シドニーで最も人気のあるボンダイビーチ周辺で行われる「スカルプチャー・バイ・ザ・シー(Sculpture by the Sea)」は、海岸線沿いの遊歩道に100体以上の彫刻が並ぶ絶景アートイベント。気候も暖かくなり海風が気持ち良くなり始める初夏(10月末頃から)に、毎年開催されます。
2019年以降、新型コロナウイルスの影響で延期していましたが、2022年にいよいよ復活することになりました。是非3年ぶりのスカルプチャー・バイ・ザ・シーを体験しに、ボンダイビーチに向かいましょう!
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シドニーを代表する夏イベント「スカルプチャー・バイ・ザ・シー」
1997年に始まった「スカルプチャー・バイ・ザ・シー(Sculpture by the Sea)」は、その名の通り、海沿いにスカルプチャー(彫刻)が並ぶ世界最大の屋外アート展です。入場料は無料で、毎年45万人以上の来場者が訪れる、シドニーでも有数のビッグイベントでもあるのです。
大波が打ち付ける断崖絶壁と、その向こうに広がる壮大な太平洋、そんなダイナミックなロケーションで世界各国の彫刻家による作品が鑑賞できます。シティから車でわずか20分の距離で、爽やかな海風に吹かれながら自然とアートが楽しめるのは、都会と自然が共存しているシドニーならではです。
毎年10月末から11月初旬まで約3週間開催されるこのイベント。残念ながら新型コロナウイルスの影響で2019年以降は開催が見送られていましたが、2022年10月21日(金)〜11月7日(月)に、3年ぶりに開催されることが発表されました!毎年盛り上がっていたこのイベントも、例年以上の盛り上がりを見せるのは間違いありません。
ボンダイなどの人気ビーチを巡るコースタルウォーク
スカルプチャー・バイ・ザ・シーは、シドニー有数の人気ビーチ「ボンダイ」から「ブロンテ(Bronte)」までを繋ぐ「ボンダイ・トゥ・ブロンテ・コースタル・ウォーク(Bondi to Bronte Coastal Walk)」という遊歩道の一部で行われます。途中にあるタマラマビーチ(Tamarama Beach)まで、約2kmのアート散歩です。
DATA ボンダイ・トゥ・ブロンテ・コースタル・ウォーク 所在地:1 Notts Ave, Bondi Beach NSW 2026, Australia
ここからはスカルプチャー・バイ・ザ・シーの見所やコースについてご紹介します。
スタートはボンダイ・アイスバーグス
彫刻が展示されるボンダイ・トゥ・ブロンテ・コースタル・ウォークは、ボンダイビーチの南端からスタートします。イベント期間中は、遊歩道に向かう道の途中から既にすごい賑わいです。
会員制プール「ボンダイ・アイスバーグス・クラブ」脇やルート内各所にインフォメーションセンターがあり、イベントガイドブックの購入も可能です。ガイドブック片手に作者や作品のテーマをチェックしつつ鑑賞するのもいいし、何も考えずにただアートを楽しむのもいいですね。ここから約2kmのアートの旅がスタートです!
DATA ボンダイ・アイスバーグス・クラブ 所在地:1 Notts Ave, Bondi Beach NSW 2026 電話番号:+61-2-9130-4804 営業時間:月 - 金 6:00~19:00 / 土 - 日 6:30~19:00(木曜日はプール清掃のため休業) 公式ホームページ:ボンダイ・アイスバーグス・クラブ
遊歩道はビーチサンダルで歩いている人もいるほど、きちんと舗装されていて歩きやすいです。スニーカーでなくても大丈夫ですが、かなり急な階段が途中に数箇所ありますし、足場の悪い岩場に設置されている作品もあるので、筆者個人的には滑りにくく歩きやすい靴をおすすめします。
中間地点のマークス・パーク
「マークス・パーク(Marks Park)」という高台にある公園には、広大な敷地を生かして、湾曲する遊歩道や崖の上とは異なった、大きさのあるダイナミックな作品が数多く飾られています。
インフォメーションセンターやトイレ、レストランやカフェ、さらに出展しているアーティストの作品が実際に購入できるギャラリーもあります。鑑賞ルートのほぼ中央地点にある、休憩スポットといった感じです。
DATA マークス・パーク 所在地:Marks Lane/ Kenneth St Bondi, Fletcher St, Tamarama NSW 2026, Australia
公園の東端にある岬「マッケンジーズ・ポイント展望台(Mackenzie’s Point lookout)」は、全方向に広がる眺望を意識して、ダイナミックで印象的な作品が飾られているスポット。丘の上から見下げたり、実際に近寄ったり、岬の突端から振り向いたり、さまざまな角度から彫刻が楽しめます。
DATA マッケンジーズ・ポイント展望台 所在地:Mackenzie’s Point lookout, Tamarama NSW 2026, Australia
ゴールはお隣のタマラマビーチ
波が高くサーファーに人気のタマラマビーチまでは、湾曲したコースタルウォークが続きます。遊歩道には手摺が設置され基本的には岩場には出られませんが、そこは日本よりも規制が少々緩めなオーストラリア。簡単に遊歩道からルートを外れ、断崖絶壁に展示された彫刻に直接触れられる距離まで近寄ることもできます。
崖の向こうに広がる海のダイナミックさを活用した作品が多く、作品と自然の背景との一体感が楽しめるエリアがここです。ただそれだけ足場の悪い場所もたくさんあるので、そこはあくまで自己責任。くれぐれも足元に注意しながら楽しみましょう。
切り立った岩場と海岸線から高さのある強い波が押し寄せることで、地元サーファーにも大人気のタマラマビーチ。幅100m弱の狭く奥行きのある砂浜にも、さまざまな作品が展示されます。崖の上からも海底が見えるほど透明度が高いエメラルドグリーンの海は、ボンダイとはまた違った美しさです。
その波の高さが窺えるエピソードが一つ。2016年のイベントでは、高すぎる波によって作品の一部が一晩で流されてしまったというハプニングがありました。筆者が訪れたのは、作品が流されるちょうど前日。もう砂浜の半分近くが波に侵食されています。ただ普段はそんな心配もなく鑑賞できますので、ご安心を!
