たびハピ

ワクチンパスポートの現状・イタリアは全労働者が義務可で混乱


日本でも11月1日から導入される予定のワクチンパスポート(ワクチン・検査パッケージ)。こちらイタリアでは5月から導入されており、イタリアのワクチンパスポートである「グリーンパス」を提示しなければならない場面がどんどん増えてきています。

その上なんと、10月15日からは全労働者のワクチンパスポート保持が義務に!

これからワクチンパスポートが導入される日本の皆さんに向けて、イタリア在住ライターの私が、イタリアの現状を紹介します。ワクチンパスポートを巡って、なかなかの混乱状態が続いていますよ~!

イタリアのワクチンパスポート(グリーンパス)とは

ワクチンパスポートはイタリアでは「グリーンパス」と呼ばれています。これはイタリア政府が発行するワクチン接種状況などを記録したデジタル証明書のことです。

グリーンパス発行の条件と有効期限

イタリアでは2回目の接種終了後だけではなく、ワクチン1回目接種の15日後にも「ワクチン2回目接種時まで有効なグリーンパス」が発行されます。しかし、行動が制限されます。例えば、以下の場合は2回接種完了のグリーンパスが必要。※ワクチン1回のみでは許可されない

私の場合、2回目のワクチン接種の翌日にはグリーンパスにアクセスするためのリンクがSMSで届きました。私が2回目のワクチンを接種した7月半ばには紙版のグリーンパスしかありませんでしたが、現在はアプリでの提示も可能になっています。

紙版とアプリ版のグリーンパス

2021年9月現在、グリーンパスは紙版とアプリ版の2つ。アプリ版は便利なのですが、アプリ版が出た最初の頃、専用の機械でQRコードが読み込めないトラブルが多発したため、私の周りでは未だに出かける時にはどちらも持っていくという人が多いです。

紙版は印刷するだけで簡単なのですが、ずっと持っているとボロボロになってくるのが欠点。アプリ版は「IO」または「Immuni」というアプリから電子グリーンパスを提示できます(自分のスマホのギャラリーに画像として保存も可能)。

紙版グリーンパス。A4用紙を4つ折りにして携帯しています。
アプリ「IO」から画像として保存した、私のワクチンパスポート(グリーンパス)

ワクチン接種開始から2021年9月現在までの状況

イタリアでワクチン接種が開始されたのは、2020年12月。最初は高齢者や医療従事者から始まり、そこから徐々に若い年代も受けられるように。40代の私がワクチンを接種したのは、1回目6月10日、2回目7月15日でした。

私のワクチン接種体験談については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

6月~8月はイタリア人にとって待ちに待ったバカンスシーズン。この時期はイタリア全土の行動制限が解除され、グリーンパスがあればヨーロッパ内の移動も可能になりました。が、しかし!バカンスで浮かれまくったイタリア人が多く、7月後半からまた新規感染者が増加傾向に…(涙)

これを受け、イタリア政府は8月6日から下記の施設に入る場合、12歳以上の市民に対しワクチンパスポートの提示を義務化。ただしワクチン接種は1回でも可能です。

スーパーマーケットや商店など買い物で使う場所以外の屋内と、屋外でも人が集まる場所では必ずグリーンパスの提示が必要になりました。

グリーンパスの提示が必要な場所では、スタッフが入口でQRコードをチェック!

それまでワクチン接種を拒否していた人たちの中でも、この時期に慌ててワクチン接種の予約を入れた人もたくさんいたようです。「レストランにも行けないなんて…」と嘆きながら、泣く泣くワクチンの予約を入れていた人が私の周りにも何人かいました。

偽造グリーンパス販売者が検挙!

グリーンパスのチェックは専用アプリでQRコードをピッと読むだけなので、その人が本当に本人なのかは分かりません。ワクチンパスポート(グリーンパス)と一緒に身分証明書をチェックするべきか、と議論にもなったのですが、イタリア内務省が「パスの要求は義務だが、身分証明書の要求は義務ではない」と発表したため、法の抜け穴を狙って新たなビジネスを考え出した人たちがいました。

それが、「偽造グリーンパスの販売」!プラットフォームや通信アプリ上で、偽造グリーンパスを1枚150~500ユーロで販売していた4人(そのうち2人は未成年者)が検挙されるなど、グリーンパス絡みの犯罪のニュースも世間を騒がせました。どこにでも悪い事を考える人はいるものですね…(涙)

