関東最後の秘湯と呼ばれる栃木県の奥鬼怒温泉郷。ここにはマイカーではアクセスできない4軒の一軒宿があり、そのうち1軒が今回ご紹介する「八丁の湯」。
カントリー調の洒落たログハウスに泊まり、野趣あふれる露天風呂で湯あみ。そんな大自然に囲まれた八丁の湯を体験してきました。
目次
奥鬼怒温泉郷ってどんな場所?
大型観光ホテル立ち並ぶ鬼怒川温泉は利根川の支流である鬼怒川沿いにありますが、その鬼怒川を川治温泉、川俣温泉とさかのぼっていくと、その最奥にあるのが奥鬼怒温泉郷です。
そしてこの奥鬼怒温泉郷には「八丁の湯」「加仁湯(かにゆ)」「日光澤(にっこうざわ)温泉」「手白澤(てしろさわ)温泉」の4軒の一軒宿の秘湯が湯けむりを上げています。
「八丁の湯」にアクセスする場合、もしマイカー利用なら一般車両は8キロほど手前の「女夫渕(めおとぶち)無料駐車場」に車を停めて、お宿の送迎バスに乗せていただくか、およそ1時間半かけて歩いていくしかありません。ちなみに送迎は宿泊者(及び送迎付きの事前予約日帰りプラン)のみ適用となっています。
車の進入が規制されているぶん周囲は大自然そのまま。四季折々に移り変わる景色を楽しみに、あるいは山歩きのベース基地として、不便さを乗り越えて訪れるお客さんが後を絶ちません。
私も今回は車で来て、「女夫渕無料駐車場」から送迎バスに乗せてもらいました。歩くと1時間半掛かるという道のりも、時々車窓の観光案内をしてもらいながら快適に過ごしていればあっという間。約30分弱で目的の「八丁の湯」に到着です。
八丁の湯にチェックイン!
雪をかぶったログハウスって温かみを感じるとともにちょっとお洒落な雰囲気がありますよね。山の中なのにどこかスタイリッシュな雰囲気なのはそのせいでしょうか。到着して、まずはランチを食べるところから紹介しましょう。
八丁の湯のチェックイン時間と過ごし方
チェックインは15時からですが、早めに到着してもすぐにお風呂に入れてもらえるのはこのお宿の嬉しいポイント。今回は女夫渕無料駐車場を10時30分に出発する送迎バスに乗車したので、かなり早めの11時頃には「八丁の湯」に到着できました。
これからチェックイン時間まで、ランチを食べたり入浴したりしてゆっくり過ごしたいと思います。
ランチはヒマーリカフェで
「八丁の湯」にはヒマーリカフェというスペースがあります。ランチが食べられて、お酒も飲めて、お風呂上がりの休憩や談話室としても使えます。
冬は暖炉に火が入り、ぽかぽかとしてとても居心地の良い空間に。ランチメニューはマルゲリータやキノコのピザ、霧降高原和牛のカレー、けんちんうどんなど。私はカレーを注文してみました。
とてもスパイシーながら、どこか懐かしい味わいのするカレー。暖炉でパチパチとはぜる火を見つめながら、ゆったりと過ごすランチタイム。それはまさにせわしない日常を忘れさせてくれる時間。
奥鬼怒温泉郷「八丁の湯」の温泉を自然に囲まれたお風呂で堪能!
さて、食後はお待ちかねの温泉へ。「八丁の湯」はお風呂の数が多く、館内だけで湯巡りができるほど。混浴の露天風呂が3つ、女性用露天風呂が1つ、男女別の内湯が1つずつ。女性なら計5カ所と男性より1つ多く入れますね。
混浴が多いので女性にはハードルが高いと思われがちですが、ありがたいことにバスタオル巻きと湯あみ着着用が許されています(水着着用は不可)。もし持参していない場合でも、お部屋に用意されたバスタオルを巻いて入ることもできます。
露天風呂ゾーンの女性用脱衣所には脱水機が設置されているのもポイントで、安心してバスタオルが使えます。
滝見の湯(混浴)
女性用脱衣所から出ると、最初に目に入るのが岩風呂の「滝見の湯」。この段階でスケールの大きさに驚かされます。滝が!滝が!目の前で岩肌を落ちていくんですけど!
