建され、この地で多くの歴史の流れや、それこそ目の前で燃え落ちる他の建造物の姿を見てきたことでしょう。
屋根が六層あるせいか、六重の塔に見えますがに見えますが、東塔は三重の塔。大小の屋根の重なりがリズム感を産んでいるということで「凍れる音楽」という何とも素敵な愛称で呼ばれています。 平城京に残る最古の建物として、国宝に指定されています。
薬師寺中門の二天王像に注目!カラフルでユーモラス
薬師寺中門にはとってもユーモラスな表情で、カラフルな甲冑をまとった謎の2人が待っています。日本のお寺には半裸ムキムキの仁王像がいますが、この2人は一体誰なのでしょうか?
仁王像とは異なる二天王像と呼ばれる像で、かつてあった二天王像は中門と共に燃えてしまったそうですが、造立の際は中国西安の「大雁塔」の門垣に掘られた仁王像を参考にしたと伝わっています。
色合いが妙におしゃれなことと、恐いというよりかわいいその表情は薬師寺の人気者。電車で来た参拝者にとっては一番奥、車で来て駐車場のある方向から入った参拝者にとってはお迎えされる位置ですが、思わず見入ってしまいます。
僧侶のお話が腹がよじれるほど面白い!
東大寺では大仏様をしずかにゆっくりと拝みたかったため、何校もやってくる修学旅行生を避けておりましたが、薬師寺は別!この薬師寺、お坊さんの話が面白すぎることで、修学旅行の立ち寄り先になっているのではないか(いや、世界遺産だから)と言われるほど、Twitterでもその鮮やかすぎるトーク術に魅了された学生たちのツイートが目出ちます。ということもあり、学生たちが薬師寺東僧坊に入っていったら大チャンス!
一緒にその素晴らしいトークを聞きましょう!
その日は僧侶が一人の学生のキャラクターをいたく気に入ったようで「君面白いな!」といじりまくってみたり、東大寺、法隆寺、薬師寺の立場をアイドルの立ち位置になぞらえ「うちの寺、センター張ってます」と言ってみるなど、歴史が苦手な人でも薬師寺のことだけは忘れられない存在にしてしまうレベル。
思わず学生の後ろでゲラゲラ笑ってしまいました。
敷地内で何人かの僧侶の方にすれ違いましたが、他のお寺の僧侶の方より、かなりフレンドリーで挨拶がてら「今日はいい天気で良かったですねえ」などと話しかけてくださる方が多かったのが印象的。
日本に根付いた仏教。開かれてこそ、親しまれてこそ残っていくものかもしれませんね。
西遊記で有名!玄奘三蔵院伽藍
この後、唐招提寺に向かいますが、その前に必ず立ち寄ってほしい伽藍があります。薬師寺の受付の門から外に出る形になりますが、玄奘三蔵院伽藍です。
玄奘三蔵…三蔵法師?と気付いた人は、西遊記をドラマで見ていた皆さんかも!そう、三蔵法師こと玄奘三蔵の頭部の遺骨が納められている貴重な伽藍です。
ドラマの印象が強いせいか、ええっ?三蔵法師って本当にいたの?という人も多いかもしれません。玄奘三蔵は602年~664年まで、中国の唐の時代に実在した僧で、当時まだ中国になかった経典を得るため、27歳の時にインドへ旅立ちます。学びを終え、再びインドからの旅を終え、17年後に唐へ帰国。その際、旅の模様を『大唐西域記』という書物に記しており、それが西遊記のモデルになったのではと言われています。
彼が持ち帰った経典は玄奘三蔵の翻訳で『般若心経』となり日本にも根付いているのです。
まさかあの三蔵法師にも会えるなんて…奈良の世界遺産のレベル、恐るべし。
DATA
法相宗大本山 薬師寺
アクセス:近鉄「西ノ京駅」下車すぐ
所在地:奈良県奈良市西ノ京町457
時間:8時30分~17時(受付は16時30分まで)
料金:大人800円/中高生500円/小学生180円(2024年3月1日から大人1,000円/中高生600円/小学生200円)※東塔・西塔特別公開中は料金が異なるため必ず公式サイトで確認を
公式サイト:薬師寺公式サイト▶
12時30分:唐招提寺
薬師寺から徒歩9分で到着する最後の世界遺産が、唐招提寺。その道なりにはお蕎麦屋さんがぽつぽつあるので、お腹が減っていたら蕎麦ランチもおすすめ。
唐招提寺は「名前は初めて知ったけど、世界遺産だから寄っておかないと!」という人も多いほど、唐招提寺と聞くと「知らない」という人が多く、全国的には知名度は低めなのに、なぜ「古都奈良の文化財」の8つの構成資産に入ったのでしょう。でも、鑑真と言えばどうでしょう。皆さん知っていますよね!?
