日本をはじめ世界各国で新型コロナウィルス感染症のワクチン接種が進み、接種率が上がる中、オーストラリアではなかなか接種率が上がりませんでした。
しかし、2021年6月末にロックダウンになったシドニーではNSW州を上げてワクチン接種を促し、とうとう接種率70%以上に到達。107日間も続いたロックダウンが解除になりました!
また12月1日からは日本在住の日本国籍者の隔離無しの入国が予定されていましたが、オミクロン株の上陸で12月15日に延期されたばかです。最新情報は以下の時期を確認するようにしてください。
今回はオーストラリア在住の筆者から見たオーストラリアのワクチン事情と、シドニーで接種したコロナワクチンの体験談も踏まえてご紹介したいと思います。
目次
オーストラリアが先進国の中で接種率最下位になった理由は?
欧米諸国では2020年末から徐々に接種が始まったコロナワクチンは、筆者の暮らすオーストラリアでは2021年2月から接種がスタート。
ワクチン接種プログラムは「アストラゼネカ」製を主軸に、まずは「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる医療従事者や高齢者施設の職員と入居者達にファイザー製を、その他の一般の人達は高齢者から段階的にアストラゼネカ製を接種するという流れが組まれていました。
アストラゼネカ血栓問題
2021年2月接種開始早々、最初の問題が起こりました。
大量に用意していたアストラゼネカで若年層に血栓症のリスクがあるという報告があり、急遽40代以下のアストラゼネカ接種をストップ。もちろんメインではなかったファイザー製品のワクチンは足りず、アストラゼネカが大量に余るという状況に陥ります。
ワクチン接種率が上がらない
筆者も含めた40代以下は「ワクチンを打ちたくても打てない」という状況になり、国全体の接種率が大幅にスピードダウン。そんな状況を見越してプランBやプランCを用意しておかなかった政府に非難の声が上がります。この時、オーストラリアは先進国の中もでワクチン接種率は最下位と言われていました。
筆者の暮らすNSW州のシドニーでは2021年に入ってからも感染者数は少なく、ほぼ普通通りの生活を送っていました。2020年から閉じられた国境も2021年末までには開かないだろうと言われていたので、周りを含め「海外旅行もできないし、接種もできないし、そこまで急いで打たなくてもいいかな」という雰囲気が漂います。
6月末のシドニーがロックダウン
ワクチン接種が遅々として進まなかった割に、感染者が少なく「コロナ収束感」が漂っていたオーストラリアですが、感染者0人が続いていたシドニーで1人目の感染者が確認されました。
それからは急速に感染が拡大し、わずか10日後の6月26日、遂にシドニーでロックダウンが開始されました。
当初1〜2週間で終わると軽く考えていたロックダウンも、デルタ株の蔓延で感染者は増加の一途をたどります。結局1週間が2週間、2週間が1ヶ月、2ヶ月と長引き、シドニー周辺だけだったロックダウンも州全体に広がっていきました。
ワクチン接種が最後の切り札に
ロックダウンをしても感染者数がなかなか減らない状況に、政府はワクチン接種率を上げてロックダウンを解除しようという方向に大きく舵を切ります。
ファイザー不足とアストラゼネカ過剰を補うため、40代以下に禁止していたはずのアストラゼネカを「20代でも希望者はOK」という取って付けたような方針に転向しました。
さらにワクチンを必要回数打ち終えた人には「店内での飲食」や「海外旅行の隔離免除」などの特典を付けることを発表。また医療従事者だけでなく教師や保育士、接客業の人にはワクチン接種が義務化される話も出ています。
気が付けばワクチンを打たないと、食事や買い物、仕事など「普通の暮らしができない」という状況になり、「国民の権利が奪われている」と一部の人達から強い反発やデモにまで発展しました。
当初「接種は任意」だったはずなので、筆者としてはその気持ちもわからなくもありません。
オーストラリアでのワクチン接種方法
オーストラリアで使用されているワクチンメーカーは全部で3種類。
・ファイザー
・アストラゼネカ
・モデルナ(最近新たに追加)
政府が一度禁止したこともあり、何となくアストラゼネカ接種を躊躇していた筆者。新たなファイザーワクチンが海外から到着するのを辛抱強く待ち、とうとう2021年10月にワクチン接種を完了することができました。
ワクチン接種はネット予約、会場によっては飛び込みもOK
オーストラリアのワクチンの接種会場は大きく分けて3パターンあります。
- 病院やクリニック
- スタジアムやホールなどの接種会場
- 薬局、ドラッグストア
予約は基本的にオーストラリア保健庁のホームページで行います。自分の年齢(12歳以上 / アストラゼネカは18歳以上)、住んでいる地域、打ちたいワクチンの種類などを入れると、エリアごとのワクチン接種可能な会場が地図上で確認でき、その場で予約可能です。
大きな会場や薬局によってはドロップイン(飛び込み)で接種することも可能です。因みにクイーンズランド州では、オージーが大好きなホームセンター「バニングス(Bunnings)」でもワクチン接種が可能になり、お買い物ついでにワクチン接種ができるようになりました。すごくオーストラリアっぽい取り組みです。
筆者のワクチン接種体験レポート
海外からワクチンが到着しているというニュースは流れても、ファイザーを打てる場所が少なくなかなか予約が取れない状態がしばらく続きます。7月頃からネットで空席を探し続け、やっと9月に民間の医療機関で1回目の予約ができました。