「滝見の湯」は少しぬるめで入りやすい温度。ゆで卵のような硫化水素臭がして、白やベージュ、半透明の湯の花が舞っています。
「八丁の湯」の源泉は8本あり、お風呂ごとに使われている源泉や源泉の混ぜ具合が異なります。8本の源泉の成分や温度は少しずつ違いますが泉質はいずれも単純泉。といっても決して特徴が薄いわけではなく、どのお風呂も硫黄を感じる硫化水素臭と、たくさんの湯の花を見ることができてとても楽しいのです。
雪見の湯(混浴)
「滝見の湯」から少し階段を登ると今度は「雪見の湯」があります。雪見風呂の季節に訪れたので、名前の通り素敵な「雪見風呂」になっていました。
こちらは「滝の湯」と比較すると、ちょっと熱めのお湯でにおいも強い。寒い時期にはこのくらい熱いお風呂の方が気持ちいいと感じます。
この「雪見の湯」は昭和4年の開業時からある露天風呂で、「八丁の湯」でも2番目に古いお風呂なのだそう。ちなみに一番古い歴史があるのは、男湯の内湯に使われているお風呂だそうですよ。
石楠花の湯(混浴)
私、実は石楠花の湯に思い出があるのです。「八丁の湯」に泊まったのは今回が初めてでしたが、もう20年以上前に日帰りで来たことがあるのです。
その時に石楠花の湯を見てぜひ入りたいと思ったものの、やはり女性にはなかなか勇気のいる混浴。他に人がいないときを見計らって夫と一緒に急いで入りました。
その後満足して階段を降りると、入れ違いに入っていく男性がいて、後から伺うと女性が入っているからと気を使って待っていてくれたのだそう。
そんな思い出のある「石楠花の湯」ですが、久しぶりに来てみると、やはりロケーションが凄い。高い位置にあるので他の露天風呂が庭のように見下ろせます。滝もすぐ横に!
なお、「八丁の湯」は夜の22:00~23:00に混浴露天風呂の女性専用タイムを設けています。女性専用タイムなら女性もバスタオルや湯あみ着を使わず安心して入浴できるのですが、やはり「八丁の湯」ではこの迫力ある素晴らしい景色を見ながら入ってほしい。ぜひバスタオルや湯あみ着を上手く活用して、明るいうちにも入ってみてくださいね。
滝見露天風呂(女性専用)
最後に女性専用の「滝見露天風呂」へ。ここは湯あみ着を外してのんびり入りました。これはこれで極楽です!
「滝見露天風呂」も十分な広さと開放感があります。むしろ男性より入れるお風呂が1つ多い分、女性の方がオトクです。
八丁の湯のお部屋紹介!ヴィラロッジと山小屋の違い
「八丁の湯」の宿泊プランには、ヴィラロッジ八丁のお部屋と、山小屋八丁のお部屋の2種類があります。
ヴィラロッジ八丁
今回泊まったお部屋はこちら。ヴィラロッジ(ログハウス)のツインルーム。イメージ的にはカナディアンロッキーのログハウスに泊まりに来たみたい。秘湯の宿ではありますが、ログハウスのお部屋はどこか日本離れした雰囲気があります。
なんだかこう、窓辺のソファーに座って風景や野鳥の写真集とかめくりたくなりますね。プライベート感があるのでカップルの記念日にも使えそう。
周囲の雪が音を吸収するのか、とても静かに感じられます。
またヴィラロッジ八丁には、私の泊まったログハウスツインのほか、ログハウス和室やロフト付きの大部屋もあります。
山小屋八丁
山小屋八丁のお部屋もちょっとだけ紹介しましょう。こちらは本館木造のお部屋で、昔懐かしい和風旅館の佇まい。リーズナブルに宿泊できるので登山客などに人気です。浴衣が似合うのはログハウスよりこちらかもしれません。
八丁の湯の夕食は?
