オーストラリア最大規模の収蔵数を誇る「ニューサウスウェールズ州立美術館」。もともとシドニーでは外せない人気の観光地ですが、日本人建築家SANAAが設計した北館がニューオープンしたことで、さらに注目を集めている話題のスポットです。
今回はそんな見どころ満載のニューサウスウェールズ州立美術館の魅力をたっぷりご紹介します。
目次
オーストラリア最大規模のニューサウスウェールズ州立美術館
ニューサウスウェールズ州立美術館（The Art Gallery of New South Wales / 以下、NSW州立美術館）は、オーストラリア最大の都市シドニーがある、ニューサウスウェールズ州の公立美術館です。
1871年にオープンしてから、特に地元オーストラリア人アーティストや先住民アボリジナルの人々の作品に力を入れており、オーストラリア最大の収蔵数を誇ります。
歴史を感じる荘厳な南本館
南本館（South Building）の外観にはまるでギリシャ神殿のような列柱が並び、オーストラリアという国の歴史が浅い中にも、150年という時代の重みを感じる荘厳さと、堂々とした重厚感を感じます。
入り口に入り、ドーム型天井のロビーを抜けると、その先にはチケットセンターやクローク、ギャラリーショップのあるエントランスコートが広がっています。公立の美術館なので、入場料は無料です。美術館が収蔵する常設コレクションが、いつでも無料で楽しめるのは嬉しいですね。
有料の特別展のチケットは、左手にあるチケットセンターで購入しましょう。人気のある展示だと列ができることもあるので、予めオンラインでの購入がおすすめです。スマホのチケット見せれば、待たずにすぐ入場できます。
エントランスコート脇の吹き抜けにあるトップライトから光が入り、柔らかな光がダイナミックなアボリジナルアートを照らしています。この空間だけでも十分に楽しめるし、もちろんレストランやカフェだけの利用もOKです。
オーストラリア作品など国内最大級の収蔵量
イギリス植民地支配の名残から、創設当初はロンドンを中心に買い付けを行っており、そのため19世紀のイギリス絵画や現代美術の膨大なコレクションを有しています。オーストラリア美術においては世界屈指の収蔵量を誇り、さらにヨーロッパの巨匠たちの作品（ピカソやモネ、ロダンなどの絵画や彫刻）や現代アートも充実しています。
1900年代前半のオーストラリア作品や1900年代以前のヨーロッパ作品が展示されているのは、南館の旧館にあたる部分。アーチ型のエントランスやヘリンボーンの床板、デコラティブな天井など、古き良きクラシカルな雰囲気漂う展示室は、重みのある作品にマッチしています。
エントランスコート北側にあるギャラリーは旧館よりも新しく、白を基調としたモダンですっきりとした空間です。20〜21世紀のオーストラリア人アーティストによる現代アートを中心に、アボリジナルアートが配置されています。
NSW州立美術館は小高い丘からシドニー湾に向かって下る崖に沿って建っているため、エントランスのあるグランドフロアが最上階で、そこから地下に広がっていく空間構成です。B1Fには20世紀の作家とアジアの作品、B2Fには定期的に開催される特別展用のギャラリーがあります。
美術鑑賞の合間に訪れたいレストランとカフェがあるのは、エントランスコートのあるグランドフロアと、一つ階を下りたB1F。詳細はまた後程ご紹介します。
シティからもアクセス抜群の立地
美術館があるのはシドニー王立植物園（ロイヤルボタニックガーデン）のすぐ脇、シティに隣接する大きな公園「ドメイン（The Domain）」の一角です。シティのビルの谷間から緑豊かな公園を抜け、その先に現れる巨大な茶色い神殿のような外観が目印です。
シティからはバスもありますし、徒歩でもアクセス可能です。近くには観光スポットとして人気のセント・メアリー大聖堂やハイドパークもあるので、ロイヤル・ボタニックガーデンなどと絡めて巡るのもおすすめです。
日本人建築家SANAAが設計した話題の北新館
NSW州立美術館で最近特に注目されているのが、2022年12月にオープンしたばかりの北館（North Building）です。
「ザ・シドニー・モダン・プロジェクト（The Sydney Modern Project）」と銘打って、ドメイン周辺一帯とNSW州立美術館拡張工事の計画が、10年もの月日をかけて進められました。シドニー市は総工費に3億4400万ドルもかけた、シドニー・オペラハウス以降最大の肝入りプロジェクトだったそうです。
妹島和世＋西沢立衛らしい軽やかなデザイン
そんな北新館の設計を担ったのが、日本が誇る世界的建築家、妹島和世と西沢立衛率いる建築家ユニット「SANAA」です。
流れるような曲線を多用する有機的なデザインが特徴で、ガラスやアクリルなど透過性のある素材や華奢な鋼材を使った軽やかな建築を得意としています。金沢21世紀美術館やディオール表参道と言えば、ご存知の方も多いかもしれませんね。
