まだ国としての歴史は浅いオーストラリアには、イギリスによる入植時代の歴史から英国文化が今も色濃く残っています。オーストラリア人にとって切っても切り離せない存在の「パブ」も、実は英国文化の象徴の一つ。
街の至る所にあるパブにフラリと立ち寄って楽しめるようになったら、一人前のオージー(オーストラリア)の証?今回は旅行者のあなたでも、オーストラリアのパブをスマートに楽しめる方法を教えます。
目次
オーストラリアのパブとは?
イギリス人による入植という歴史から、今でもイギリスの文化が色濃く残るオーストラリア。英国文化を感じるものの一つとして挙げられるのが、オーストラリア全土にある「パブ(Pub)」の存在です。元々「公共の家(Public House)」の略であるPub(パブ)は、その名の通りまさに「大人の社交場」。どんな小さな街にも必ずパブがあり、地域住民に親しまれています。
ただビールを提供するだけでなく、店内にモニターやスポーツベット(賭博)の窓口のあるスポーツバー的な店や、上階に宿泊施設を完備したホテル的な店、レストラン顔負けの料理を提供する店など、その個性も様々です。
そんな地元住民の憩いの場であるパブにフラリと訪れて、スマートにパブを満喫できるようになれば、もうあなたはローカルの仲間入りです。オーストラリアに訪れたら是非、街中に点在する個性的なパブに訪れてみましょう。
パブでビールをオーダーする方法
まずパブに訪れたら、何は無くともまずはビール。パブでの所作は、ビールに始まりビールに終わります。ここでは基本のパブでのオーダーからお会計までの流れをご紹介します。
1. まずは席を確保する
基本的にパブは自分で席を取って、カウンターで自分でオーダーするシステムを取っています。入口を入ったら店内を見渡し、まずは座れそうな席を確保しましょう。「Reserve(予約)」の札が置いてさえいなければ、好きな席に座って構いません。
もし既に満席の場合は、立ち飲みしながら空席を待ちます。空席がたくさんあり席取りの必要がなければ、気にせずそのままカウンターに行ってオーダーしましょう。
ここで注意したいのが、席に決して貴重品は置かないということ。
比較的治安のいいオーストラリアではありますが、日本とは違います。置き引きに合う可能性もあるので、くれぐれもご注意ください。席を離れる際は、帽子やマフラーなど、例え取られても構わないと思うものを目印に置きましょう。
2. カウンターに行ってオーダー
パブではドリンクもフードも基本的にカウンターでオーダーします。タップ(専用サーバー)の前には必ず店員さんがスタンバイしているので、まずはビールからオーダーしてみましょう。
3. ビールの種類を決める
置いてあるビールの種類はパブによって異なりますが、大抵のパブは大手メーカーのビールから個性的なクラフトビールまで、約10種類程度のビールを用意しています。ボトルも入れればそれ以上の種類があることも。
どんなビールをオーダーしていいかわからない場合は、素直に店員さんにその旨を伝えましょう。
忙しい時間帯でなければ、様々なビールの試飲をさせてくれる場合もあります。店員さんのアドバイスを聞いて、気になるものがあればどんどんトライできるのもパブならではです。
店員さんとどうやってコミュニケーションを取れば良いかわからない場合は、下記のような英語フレーズを参考にしてみしょう。パブにはフレンドリーな店員さんが多いので、話も弾んでローカル気分で楽しめるはずです。
- “What do you have on tap?(どんなビールがありますか?)”
- “Do you have anything light/heavy on tap?(何か軽め/重めのビールはありますか?)”
- “I’d prefer something fruity/dry/hoppy.(フルーティな/ドライな/ホップ強めで苦味のあるものがいいです。)”
- “Do you have anything local?(何かローカルのビールはありますか?)”
