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岳温泉 あだたらの宿 扇や宿泊記・濁り湯好きは月曜ミルキーデイ泊がおすすめ


あだたら山から8キロの引き湯を経てきた酸性の温泉が楽しめる福島県の岳温泉。この岳温泉に建つ「あだたらの宿 扇や」は、野の花一輪香る宿として訪れたお客さんからの評価が高い和風旅館。その人気の秘訣を知りたいと、今回宿泊してきました。
岳温泉のお湯は通常、ほぼ透明なのですが、月曜日に湯守の方が引き湯の管に詰まった湯の花を清掃します。するとその時だけ流れてきた大量の湯の花が、真っ白な濁り湯に!「あだたらの宿 扇や」の場合は月曜日の夜から火曜日の朝まで、白濁のお湯が楽しめます。濁り湯好きの方は、月曜日のミルキーデイ泊がおすすめです。

週に一度の岳温泉のミルキーディ

岳温泉について

まず「あだたらの宿 扇や」の建つ岳温泉から紹介したいと思います。

安達太良山麓の岳温泉

岳温泉街

岳温泉とは東京から270キロほど離れた安達太良山の山麓に位置する温泉地です。ヒマラヤ大通りを中心に温泉街を形成していて、旅館数は離れたところに建つ山小屋のくろがね小屋も含めて17軒ほど。

この岳温泉の後ろにそびえる安達太良山といえば、高村光太郎の「智恵子抄」を思い出す人もいるはず。「智恵子抄」の「あどけない話」の中で、千恵子が「ほんとの空」だと言ったのが、安達太良山(阿多多羅山)の山の上の空でした。

「あだたら山ロープウェイ」で登った先にある「薬師岳パノラマパーク」には、「この上の空がほんとの空です 二本松市」と記された記念碑が立っています。

岳温泉の歴史と源泉の引き湯のこと

岳温泉の手湯

岳温泉の源泉は温泉街の近くで湧いているわけではありません。8キロほど離れた標高1500mのくろがね山南面で湧出しています。

江戸時代までは「陽日(ゆい)温泉」という名で知られていましたが、文政7年に山津波で温泉街が壊滅。その後、6キロ離れた地点にお湯を引いて「十文字温泉」として再建されました。しかし今度は戊辰戦争で全焼。さらに現在の岳温泉の近くで「深堀温泉」として再出発しましたが、こちらも明治36年に火災で全焼してしまいます。

なんと現在の「岳温泉」となるまでに、3回も温泉街として引っ越し、名前も変わってきたのです。まさに苦難の歴史を歩んできた温泉地といえましょう。

ニコニコ共和国として独立したことも

ニコニコ共和国国会議事堂の看板が残る岳温泉観光協会

実は岳温泉は独立していたこともあるのです。

昭和57年に「ニコニコ共和国」として独立宣言を行い、地域通貨やパスポートなどを発行しました。

岳温泉街を散策すると、今でもニコニコ共和国の名残を見つけることもできます。ちなみにこの共和国、2006年に日本国に統合されてしまったようですが、2022年7月には1日限定で共和国が復活するイベントを開催するなど、今後の動向も気になるところです。

あだたらの宿 扇やにチェックイン

あだたらの宿 扇やの外観

「扇や」は岳温泉のメインストリートであるヒマラヤ大通りに面しています。派手な建物ではありませんが、館内に足を踏み入れると品の良い和モダンな雰囲気が漂っています。

そして目を楽しませてくれるのが、いろいろなところにさりげなく活けてあるお花。豪華か否かに関わらず、飾ってあるお花が造花だとちょっとガッカリしてしまう私ですが、扇やに飾られているのは可憐な生きたお花で、こうしたところにも品の良さが感じられます。

あだたらの宿 扇やの客室

通されたお部屋は「吾も紅」。小綺麗な和室だなと思ったのも束の間、お隣にもう一つリビングがあるのを発見。

吾も紅の和室
吾も紅のリビング

リビングは洋風で、座り心地の良いソファーが置いてありました。あまり旅館らしくないところが逆に新鮮です。畳のお部屋でお茶を飲んでほっこりするのもいいのですが、ソファーに寄りかかって寛ぐのもいいですね。

リビングの壁に収納されていたベッド

このリビングの壁にはベッドも収納されていました。足の弱った親御さんと旅行するときはベッドのお部屋がいいというお話も耳にします。そういう時にも役に立つのではないでしょうか。

この他にも、和室、和洋室、特別室のスイートルームと多彩なお部屋が用意されています。掘りごたつ付きのお部屋や坪庭のあるお部屋もあり、いずれも遊び心が感じられます。特にリニューアルした半露天風呂付きの「りんどう」というお部屋が人気があるそうですよ。

あだたらの宿 扇やの温泉大浴場

続いてお風呂を紹介したいと思いますが、その前にまずミルキーデイのお話をさせてください。

岳温泉のミルキーデイとは

岳温泉が白く染まるミルキーデイ

先ほど岳温泉の源泉は、はるばる8キロ先のくろがね山から引いてくると書きましたが、週に一度、湯守の方が引き湯の管に詰まった湯の花を清掃しています。するとその時だけ流れてきた大量の湯の花が、ほぼ透明な岳温泉のお湯を真っ白な濁り湯に変えるのです。