DATA タマラマ・ビーチ 所在地:Tamarama Beach, Tamarama NSW 2026, Australia
100体以上の並ぶ個性豊かな彫刻作品
スカルプチャー・バイ・ザ・シーでは、海沿いの2kmの遊歩道沿いに、世界各国の彫刻家による約100体以上の彫刻が展示されています。日本人彫刻家の方の作品もあり、日本人の作品を見付けると少し誇らしい気持ちになるのは私だけでしょうか。
ここでは筆者が個人的に印象に残っている、スカルプチャー・バイ・ザ・シーならではの過去の作品をご紹介します。
アウトドアならではのダイナミックな作品
ダイナミックな作品が数多く展示されている、中間地点のマークス・パーク。2018年に展示されていた、中国人アーティストWei Wang氏による「Walking」は、何と高さ5mもある巨大な作品です。ジブリの巨神兵のような大きさの彫刻と、小さな女の子とのコントラストが美しいですね。
岩や崖など地形を活かした作品
海沿いの独特な地形や岩場の形状を生かした作品も多く見られます。切り立った岩場に2019年に展示されたのは、ブラジル人アーティストGeraldo Zamproni氏の「More than it seems」。実は崖の下から貫通している、地上に突き出た赤鉛筆は、まさに「見た目以上(More than it seems)」です。
背景(海)を活かした作品
タマラマビーチが見下ろせる崖の上の広いスペースには、背景の海に透過する作品が展示されています。2019年に展示されたウクライナ人アーティストEgor Zigura氏の作品「Kore that Awakening」は、風化したような人型の彫刻の向こうに、朝日に照らされながらパドリングするサーファーが透けて見え、その美しさが倍増しています。
思わずクスッと笑ってしまうシュールな作品
スカルプチャー・バイ・ザ・シーの醍醐味とも言えるのが、思わずクスッと笑ってしまうようなシュールな作品の数々。
2018年にマッケンジーズ・ポイント展望台に展示された、中国人アーティストMu Boyan氏による「Bank」は、恐らくその年のSNSで一番紹介された目玉作品です。ボンダイの海を背に置かれた5.2mの大仏のような彫刻は、銅像なのにプニプニとした柔らかさが感じられる、絶妙なリアル感があります。
2017年から毎年出展しているスロバキア人アーティストViktor Freso氏の作品は、男の子の絶妙な表情が堪りません。彫刻やアートに詳しくなくても、このようなシュールな作品もたくさんあるので、「あれ面白い!」「私はこれが好きかな」なんて言いながら気軽に楽しめます。
ダイナミックな絶景とアートで五感を刺激
いかがですか?彫刻に興味がなくても、スカルプチャー・バイ・ザ・シーに行ってみたくなりませんか?アートに詳しくなくても、何の問題もありません。壮大かつダイナミックな景色と、それに溶け込むように配置されたアートを見ながらお散歩するだけでも、シドニーでしかできない唯一無二の体験になるはずです。
しかも屋外の無料イベントなので、24時間いつでも好きな時に楽しむことができます。真っ青な空と海を眺め太陽の光を浴びながら鑑賞するのもいいですし、日が昇る前や日没に訪れてオレンジ色に染まる作品を眺めるのも最高です。
さらに10月下旬から11月に掛けての初夏の季節は、筆者激推しのシドニー絶好の観光シーズンです。過ごしやすい気候と美しい花々、気持ちのいい風に吹かれながら、ボンダイの絶景彫刻展でインスピレーションを刺激されましょう!
DATA スカルプチャー・バイ・ザ・シー