というフレーズを使って、そのエリアのクラフトビールに挑戦するのも面白いですね。
4. グラスのサイズを決める
ビールの銘柄が決まったら、次はグラスのサイズを決めます。ただここで少々厄介なのが、広大なオーストラリアならではなのか、何故か地域ごとでグラスのサイズの名称が微妙に違うのです。州によって若干名称が違う場合があるので、ご注意を。
- パイント(Pint) – 570ml/20 fl oz 南オーストラリア州ではインペリアルパイント(Imperial Pint)
- ラージ(Large) – 425ml/15 fl oz ほぼ全域でスクーナー(Schooner)、南オーストラリア州では何故かパイント(Pint)
- スモール(Small) – 285ml/12 fl oz シドニーではミディ(middy)、メルボルンやブリスベンではポット(Pot)、南オーストラリア州ではスクーナー(Schooner)
こうやって見ていると、アデレードのある南オーストラリア州が少々トリッキーな印象ですが、大きく分けてパイント、ラージ、スモールの3つさえ覚えておけば問題ないでしょう。カウンターで悩んでいると店員さんがグラスを差し出して教えてもくれますが、喉乾いていたら取り敢えずローカルっぽくパイントをオーダーしておけば問題なしです!
因みに予めオーダーするものが決まっていたら、下記の一言でOKです。
- “I’ll have a pint of ●●, please!(●●を1パイントください!)”
5. カウンターで支払い
オーダーするとすぐ目の前で店員さんにグラスに注がれ、そのままカウンターから手渡しで飲み物が受け取れます。お会計は飲み物を用意してくれた店員さんがそのまま担当することがほとんどで、カード決済の場合は精算機にカードをかざすか(ほとんどの場合はこちら)、現金を渡してお支払い終了です。
お疲れ様でした。それでは席に戻って、美味しいビールを楽しみましょう!
オーストラリアンワインやカクテルも充実
ビールはもちろんのこと、ワインやカクテルのメニューが充実しているお店もあります。パブによっては数百種類ものワインを用意していたり、手の込んだカクテルを提供している場合もあるので、ビールが苦手な人やワイン好きの人は、この機会にオーストラリアンワインにトライしてみるのもいいですね。
パブに訪れたらビールに合うパブご飯を
パブに訪れたら外せないのが、ボリュームたっぷりの「パブ飯」。お酒を楽しむ場なので、どのメニューもお酒に合いそうなものばかりです。ここではオーストラリアのパブで食べておきたい、パブ飯をご紹介します。
因みにフードをオーダーするのも、ビールをオーダーしたカウンターで行います。カウンターにはフードメニューが置いてあるので、そこで気になるものをオーダーして支払いを済ませ、番号札をもらい(もしくはテーブル番号を伝え)、料理が運ばれてくるのを待ちます。
パブに訪れたら、ビールと一緒にパブ飯をいただきましょう。
どのパブにもあるド定番「オージービーフのステーキ」
「パブ飯」と言ってまず外せないのが、「オージービーフのステーキ」でしょう。肉汁たっぷりのジューシーなステーキは、苦味とキレのあるビールと最強のコンビネーションです。筆者自身も「ちょっとステーキが食べたいな」と思った時に行く場所がパブなので、「オーストラリアでオージービーフを食べたい!」と思う方にまずオススメなのが、パブのステーキです。
やっぱりビールには揚げ物「フィッシュ&チップス」
イギリスの伝統料理でもある「フィッシュ&チップス」も、定番パブ飯の一つ。カリカリの衣とフワフワの白身、ホクホクのポテトフライをビールで一気に流し込むのは、まさに至福のひと時です。揚げ物の油と旨味で口の中が満たされたら、ビールを飲んで一旦リフレッシュ。そしてまた揚げ物を頬張る‥‥という無限ループに突入します。ビールを混ぜた「ビア・バター」という衣で揚げられたフィッシュ&チップスは、もちろんビールとの相性も抜群です。
オーストラリアの国民食「ミートパイ」
オーストラリアを代表する国民食で、B級グルメの代表格「ミートパイ」も、どのパブでもお目に書かれる代表的なパブ飯の一つ。ベーカリーのものとは違い、付け合わせにはマッシュポテトやサラダも付いて、上からグレービーソースがかかった本格派です。パイに閉じ込められたコクのあるビーフシチューは、ダーク系のビールによく合います。特にランチスポットとしてパブに訪れる際にも、おすすめのメニューです。
他にも定番料理だけでなくスイーツも!