清掃日は通常月曜日なので、岳温泉ではこれをミルキーデイと呼んでいます。筆者が泊まった日もたまたまミルキーデイでした。よって取材で撮影させてもらった温泉の写真も全て濁り湯になっています。

底に沈んだ湯の花を舞い上がらせてみる

清掃は通常お昼前に行われ、その後のお湯は透明に戻っていきますが、そそがれた湯の花は浴槽の底にうっすらと堆積し、扇やの場合は月曜日の夜から火曜日の朝ぐらいまでは濁り湯が楽しめるようです。

扇やの女湯はお花がモチーフ

女湯の内湯

「扇や」の女湯はレトロな雰囲気のタイルが可愛らしく、浴槽の形もお花型です。中央にめしべのような湯口があり、そこから滔々とお湯があふれてきます。見上げるとステンドグラスのようなカラフルな樹木を描いたガラスがとてもお洒落。

やはりお花を模した半円形の仕切りの奥にはもう一つ浅めの浴槽もあります。

女湯の露天風呂

また男湯にも女湯にも木の露天風呂が付いています。女湯の場合は内湯がどこか洋風の雰囲気ですが、露天風呂は和の趣がありました。

岳温泉の泉質は殺菌力に優れた単純酸性温泉で、2.5というpHからすると肌にピリピリ来ることもなく、驚くほどまろやかに感じられます。
これは源泉が8キロの距離をはるばる流れてくる故なのでしょう。湧き立ての温泉の荒々しさとはまた違った良さがあると思います。

湯上りどころ「檸檬」で一休み

朝夕の食事処にも使われる檸檬

お風呂上りは湯上りどころ「檸檬」へ天井のライトが特徴的ですが、こちらのお部屋もお花をモチーフとした女湯と同じ方がデザインされたものだそう。
そしてミルキーデイに限り、ここではちみつ屋さんの柚子みつを使ったミルクラッシーがいただけるのです。濁り湯ならぬ濁りドリンクです。

ミルキーデイ限定ドリンクのミルクラッシー

お風呂で渇いた喉をほんのり甘く爽やかなラッシーが潤してくれます。これもミルキーデイならではの「扇や」のお楽しみです。寒い時期は酒粕が入ることもあるのだそうです。

あだたらの宿 扇やの夕食・朝食

温泉旅館に泊まってお風呂とともに楽しみなのが食事の時間。あだたらの宿 扇やの夕食・朝食は、奇をてらったところはありませんが、料理長の手作りにこだわった丁寧さが際立つメニュー。

夕食

夕食

「扇や」の夕食は一目見ただけで品の良さが感じ取れます。

感銘を受けたのがえごま豆腐に添えられたたれ。料理長自ら長時間練り上げて作るのだそうです。えごまもこの辺りの特産で、たれをたっぷり絡めていただくと美味しさに頬がほころびます。

あだたら酵母牛の豆乳しゃぶしゃぶ

また豆乳しゃぶしゃぶでいただくあだたら酵母牛は、日本酒の酵母を発酵させた飼料を使って育てられた地元のブランド牛。驚くほど柔らかくうま味がギュッと詰まっていました。

デザート

デザートも小さなケーキやフルーツを盛り合わせ、まるで宝箱みたい。甘すぎない味はおなかいっぱいでもぺろりと入っちゃいますね。

※食事のメニューは季節やプラン、食材の仕入れ状況で異なります。

朝食

朝食

朝食のこだわりはナスのみそ炒め。こちらは夕食のえごま豆腐と併せてこのお宿の定番メニューなのだそう。「扇や」に泊まったらぜひじっくり味わってください。

朝食のラスク

朝食メニューは和食ですが、パン屋さんのラスク、地元の牛乳、地元のヨーグルトなどもセルフコーナーに用意されています。食後のデザートとしてもぴったり。朝から動けないほどおなかいっぱいです。

なぜあだたらの宿 扇やは居心地が良いのか

コーヒーや紅茶がセルフサービスのロビー

泊まってみて感じたのは、さりげない心遣いが隅々まで行き届いていること。スタッフの対応も、館内の調度品もやサービスも、奥ゆかしいのに抜かりないのです。

女将さんに少しお話を伺いましたが、「忙しい日常から離れて、ゆっくり何もしない時間を過ごしに来てほしい。ここでホッと一息ついてほしい」とのこと。私などは暇さえあればお風呂に行き温泉に浸かってしまうので、「扇や」に泊まって何もしない時間を堪能するには1泊では足りなかったようです。

DATA
あだたらの宿 扇や
所在地:福島県二本松市岳温泉1丁目3
電話番号:0243-24-2001
アクセス:二本松駅よりバス約15分(宿泊者は送迎可、要予約)
公式サイト:あだたらの宿 扇や

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