唐招提寺の歴史
鑑真は当時の中国(唐)から失明をするほど壮絶な航海を繰り返し、やっと6度目の航海で日本にたどり着いたという信念の方。759年に奈良朝廷からこの地を譲り受けました。このお寺は仏教の戒律(教団が守るべき規範)を学ぶ寺となったのです。
例え時間がなくても絶対に見逃せない建物は奈良時代に建立されたそのままの形の残している伽藍、国宝金堂と講堂。
ただ、唐招提寺には美術の教科書と日本史の教科書でしかお目にかかったことがない、あの像があります。もしそれを見ないで帰ったら、かなり後悔することに。
鑑真和上座像は絶対に見逃せない!
唐招提寺で仏教の戒律を日本に広めた鑑真和上にお会いしましょう!
像が安置されているのは御影堂という1964年(昭和39年)移築復元に移築復元された江戸時代建立の建物で、寺の敷地内では新しさを感じてしまうのですが、この内部に鑑真和上がいらっしゃるのです!
さすがに撮影禁止ですが、日本最古の肖像彫刻であり、天平時代を代表する彫刻です。奈良時代に造られた彫刻だというのに、当時の色が残っている事には感動。その表情には日本行きを決して諦めなかった不屈の精神が宿っているかのようです。
DATA
唐招提寺
アクセス:近鉄西ノ京駅から徒歩10分/JR「奈良駅」または近鉄「奈良駅」から78系統「奈良県総合医療センター」行きバス17分「唐招提寺」下車すぐ
所在地:奈良県奈良市五条町13-46
時間:8時30分~17時(受付は16時30分まで)
料金:大人・大学生1,000円/高校生・中学生400円/小学生200円
公式サイト:唐招提寺公式サイト▶
14時30分:遅めランチを近鉄奈良駅周辺で
世界遺産を8か所まわった喜びでウキウキしながら近鉄西ノ京駅へ。大和西大寺駅経由で近鉄奈良駅に戻ったらこの時間。朝食をしっかり頂いたせいか、中途半端な時間の空腹。飛行機の時間を考えると15時55分発のバスには乗りたいので、この空腹を空港まで持ち越すには時間がありすぎる!
駅近でいただいちゃいましょう。…でもこの時間、ランチをちゃんと食べられるお店はチェーン店しかない!
牛カツ京都勝牛 近鉄奈良駅前店
奈良で京都の味かよ!というツッコミはさておき(笑)、グランドメニューは東京でも食べられる牛カツと、京都ならではのデザートなどですが、なんと近鉄奈良駅前店には「大和牛」の牛カツも!よっしゃぁ、奈良の味、大和牛いってみよう!
チェーン店だけど、こんなところで奈良の良さを見せてくれるなんて最高。なんといってもひとり旅の味方、ながーいカウンター席あり!
それにね。「古都奈良の文化財」の8つ世界遺産を制覇した感動でひとり乾杯したいじゃないですか!
今回わかったんですけど、奈良県って女性ひとり旅の方が多いなあ、と思いました。カウンター席で上品に一口大に切った牛カツを、お酒お供に味わえるってのは、いいですよね
絶妙なレア加減、きめの細かいパン粉。ローストンカツはえぐい年齢になってきましたが、牛カツはいくらでも食べられちゃう!