日本ではあまり馴染みがない「チキン・パルミジャーナ」も定番のパブ飯の一つで、「チキン・パーミー」と呼ばれオーストラリアでは親しまれています。トマトソースとチーズがのったチキンカツの酸味と塩気が、こちらもビールにベストマッチです。
またお酒以外のメニューが意外にも充実しているのが、パブの面白いところ。「酒飲みに甘党はいない」という話もありますが、筆者に関して言えばお酒を飲むと更に甘いものが食べたくなったりします。そんな時に嬉しいのが、パブにあるスイーツメニュー。ケーキやパイだけでなく、お酒の締めにリキュールをかけたアフォガードなんて最高です。
シドニーのおすすめパブ
オーストラリアでは、シティだけでなく、車を数時間走らせた田舎街にも必ずあるほど、地域になくてはならない存在のパブ。中でもシドニーのあるNSW州には国内で最も多くのパブが密集していると言われていて、何とその数も2000店舗以上に及ぶそう。
そんな数多くあるパブの中でも、今回は「シドニーで訪れておきたい」筆者オススメのパブをほんの一部ですがご紹介します。
オーストラリア最古のパブ「ロード・ネルソン・ブルワリー」
「オーストラリア最古のパブ」として数々のお店が名乗りをあげている中で、歴史あるパブとして有名な「ロード・ネルソン・ブルワリー・ホテル(Lord Nelson Brewery Hotel)」。1841年創業で年代的には実は最古ではありませんが、継続してライセンスを保持しながら営業しているという点で「最も歴史ある最古のパブ」と言われています。
場所はシドニーの歴史地区「ロックス(The Rocks)」の丘の上。創業当時の面影を残してリノベーションされた白い砂岩ブロックの外壁には、「HOTEL」の文字が。これは昔アルコール規制が厳しかった頃、ホテル以外は深夜に営業できなかったということの名残です。実際に上階には宿泊施設もあるので、宿泊しながらパブを楽しむというプランもいいですね。
DATA ロードネルソンブリュワリーホテル 所在地:19 Kent St, The Rocks NSW 2000 営業時間:11:00〜23:00 (日のみ12:00〜22:00) 公式サイト:The Lord Nelsom Brewery Hotel
南半球一の繁華街にある「キングスクロス・ホテル」
シドニーCBD(中央ビジネス地区)の東にある、南半球最大の繁華街「キングスクロス(Kings Cross)」。そのアイコンでもある南半球最大のコカコーラのサインの前にあるパブが、「キングスクロス・ホテル(Kings Cross Hotel)」です。
4階建の建物にはイベント会場や劇場もあります。特にオススメなのが、コカコーラ・サインを見渡すテラス席。この適度にチープなネオンサインと開放的なテラス、ビールのコンビネーションが溜まりません。
毎年2月末〜3月に行われるLGBTQIA+のイベント「シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディグラ(Sydney Gay and Lesbian Mardi Gra)」のシーズンには、建物がレインボーに彩られ、イベントに因んで店名が「キングス」から「クイーンズ」になります。様々なイベントも催されていつも以上に盛り上がるので、マルディグラの時期のキングスクロス・ホテルは外せません!