2021年9月から学校関係者へ義務化が拡大

イタリアの学校は9月に始まります。というわけで、9月1日からは大学生や学校関係者へのグリーンパス義務化が始まりました。グリーンパスが必要な学校関係者は以下の通り。

教師や用務員、清掃員などの学校職員はもちろん、早退などで子どもを迎えに校内に入る親もグリーンパスの提示が必要になります。幼稚園児を教室前まで送っていく場合も同じ。幼稚園児の子どもがいる友人は、毎朝幼稚園に入る時にグリーンパスを提示しています。

旅行再開時も必要かも?鉄道のグリーンパス提示について

バスや列車に乗る場合もグリーンパスの提示が必要になりました。これは、日本からの旅行が可能になった時に必要になる可能性が高いので、把握しておきましょう。

※地域の列車やバス、メトロなどに乗る場合は必要ありません

どんどん厳しくなるグリーンパスの義務化。できるだけ多くの人にワクチンを接種させたいイタリア政府の本気度が見えるようです。でも、どんどん義務化の範囲が変わっていくのでややこしい!今はどういう状況なのか、常にアンテナを張って情報収集をしておく必要があります。

2021年9月末現在のワクチン接種状況と新規感染者数

この記事を書いている本日(2021年9月26日)の時点でのイタリアのワクチン接種状況はこちら。

2021年9月20日から3回目のワクチン接種が開始

8月6日からの義務化拡大によりワクチン接種者がかなり増え、現在は(12歳以上の)人口の約78%が2回のワクチン接種を完了しています。そしてイタリアでは、9月20日より3回目のワクチン接種が始まりました。イタリア政府の発表による、接種対象者と予定時期は以下の通り。ワクチンはファイザーまたはモデルナ社製です。

予定時期対象者
9月20日~がん患者、多発性硬化症患者、臓器移植手術を受けた患者など免疫抑制患者
12月~年末80歳代以上の高齢者、高齢者施設に入居中の人
1月~2月医療従事者

本日(2021年9月26日)の時点で、3回目のワクチン接種を終了したのは45,017人(対象者の4.83%)。1回目、2回目のワクチン接種と並行し、3回目のワクチン接種もこれからどんどん進んでいきそうです。

参照サイト
corriere.it(イタリア語)
イタリア政府のサイト(イタリア語)

2021年10月15日から全労働者へのグリーンパス義務化

ついに10月15日からは全労働者のグリーンパスの保持が義務化されます。これはヨーロッパ内でも初めての厳しい措置。

グリーンパスを持っていない労働者は、解雇はされませんが休職扱い(職場に入ることができません)となりその間の給料は支払われません。グリーンパスを保持せずに働いた場合、最高1500ユーロの罰金刑の対象に。労働者だけではなく、グリーンパスの確認義務がある雇用主にも最高1000ユーロの罰金が科せられます。き、厳しい~!

義務化に反対派のデモが各地で…

9月の義務化拡大の前にも、ミラノなどイタリア各地でワクチン反対派がデモを行ったと報じられていたのですが、9月末現在も10月15日からの義務化拡大に反対する人たちがデモを行っているようです。

本日(2021年9月26日)もローマ、ミラノ、トリエステなどの都市で「No Green Pass(ノー・グリーン・パス)」のデモが行われました。ボローニャのように、毎週土曜日に定期的にデモが行われている都市もあります。

イタリア人に聞いてみた!全労働者への義務化についての意見は?

ヨーロッパ内でも初めての厳しい措置に踏み切ったイタリア。イタリア人たちはどう考えているの?と思ったので、私の周りのイタリア人たちに意見を聞いてみました。

今回、意見を聞いた人の多くが「賛成派」または「おおむね賛成派」。出た意見はこんな感じでした。

とは言え、「ここまで強制するのはやり過ぎでは?」と思っている人も。確かに、日本人にとってはちょっとびっくりするような厳しい措置ですよね。
それでも「グリーンパスがないと仕事ができない」となると、仕方なくワクチン接種に踏み切る人がこれからさらに増えそうです。

日本のワクチンパスポート導入がうまくいきますように!

以上、イタリアのワクチンパスポート(グリーンパス)の現状を現地からお届けしました。

早くからグリーンパスを導入し、どんどん義務化を推し進めているイタリア。ワクチン接種者が増えることで、新型コロナウイルスを封じ込めることができることを祈るばかりです。早くみんなが安心して暮らせるようになりますように!

そして日本のワクチンパスポート導入がうまくいきますように