ヴィラロッジ八丁宿泊の場合は、夕食はメインダイニングでいただきます。山小屋八丁の場合は和室大広間が夕食会場となります。
ヴィラロッジ八丁の夕食
夕食は山の中の秘湯らしいメニューで、川魚やキノコ、野菜が中心です。特に前菜に出てきた頂鱒(イタダキマス)が絶品。この頂鱒って、頂点を極める鱒と「いただきます」を掛けた名前がダジャレのようで面白いのですが、実は日光で養殖された今注目のブランドニジマスで、ほどよい弾力と濃厚な脂の甘みがあるのです。
アツアツの土瓶蒸しは湯波真丈を中心にキノコがたっぷり。この湯波真丈がふわっふわのくちどけ。ちなみに日光周辺では湯葉(ゆば)を湯波(ゆば)と呼びます。京都の湯葉とは製法もちょっと違います。
メインダイニングの入口で、何かを炭で焼いていると思ったら朴葉焼きでした。くるまれているのは香鶏とマイタケ、そして”からかんべぇ味噌”。これは山菜の優しい苦みが効いたピリ辛のお味噌でついついお酒が進んじゃいます。
すき焼きは蝦夷鹿。鹿肉ですがくさみは感じられず、しっかりとした歯ごたえがあります。焼きすぎると硬くなるということで、ほどほどのところで火から降ろして美味しくいただきました。
山小屋八丁の夕食
山小屋八丁の夕食も紹介しましょう。こちらはテーブル席ではなく、和室にお膳でいただきます。なお写真のメニューは連泊用のもので、1泊旅行の場合は少し内容が変わってきます。
夕食後の過ごし方
私が滞在した日は、ヒマーリカフェのあるレストハウスのラウンジでお琴の生演奏が行われていました。「八丁の湯」では不定期に、こうした文化の薫り高い演奏会や朗読会などが行われているのです。
歓楽街のある温泉地と異なり、ここでは建物の外には自然しかありません。夜は必然的に露天風呂以外は館内で過ごすことになりますが、イベント開催日に泊まられたら参加してみるのも楽しいですね。
またラウンジは夜間も利用が可能です。ワインを傾けながら一緒に来た家族や友人と語らうのも良い思い出になります。
奥鬼怒温泉郷「八丁の湯」で朝風呂
朝風呂は混浴露天風呂に行っても良かったのですが、もう一度湯あみ着を着るのがちょっと面倒だったので内湯へ行きました。朝はこの内湯から紹介しましょう。
女湯と男湯の内湯を紹介
女性用の内湯はちょっとサンルームのような個性的な浴室です。シャワーやシャンプー類のアメニティは内湯にのみ用意されています。
開放感ある露天風呂とまた違った雰囲気で落ち着きます。
男湯の内湯も画像だけ紹介しましょう。板張りの壁などは新しくしたばかりでぴかぴかですが、この宿で一番古いお風呂です。女湯とは全然違ったデザインですね。
奥鬼怒温泉郷「八丁の湯」の朝食
朝食もヴィラロッジ八丁、山小屋八丁では内容が異なります。
ヴィラロッジ八丁の朝食
ヴィラロッジ八丁の朝食は、夕食会場ともなっていたメインダイニングで。
火にかけられたお鍋の中は根菜とキノコがたっぷりのトン汁。湯気が上がったら自分で椀に注ぎます。
せいろの中には冬に美味しくなる白菜と鮭。ご飯が進みますね。
ところで山小屋八丁の朝食はちょっとユニーク。実はこちらの朝食は、夜のうちにお客さんに配られるお弁当なのです。
というのは登山に行く人は朝が早いためで、何時に出発しても大丈夫なようにとの配慮。しかもお弁当スタイルなので、ここで食べずに持っていって山に登ってから食べてもいいのです。山歩きのベースになる宿ならではの朝食スタイルですね。
なお宿で食べたい場合はレストハウスでも客室でも食べられます。レストハウスには電子レンジも用意されているので、温めて食べることもできます。
チェックアウトとお土産
帰りもまた送迎バスのお世話になります。雪道をガタガタと走り、女夫渕無料駐車場まで戻ってくると、ああ、もといた日常に戻ってしまうまであと少しなんだと寂しく感じられました。
最後に「八丁の湯」おすすめのお土産を紹介します。それは大女将直伝「栃木和牛ももカレー」。
帰宅してから食べましたが、スパイシーな味わいに大き目お肉がゴロゴロと入っていてとても美味しかったです。ちょっとヒマーリカフェのパチパチとはぜる暖炉の前で、ぬくぬくと温まりながら食べたことを思い出す味でした。
DATA
八丁の湯
所在地:栃木県日光市川俣876
電話番号:0288-96-0306
アクセス:女夫渕無料駐車場から送迎バス約30分またはハイキングコース徒歩約90分
公式サイト:八丁の湯