ともすると無機質でクールになり過ぎてしまいそうな彼らの建築ですが、柔らかさと温かみのある砂岩の砂壁の壁を使うことで、南本館の外壁との連続性を表現しています。黄色からベージュ、茶色へと徐々に変化していくグラデーションも美しく、それ自体がアートのようです。
地形を生かしたダイナミックな空間構成
北新館も南本館同様、ドメインの丘とウルムル湾の間にある崖の上に建っています。丘から港へ、まるで階段を下りるように下る空間構成です。元ある地形を活かし、周囲の自然や環境に寄り添ってうまく馴染んでいます。
エントランス部分にあるキャノピー（日除けのような屋外にある屋根）の掛かったテラスは、SANAA建築ではお馴染みのデザイン。本館と新館を緩やかに繋ぐバッファ的な役割をしています。
エントランスコートは四方をガラスで覆われているため、建物内にいながらまるで外にいるような雰囲気です。館内の各所には屋外テラスも設けられ、美術鑑賞の合間に自然を感じることができるのも魅力的ですね。
吹き抜けが連続するダイナミックな空間構成は、残念ながら南館では味わうことができません。様々な方向に折り重なるように配置されたフロア構成のおかげで、ギャラリーでアート作品を楽しむと同時に、窓からはウルムル湾の広がる美しい景色も一望できます。
国内最大規模を誇るアボリジナルアート
北新館で特に外せないのが、入り口脇に設置されたアボリジナルアート専門の「イリバナ・ギャラリー（Yiribana Gallery）」です。南館のB3Fの奥にあった少し薄暗いギャラリーが、明るく開放感ある、ダイナミックな展示室にリニューアルオープンしました。
オーストラリア先住民のアボリジナルやトレス海峡諸島民の人々特有のコミュニケーション手段を、アート作品として発掘したのが昔の美術館の副館長さんだったとか。そのため、NSW州立美術館のアボリジナルアート作品の収蔵量は、国内最大だと言われています。
独特な色使いや特徴的なドットペインティング（点描画）はもちろん、彫刻や焼き物、織物や映像作品もあります。広い空間だからこそ、ダイナミックな作品の魅力を存分に堪能でき、その作品の細かい描写まで感じ取れる気がします。是非アボリジナルアートの真髄を体験してみましょう。
草間彌生作品などの現代アートが満載
話題の現代アートが展示されていることでも、注目の北新館。一見意味のわからない難解なものから、思わずクスッと笑ってしまうようなものまで、様々な作品の現代アートが一度に楽しめます。
オーストラリアでも絶大な人気を誇る水玉の女王・草間彌生の連作「Flowers that Bloom in the Cosmos」は、この美術館のためだけに制作されたもの。グランドフロアの外部テラスに置かれた、鮮やかな色合いの彫刻は、クールで無機質な外観に映えます。
2000年以降の現代アートを展示するB1Fの「Making Worlds」では、現在Kimsoojaによる「Archive of mind」が展示中。観客が自分で選んだ粘土で団子を捏ねて、思い思いの場所に置くという参加型のインスタレーションです。
美術館オープン当時からSNSなどでも話題だったこの作品は、実際に自分もアート制作に携わっているようで楽しめました。参加している子供たちだけでなく、大人たちも楽しそう！
本格的なグルメとアートを満喫
美術鑑賞に疲れたら、併設のレストランやカフェでほっと一息つきましょう。シドニーの美術館の中でも、特にNSW州立美術館にあるレストランは、個性的で本格的な料理が楽しめると評判です。
北館にオープンした話題の「MOD. Dining」
まずご紹介するのは、新しく北新館のB1Fにオープンした「モッド・ダイニング（MOD. Dining）」。オーストラリア版ミシュラン2つ星店のシェフが満を辞して北新館にオープンした、モダン・オーストラリアン料理のレストランです。
「2つ星店のシェフの店」と言っても、堅苦しさは全くありません。自然光の降り注ぐ明るく開放的なオープンスペースの中で、カジュアルな軽食からコース料理まで楽しむことができます。
人気ロースター「シングルO」の豆を使用したコーヒーは、カフェ天国オーストラリアを感じる安定の美味しさ。さらにスイーツメニューも充実しているので、カフェタイムの利用も良さそうです。
DATA 所在地：Floor G, North Building, Art Gallery Rd, Sydney NSW 2000, Australia 営業時間：月 - 火 10:00〜16:00 / 水 10:00〜21:00 / 木 - 日 10:00〜16:00 公式サイト：モッド・ダイニング（MOD. Dining）
超有名シェフが手がける「Crafted by Matt Moran」
南館のグランドフロアにある「クラフテッド・バイ・マットモラン（Crafted by Matt Moran）」は、オーストラリアを代表する人気シェフ・マットモラン氏が手掛けたレストラン。
「美術館併設」という括りに入れてしまうのが勿体無いほどの本格的なレストランで、何を隠そう筆者も彼のお店の大ファンです。