会場はシティのオフィス街「マーティン・プレイス(Martin Place)」にあるビルの一角。会場の外ではワクチン接種会場の旗と係の人が立っています。熱を測り、症状がないかなど簡単な問診を受け建物の中へ。
既に予約時に自分の個人情報や同意書はインプットしていたので、受付では係の人に免許証と保険証を見せて番号を入力してもらうだけです。因みにNSW州では免許証も保険証もスマホのアプリに入れられるので、すごく便利。お財布を持たずスマホをポケットに入れて訪れました。
受付が終わったらパーティションで区切られたスペースでワクチンを接種。誕生日とどちらの腕に打ちたいか確認された瞬間にすぐ終了で、5分も掛かりませんでした。最後はこちらの広間で、スマホで次回の予約を取りつつ経過観察です。
お水とチョコレート(血糖値を上げるため?)が置いてあるのでそれを食べながら待ち、15分経って問題がなければ帰宅してOKでした。
当日は熱が出て寝込む可能性があると聞いていたので、食欲が無い時のためにポカリ代わりのココナッツウォーターや冷えピタ、ヨーグルトやプリンなどを色々準備しておきました。ただ筆者に関しては腕に強めの筋肉痛のような痛みと、少しだけ熱っぽい程度で意外に大丈夫でした。もっと副反応が辛いと聞いていた3週間後の2回目も、少し頭痛がある程度で特に問題なし。しっかりご飯も食べつつ、いつも以上にデザートも食べるという結果に。
オーストラリアのワクチン接種証明(ワクチンパスポート)はアプリ
無事にワクチン接種が終了した後、すぐに必要になるのがワクチンの接種証明です。今後しばらく、オーストラリアではレストランやカフェだけでなく一部の店舗、美術館や映画館などの入場にも必要になります。
オーストラリアではワクチン接種証明もアプリにダウンロードします。免許証と一緒にNSW州のアプリにも入れたり、iPhoneのウォレットの中に入れることも可能です。オーストラリア政府のホームページからは証明書のpdfもダウンロードできるので、プリントアウトして持ち歩くこともできます。
予約までは時間がかかりましたが、とりあえず私も無事にワクチン証明をゲットできました。
ワクチン接種率70%突破でシドニーのロックダウン終了!
2021年10月11日・NSW州のロックダウンが解除
2021年10月6日、シドニーのあるNSW州で成人(16歳以上)で2回目のワクチンを打ち終えた人が70%を遂に突破します。70%はロックダウン終了の一つの目標値だったので、翌週10月11日から、ワクチン接種完了者のみという条件付きではありますが、ロックダウンが解除されることになりました。
最終的には約4ヶ月、117日間のロックダウンになりました。ふぅ、長かったですね。
筆者の2回目のワクチン接種が10月9日、ロックダウン解除が2日後の10月11日ということだったので、まさにギリギリのタイミング。11日からは接種証明を提示すれば、レストランやカフェの店内に座って食事をしたり、洋服や化粧品などの店舗に行ってお買い物ができるようになりました!
ロックダウンの終了を受けて、筆者は近所のワインバーでワインを楽しみました。ただ、せっかくゲットしたワクチン接種証明も、お店の人はチラッと見ただけ。苦労して手に入れたので、個人的には「もっとちゃんと見て!」という感じです。
スマホに入っている画像を調べたら、最後にレストランに入ったのは何と4ヶ月前。本当にここまで来るのは長かった。普通にお店の席に座ってご飯が食べられるだけでも感動です。
11月1日・NSW州民は海外旅行が解禁?!
さらに、2020年3月から国境を閉鎖して「鎖国状態」だったオーストラリアで、NSW州は11月1日に他の州に先駆けて最初に国境をオープンし、海外旅行が解禁になります。今まで必須だった帰国時の2週間ホテル隔離(自腹で約25万円)も必要無くなります。未だ予定ではありますが、かなり大きなニュースです。
ただそれと同時に様々な問題もあります。2021年10月22日現在、NSW州全体のワクチン接種率は80%に到達していますが、エリアによって50%程度の地域もあってかなりの格差が。未だシドニーからは同じ州内でも旅行できないエリアがあり、それが解禁されるのも海外旅行と同じ11月1日の予定です。
また2032年オリンピック開催地「ブリスベン」のあるクイーンズランド州やパースのある西オーストラリア州など「感染者がほとんどいない州」は、未だシドニーに対して州境を閉鎖しています。クイーンズランド州は「クリスマスまでに州境を開ける」という発表をしましたが、海外旅行には行けるのに、何故か国内旅行はできないという謎の現象が起きそうです。
外国人観光客の受け入れは2022年早々?!
11月1日からNSW州の国境はオープンする予定ですが、それはまだ国民や永住者に対してのみの話。まだ外国人観光客について詳細は発表されていませんが、新しいNSW州首相は元財務大臣だった人物なので、必死で経済を回そうと外国人観光客をシドニーに呼び込みたい考えです。
はっきりしたことは言えませんが、早ければ2022年の早いうちに外国人観光客の受け入れが始まるかも?国境が開くとしたらシドニーがどこよりも早いと考えられるので、是非オーストラリアの国境がオープンした暁には、約2年間日本人観光客が訪れられなかったシドニーにいち早く足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。