DATA キングスクロス・ホテル 所在地:244-248 William St, Potts Point NSW 2011, Australia 営業時間:月 - 土 10:00〜3:30 / 日 10:00〜0:00 電話番号: +61-2-9331-9900 公式サイト:Kings Cross Hotel
おしゃれタウンにある老舗「クロック・ホテル」
洗練されたショップやレストラン、カフェが軒を連ねる、シドニーきってのおしゃれタウンと言われる「サリーヒルズ(Surry Hills)」。そのほぼ中心に位置し、目抜き通り沿いにあるパブが「クロック・ホテル(The Clock Hotel)」です。その名の通り建物中央には大きな時計台があり、サリーヒルズのアイコンと言われています。
レトロな外観とは裏腹に、通り沿いに連なった長いバルコニーや大きな中庭などもあって、意外にも開放感抜群です。サリーヒルズという場所柄、散策合間のカフェとしての使い方ができるのもロケーションの良さならでは。夜風に吹かれながらバルコニーでビールを飲むのも良し、隣にある公園シャノン・リザーヴ(Shannon Reserve)やサリーヒルズ図書館(Surry Hills Library)を眺めながらパブランチするのも最高に気持ちいいです。
DATA クロック・ホテル 所在地:470 Crown St, Surry Hills NSW 2010, Australia 営業時間:月 - 日 12:00〜0:00 電話番号: +61-2-9331-5333 公式サイト:The Clock Hotel
クラフトビールを発掘するなら「パンプハウス」
近年開発が進んでいるエリア「Darling Square(ダーリング・スクエア)」にある「パンプハウス(Pump House)」は、現在は歴史遺産にも指定されている元水力発電のポンプ場の建物を使用したパブ。高い天井の広々とした店内やアーチ型の窓など、ポンプ場の面影を残しつつ、古き良きパブの佇まいを感じます。
このパブに訪れたら外せないのが、バラエティ豊かなクラフトビールの数々。パンプハウス創業以来のオリジナルレシピで作られたハウスビールをはじめ、季節ごとに入れ替わる各地のクラフトビールも要チェックです。実は筆者もここでお気に入りの銘柄に出会えたので、是非クラフトビール発掘に訪れるのはいかがでしょうか?
DATA パンプハウス 所在地:17 Little Pier St, Darling Harbour NSW 2000, Australia 営業時間:月 - 木 12:00〜22:30 / 金 - 土 12:00〜23:00 / 日 11:00〜21:00 電話番号: +61-2-8217-4100 公式サイト:Pumphouse Sydney
オペラハウスを望む超絶景「スクワイアズ・ランディング」
オーストラリアで初めてホップの栽培に成功し、ビール醸造所を作った人物の名を冠したビールブランド「「ジェームス・スクワイア(James Squire)」。既にクラフトビールとは呼べないほど大手ブランドですが、その醸造所兼パブ「スクワイアズ・ランディング(Squire’s Landing)」がシドニーの海の玄関口サーキュラーキー(Circular Quay)にあります。
お店があるのは、大型客船が入港する「外国旅客ターミナル(Overseas Passengers Terminal)」の1〜2階。ハーバーブリッジの麓、対岸にはオペラハウス、すぐ裏手にはオーストラリア開拓の地「The Rocks(ロックス)」が広がっているという抜群のロケーションにあります。観光の合間にフラリと立ち寄れてカジュアルにクラフトビールが飲め、さらに超絶景も楽しめてしまう、シドニーを満喫できるお店です。
DATA スクワイアズ・ランディング 所在地:Northern end of the Overseas Passenger Terminal, Circular Quay W, The Rocks NSW 2000, Australia 営業時間:月 - 火 12:00〜0:00 / 土 11:00〜1:00 / 日 11:00〜22:00 電話番号: +61-2-8014-5663 公式サイト:The Squire's Landing
オーストラリアでパブ文化を楽しもう!
平日のランチ時はもちろん、強者になると朝の明るい内からビールグラスを傾ける人もいるオーストラリアのパブ。元々はイギリスから継承されたパブ文化ではありますが、今ではしっかりとオーストラリアの文化として根付いています。是非そんなパブに訪れて美味しいビールを飲みながら、オージー達と穏やかでのんびりした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?