ソースや付け合わせには美術館脇にあるガーデンで採れたハーブを使用し、季節ごとの旬な美味しさが楽しめます。素材そのものの味や香りを大切にした彼の料理は、しっかりとボリュームもありつつ繊細な味わいです。
木目を基調にしたナチュラルかつモダンなインテリアも素敵で、店内からの眺望もMOD. Diningに全く負けていません。美術館に居ながらにして、高級店の味わいと雰囲気がじっくり堪能できます。
DATA 所在地：Floor G, South Building, Art Gallery Rd, Sydney NSW 2000, Australia 電話番号：+61-2-9225-1819 営業時間：火 11:30〜16:00 / 水 11:30〜16:00 17:00〜22:00 / 木 - 日 11:30〜16:00 公式サイト：クラフテッド・バイ・マットモラン
眺望抜群のオープンテラスカフェ「The Gallery Cafe」
最後にご紹介するのは、南館のB1Fにあるオープンエアのテラスがある「ザ・ギャラリー・カフェ（The Gallery Cafe）」。レストラン要素の強い上記の2店舗よりも、こちらは美術館併設の食堂に近い感じです。
メニューはパイ系やボリュームのあるサンドイッチ系、サラダ系が主流ですが、グルテンフリーやヴィーガンに対応しているメニューがあるのはオーストラリアらしいです。
一番のおすすめは大きな窓の並ぶ明るい店内と、ウルムル湾やポッツポイントの丘を見渡す眺望抜群のテラス席があること。庭園やハーブガーデンに囲まれたテラス席で、シドニー湾を眺めながらランチが楽しめます。天気が良ければ、外のテラス席を死守しましょう
DATA 所在地：Floor B1, South Building, Art Gallery Rd, Sydney NSW 2000, Australia 電話番号：+61-1800-679-274 営業時間：月 - 火 10:00〜16:00 / 水 10:00〜21:00 / 木 - 日 10:00〜16:00 公式サイト：ザ・ギャラリー・カフェ
NSW州立美術館のおすすめイベントやショップ情報
NSW州立美術館には他にもおすすめしたいポイントが！特にイベントはシドニー旅行の日時が重なるようならぜひ参加してみてください。
水曜日の夜はナイトミュージアム
通常午後5:00に閉館してしまうNSW州立美術館ですが、水曜日だけは午後10:00まで開館しているアート・アフター・アワーズ（Art After Hours）というナイトミュージアムを開催中です。
ガイド付きのツアーはもちろん、コンサートやトークショー、ワークショップなど様々なイベントが開催されます。カクテル片手にアート鑑賞、なんて優雅な体験や、普段はランチ後に閉店してしまうレストランでディナーをしたり、一味違った美術館体験はいかがでしょうか？
DATA 日時：毎週水曜日 17:00〜22:00 公式サイト：アート・アフター・アワーズ
無料の日本語ガイドツアー
毎週金曜日の午前11時からは南本館で、毎週日曜日の午後1時からは北新館で、各館の見どころを日本人ガイドの方と巡る無料ツアーが開催されています。美術館の歴史や建築、作品の時代背景や収蔵コレクションの裏話などを伺うことができる、約45分のツアーです。
集合場所に直接行くだけで、特に予約は必要ありません。その後の美術鑑賞がより楽しめる内容なので、まずツアーに参加してから美術館巡りをするというルートもおすすめです。
DATA 南館日本語ツアー（毎週金曜日11:00〜） 北館日本語ツアー（毎週日曜日13:00〜）
充実のミュージアムショップも必見
美術館に訪れる際、ミュージアムショプを覗くのも楽しみの一つですよね。個性豊かなアートグッズが並ぶNSW州立美術館のミュージアムショップは、南本館と北新館のグランドフロアに位置しています。
展示されているコレクションのポスターやポストカード、ノートなどの定番アートグッズから、スタイリッシュなバッグやアクセサリー、オーストラリアやシドニーに関する写真集まで充実のラインナップです。美術館訪問の記念に持ち帰るのもいいですし、ただ見ているだけでも楽しめます。
シドニーで話題のニューオープンスポット
シティからも徒歩圏内の抜群のロケーションで、近場に観光スポットが点在する好立地にあるNSW州立美術館。観光の合間にふらりと立ち寄ってもいいですし、雨の日はここで1日ゆっくり過ごすのもおすすめです。
歴史的かつ荘厳な雰囲気を持つ南館と、開放的で洗練された雰囲気を持つ北館で、アートを鑑賞しながら、海を見渡す絶景や絶品のグルメまで、楽しみ尽くしましょう。
DATA 所在地：Art Gallery Rd, Sydney NSW 2000, Australia 電話番号：+61-1800-679-278 営業時間：月 - 火 10:00〜17:00 / 水 10:00〜22:00 / 木 - 日 10:00〜17:00 公式サイト：ニューサウスウェールズ州立美術館