ランチ難民になりがちなこの時間の強い味方ですぞ!
DATA
牛カツ京都勝牛 近鉄奈良駅前店
アクセス:近鉄奈良駅から144メートル
所在地:奈良県奈良市東向中町17-1
営業時間:11時~20時(ラストオーダー19時30分)
定休日:無休
公式サイト:牛カツ京都勝牛 近鉄奈良駅前店▶
近鉄奈良駅バスターミナルから伊丹空港へ
定期観光バス近鉄奈良案内所内のコインロッカーの存在は、本当に助かりました。ここではチケットも買えます。寒い季節は待合室もあるので、バスを待つ時間、使わせてもらいましょう。
空港行のシャトルバスは2023年12月現在は、道を挟んだ反対側なので、時間に少しだけ余裕をもって待合室を出ましょうね!
信号があるのでギリギリだと行ってしまうかも!
筆者は15時55分発のバスに乗り、無事に伊丹空港に17時20分ごろ到着。もちろん余裕でお目当ての飛行機に乗れました。
世界遺産「古都奈良の文化財」を巡り終えての注意事項や反省点
最後に2泊3日で「古都奈良の文化財」の8つの世界遺産を巡るひとり旅。巡ってみての感想や、反省点、役立つ情報をまとめてみました。
2泊3日では足りないかも?
「古都奈良の文化財」は大部分が16時ごろには最終受付となる寺院や施設ばかり。ゆっくりと3食楽しむ時間が必要な人や、ホテルで過ごす時間も欲しい、という場合は2泊3日の計画ではまわれません。
注意!スニーカーなど歩きやすい靴で
2泊3日で世界遺産「古都奈良の文化財」を8つ全部まわったので、足が「なんでいつも歩かないくせに3日間もこき使うんだよ!」と悲鳴を上げました。絶対にスニーカーなど歩きやすい靴で行きましょう。
「ふふ奈良」や「奈良ホテル」に泊まりたいから、ちょっといい靴で行きたい、という人は別に持って行って、ホテル内で楽しんでください。
移動距離が短くても、神社仏閣内の敷地は想像以上に広大。敷地内を巡るだけで1キロ超は当たり前な上に、奈良の場合はどこまでが敷地なんだ?と立ち尽くす世界遺産もあります。さらに駅から貴重な遺構までの距離が中途半端に遠い…。そう「歩けると言えば、歩ける、でも決して近くはない」という感覚です。
「丁度ダイエット考えてたんだー」という方には世界遺産「古都奈良の文化財」巡りは最高。
ただ、無理は禁物。せっかくの旅行を中断することはありません。
平城宮跡歴史公園は滞在時間に個人差が出る
平城宮跡歴史公園は全て近年復元されたため「巨大ジオラマっぽい」と称する人も。朱雀門だけ見て終わり、という人も多い施設です。法隆寺や東大寺のように、世界一古い木造建築、日本一巨大な仏像というものはありません。ただ、この地に平城京があったからこそ、世界に誇れる神社仏閣が残った、というのは紛れもない事実。
あまり歴史に興味がなければ、少ない滞在時間で良い…とは思います。また、考古学や奈良の歴史に傾倒している人は、もっと見たい、全ての資料に目を通したい、という人もいるでしょう。歴史好きは敷地内の建物をレンタルサイクルで3時間は時間を確保してみてください。
キャリーケースで世界遺産を傷つけないで
世界遺産を巡っていてかなり気になったのが、キャリーケースを持ったまま観光している人たち。特に薬師寺や法隆寺などでみかけましたが、貴重な寺院の回廊をゴロゴロ…。
恐らく最終日そのまま電車に乗って帰る、ということなのでしょうが、かなりドキドキしました。一人や二人のそういった行為が積み重なることで、世界遺産が痛んでゆきます。
ホテルに預けるコインロッカーを周到に探しておくなど、時間に余裕を持ったスケジュールを組むか、もしくはリュックやバックパックで移動しましょう。